平家伝説の残る秘境祖谷の山々に囲まれ、『日本三大奇橋』のひとつとして知られる祖谷のかずら橋。ここからほど近い場所に立地するのが「ホテルかずら橋」です。山の斜面を上るホテル専用のケーブルカーで向かう天空露天風呂は、「星空を仰ぎ、雲海を見下ろせる温泉」として知られ、人気を集めています。
ホテルかずら橋は、最上階客室の間取りを大胆に変更し、趣ある数寄屋風にリニューアル。日常から切り離されたくつろぎ空間を実現し、大自然のなかで身もこころも解放できる場所へと特別感を高めました。

リニューアルの
きっかけ

経年劣化をきっかけに、客室リニューアルのタイミングを図っていたという、ホテルかずら橋。コロナ禍となり、『災害時避難者受入機能強化緊急対策事業補助金』が出ることが後押しになりました。
施設の老朽化と同時に、客単価の伸び悩みにも頭を悩ませていたオーナー様に対し、住友林業ホームテックは、四室あった最上階の客室を二室に統合するプランをご提示。贅沢な空間づかいとシックなラグジュアリー感を打ち出すことで、お客様に最上の空間をご提供すると同時に、そのおもてなしに見合った客室単価を再設定することを提案しました。
ご要望&解決
住友林業の施設リニューアルでは
このように解決しました
ホテルかずら橋が特に重視していたのは、インバウンド需要と非日常感を意識したリニューアルです。秘境に抱かれた、ホテルかずら橋にやってくるお客様は、日常から切り離されたくつろぎの空間を求めています。そのなかには、歴史あるかずら橋や祖谷の峡谷を目的に訪れる外国人観光客も多く、ユニバーサルな視点は外せません。
そこで、住友林業ホームテックは、海外からのお客様はもちろん、日本人でも泊まってみたくなるような、数寄屋風の設えに客室をリニューアル。浴室には重厚感ある自然材とつぼ風呂を組み合わせ、オリジナリティを打ち出しました。
「ホテルかずら橋の天空露天風呂は、それを目的に泊まりにくるお客様もいらっしゃるほど魅力的な温泉ですが、外国の方のなかには内風呂の利用を希望する方も多くいらっしゃいます。オーナー様には、『どなたにもお風呂をお楽しみいただきたい』という強い思いがありましたので、そのお心配りをつぼ風呂という形で表しました」と、担当者は話します。
そして、もう一つの改善ポイントも、やはり最上階の客室にありました。ホテルと天空露天風呂をつなぐケーブルカーから、お部屋の中が見えてしまうのです。外からの視線を遮りながらも、お客様の快適さを保つにはどうすればよいのか。この課題に対し、住友林業ホームテックは、外光を取り入れつつお客様のプライベートを守れる障子を採用。落ち着きある和洋室にしっくり馴染む空間づくりにも一役を買っています。もちろん障子を開ければ、ケーブルカーが山頂に向かう姿も楽しめます。


リニューアルのポイント
本リニューアルで最重視したのは“いかに窮屈さを出さず、いかに非日常を演出するのか”。ケーブルカーからの視線を遮った空間であっても、お客様が思いのまま過ごすための工夫が求められるなか、住友林業ホームテックは、メインルームのみで滞在中のすべての行動が完結できることを目指しました。そのために熟考したのが間取りです。踏込と前室は和室側に設け、ベッドルームは客室の奥に。その隣に浴室洗面スペースを置くことで、隔絶したかのような空間に仕上げました。もちろんインテリアにもこだわり、無垢材の違い棚でシンプルな日本らしさを演出すると同時に、独特の質感とゆらぎが特徴的な壁紙や、陰影を強調した照明を使うことでラグジュアリー感を演出しています。
「住友林業グループの数寄屋造りと聞くと、桂離宮のような純和風の雰囲気を想像される方も多いのですが、それでは格式ばかりに気を取られ、癒しやくつろぎといった旅館に求める本来の目的が欠けてしまいます」と担当者が話すように、日本の伝統建築をベースとしながらも、どの部分を切り取ってもお客様の周りがやすらぎで満ちあふれる客室へと仕上げました。
リニューアルの成果
今回のリニューアルを一番喜んでいるのは、従業員の皆様だといいます。デザイン性の高い客室の存在は、お客様をお迎えするうえで大きなモチベーションになっているようです。また、壁紙の一部にシックなボルドーを用いたお部屋は、女性のお客様から大変好評とのこと。私たちは、お宿のイメージとお泊まりになるお客様の期待値を重ねた空間づくりの大切さを改めて感じているところです。
ホテルかずら橋では、喧騒から切り離された秘境にある旅館ならではの、おもてなしの心とこだわりが特別感ある客室を生み出しました。
住友林業ホームテックは、オーナー様がお客様を想う気持ちを設計や施工という形で細部にまで落とし込み、確たるコンセプトを持つ施設へとよみがえらせることで、お宿のさらなるファンづくりに一緒になって取り組んでいます。
オーナー様からの声

宿にとっての懸念点をプラスに転じる提案力には驚かされました。お泊まりになるお客様の目線を最後まで持ち合わせたまま、尽力してくださったことに感謝しています。
宿はインバウンドのお客様にも人気の観光地の中にあります。需要が戻ったときには万全の態勢でお迎えできるよう、リニューアルしたお部屋でお客様がくつろぐ姿を想像しつつ、いまからモチベーションを高めていきたいと思います。