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2015年以降、相続税の重税化が始まることを受けて、住宅の購入やリフォームに関連して、親から子への資金援助の動きが活発化しています。その理由は、今だから相続税を軽減できる各種制度があるためです。

贈与税は、1年間に他人からもらったお金や物が110万円の基礎控除を超えるとかかる税金です(これを暦年課税と言います)。親からのリフォーム資金の援助などにも贈与税が発生します。
しかし、2014年中は「住宅取得等資金の贈与の特例」を利用して、課税額を抑えることができます。これは、住宅の取得やリフォームの資金を親から援助してもらう場合、一般住宅なら500万円、耐震・エコ住宅なら1,000万円まで非課税にするという制度です。
基礎控除の110万円を加えると、最大で1,110万円まで贈与税を非課税にすることができます(図1参照)。
また、まとまった資金や不動産を贈与する場合は、「相続時精算課税制度」を選択する方法もあります。これは、20歳以上の子が、65歳以上の親から贈与を受けた財産について、累計2,500万円までは、贈与時に贈与税がかからないという制度です(2,500万円を超える部分は20%の贈与税が課税されます)。
先ほどの「住宅取得等資金の贈与の特例」と合わせると、最大3,500万円まで贈与時に贈与税がかかりません(図2参照)。
ただし、その贈与者が亡くなった時には、「贈与財産の贈与時の価格」と「相続財産の価格」を合算して相続税として精算する必要があります。
つまり、相続税の精算時には、贈与財産は「贈与時」の評価額で精算するため、贈与時よりも後で価値が上がる不動産や財産を生前贈与すると、結果的に相続税の軽減につながります。
図1「住宅取得等資金の贈与の特例」の活用

*1:省エネ・耐震住宅を2014年1月1日~2014年12月31日までに贈与の場合
図2「住宅取得等資金の贈与の特例」と「相続時精算課税制度」の活用

- *1:省エネ・耐震住宅を2014年1月1日~2014年12月31日までに贈与の場合
- *2:「相続時精算課税制度」の特別控除額は、贈与者1人につき2,500万円です
相続税については、2015年1月以降、基礎控除額が4割縮小されます(図3参照)。
例えば、父が亡くなり、相続人が母と子ども2人の場合、現行の基礎控除額は8,000万円ですが、改正後は4,800万円となります。
それを超える相続財産には、金額に応じて図4のような税率で相続税がかかります。その税率も改正後は一部変更となり、相続財産が多い人ほど負担が増えるようになります。
相続税の課税強化が進む中で、有効に利用したいのが「小規模宅地等の特例」です(図4参照)。この特例は、被相続人が居住していた宅地を、配偶者や同居または生計を一にする子が相続し、その後も住み続ける場合に適用され、土地の評価額が240平方メートルまで80%減額されるというものです。つまり、親と同居している子どもが、親の財産である宅地(現在一緒に住んでいる宅地)を相続した場合などに適用されます。
この特例は2015年の相続税率改正時には、適用面積の上限が240平方メートルから330平方メートルに拡大されます。また、2013年までは、二世帯住宅でも内部を行き来できない完全分離型だと「同居」とはとらえられず、特例が利用できませんでしたが、2014年からは、完全分離型の二世帯住宅でも同居と見なされるようになりました(図5参照)。
相続が発生する前に、二世帯住宅にリフォームして同居すれば、相続税を大幅に抑えることが可能です。
- 図3
- 図4
- 図5
その他にも、住宅をリフォームする際に利用できる減税措置や節税対策があります。
例えば、耐震、省エネ、バリアフリーリフォームをする場合に、工事費等の10%を所得税額から控除する「投資型減税」や、省エネ・バリアフリーリフォームを行う場合にローン残高の一定割合を所得税額から控除できる「ローン型減税」があります。これらについては、2014年4月以降はさらに限度額が拡充されます。
また、耐震、省エネ、バリアフリーリフォームに係る固定資産税の特別措置などもあります。
これらの制度も年々変わり、制度の適用期間もそれぞれ異なります。リフォームなどの際には、最新の情報をご入手のうえ、賢く活用しましょう。

柿渋ペイントの塗布例
旧家には、歳月を積み重ねることで醸し出される、重厚で落ち着いた雰囲気があります。 その趣を生み出している要素の一つが、旧家に使われている木材の風合いです。
長い年月を経た木材の深い色合いは、経年変化によるものと、自然塗材による塗装によって生み出されるものがあります。
日本で昔から使われてきた柿渋や弁柄(ベンガラ)などの自然塗材は、百年のいえ倶楽部会員の皆様にはなじみ深いものかもしれません。
これらは、彩色としての美しさだけではなく、木材を保護し劣化や汚れを防ぐ役割や、艶を出して木の魅力をいっそう引き立てる役割など、コーティング剤としてのさまざまな機能を併せ持っていました。
柿渋は、タンニンが多く含まれる青い未熟な渋柿の実を圧搾、発酵して自然熟成させたものですが、防腐、防虫、抗菌効果などがあります。塗装した部分は、時間の経過とともに色の深みと光沢が増していきます。
弁柄は、酸化鉄(いわゆる赤さび)を主成分とした顔料で、耐熱性・耐水性・耐光性・耐酸性・耐アルカリ性などにすぐれ、特に直射日光に対して抜群の耐久性を誇ります。
これらは単独でも利用しますが、弁柄と柿渋を混ぜ合わせて使ったり、弁柄を塗ってから柿渋を塗るなど、地域によってその活用法はさまざまです。
また、亜麻仁油(あまにゆ)や荏油(えのあぶら)などの植物油も使われてきました。亜麻仁油は亜麻の種子、荏油はエゴマやシソの種子が原料で、どちらも乾燥すると水や油などに溶けにくい性質を持ちます。木材にツヤを与えるため、単独での塗装や、柿渋や弁柄を溶く溶媒として使用したり、着色した上からコーティングするためにも利用されてきました。また、植物油を浸透させることで、木の表面を保護し、また、木の割れやそりを抑える役割もありました。
旧家をメンテナンスする際、新しく補修した部分を、あえて既存の塗装部分の色に近づけて仕上げることを「古色仕上げ」と言います。
古色仕上げには、前述の自然塗材が今でも使われますが、扱いにくさや欠点もあります。例えば、柿渋は独特のにおいがあり、外部で雨に当たると流れ落ちてしまいます。そこで、現在では、その欠点を補う製品なども開発されています。
例えば、株式会社トミヤマの塗料「柿渋ペイント」は、柿渋をベースに、すべて天然の顔料や植物油などを混合した塗料です。柿渋よりも撥水性が高く、外部や水まわりに使用できて安全無害。カラーは黒・黄・赤・古色・杏の全5色で、それぞれの色を混合して、既存の塗装部分の色合いに合わせていくこともできます。
日本の伝統を受け継ぐこのような塗料は、人体や環境への負担も少なく、日本の風土に合う塗装法です。これからも旧家のリフォームやメンテナンスで活用されていくでしょう。
- 参考:
- 「木材ドットコム」
- 「民家再生の技術」(日本民家再生リサイクル協会編/丸善株式会社、「株式会社トミヤマ」)
住友林業ホームテックがリフォームを手がけた小宮せんべい本舗様が、2013年12月に「第19回草加市まちなみ景観賞 建物景観部門」に入選しました。
「草加市まちなみ景観賞」は、埼玉県草加市が、まちづくり意識と住環境の向上を目的として、草加らしい味わいがあり、人々の共感を呼ぶ建造物などを表彰する制度です。
今回入選した小宮せんべい本舗様は、明治40年(1907年)頃に創業された草加せんべいの老舗です。
リフォームの計画は、ご主人の「日本家屋のリフォームなら住友林業ホームテックだ!」の一言からお電話をいただき、その後、ご家族ひとり一人のご要望をお聞きしながらご提案を重ね完成しました。
新しい店舗は、伝統的な虫籠窓をデザインし、看板と建物を一体化させた外観となっています。
また、築100年の蔵に使われていた重厚感のある梁を活かしながら、モダンな内装材や造り付けの家具で仕上げ、新旧がバランスよく融合したデザインとなりました。
居住部分と店舗部分を分離したことで居住スペースにもゆとりが生まれ、収納量も増えました。リビングスペースと畳スペースをオープンに使える工夫などにより、広々とした空間を実現しました。
伝統的な和のデザインは、周辺の街並みに調和し、地域のランドマークとして愛される建物となることでしょう。
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伝統的な虫籠窓のデザインが外観のアクセントに。
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『むしろ』を使用した天日干しと手焼きという伝統にこだわり続ける昔ながらの草加せんべい。
[住居内観]用途に応じて建具を開閉でき、多い来客時にも対応できる畳スペース。
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[店舗内観]築100年の蔵に使用されていた梁。
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