大分県三大温泉のひとつとして、奈良時代から受け継がれてきた天ヶ瀬温泉。「成天閣」はこの地で昭和17年に創業しました。天ケ瀬温泉のお宿の中でも一番川に近い場所に立地しており、川を身近に感じられる反面、雨季にはたびたび水害に見舞われてきました。
建物は築45年客室20室の「西館」、築60年客室12室の「中央館」、築30年客室23室の「東館」の3棟が一体の建物として構成されています。3棟ともに地下1階・地上1階は、水害対策として駐車場、機械室、多目的室となっており、東館2階がロビーになっていました。そのロビーからは対岸へ朱色の吊り橋が掛かっており、天ケ瀬の象徴として親しまれています。
リニューアルの
きっかけ
令和2年に九州地方を襲った豪雨により、天ケ瀬の象徴である朱色の橋は流され、ロビー含め、地上2階から下は浸水。成天閣は甚大な被害に見舞われました。
復興に向けての第一歩は、被害状況の確認と復旧に向けての費用の算出が必要でした。オーナー様としては心が折れそうになる状況でしたが、女将さんを含め、この機をチャンスと考えられ、ただの復旧ではなく、再出発に向けてすべてを見直そうと決意。前年に住友林業ホームテックが大浴場の工事を担当したご縁もあり、かねてトータル提案をしていた私たちに今回のリニューアルをお任せいただくことになりました。
ご要望&解決
住友林業の施設リニューアルでは
このように解決しました
成天閣に水害をもたらした玖珠川(くすがわ)は、脅威であると同時に、その姿を見晴らせることは、お宿にとって一番の魅力です。
「川辺に建つ旅館は全国津々浦々どこにでもありますが、川のせせらぎを耳だけでなく、五感で感じられる距離に建つ旅館はそうそうありません。リニューアルに活かさない手はないと考えました」と担当者が語るとおり、大規模リニューアルにあたって、成天閣と住友林業ホームテックが掲げたコンセプトは「川辺の休息」。成天閣を囲む環境を最大限に活かし、川辺のゆったりとした時間のなかで、日頃の疲れを癒し、くつろげるお宿にすることを目標としました。
リニューアルのポイント
リニューアルにあたり、オーナー様と私たちが共通認識として掲げたのは「シンプル」というキーワードです。増改築を繰り返し複雑になったお客様導線とスタッフ動線を分かりやすく整えるとともに、「川辺の休息」というコンセプトにそって、宴会場を兼ねて配置されていた奥の食事室を川辺に移設。そこに、吊り橋からデッキ・ロビー・通路・客室というお客様導線にストーリー性を加え、時代ごとにバラバラだった内装デザインを整えました。さらには、料理もこなすオーナー様がコンセプトを踏まえて食事メニューを見直し、そのメニューに合うように食事室の内装を整えました。また、女将さん側で地元工芸品などを用い、空間に天ケ瀬らしさを取り入れたほか、お宿名、ロゴ・サイン、さらにはアメニティーもコンセプトに合わせて刷新。昔の面影を残しつつも、モダンで清潔感のある居心地の良い施設へと生まれ変わりました。
住友林業ホームテックが
選ばれる理由
住友林業ホームテックは、いままでに培った信頼と、実績に裏付けされたデザイン性に加え、トータルマネジメントを行えることで選んでいただきました。今回のプロジェクトは、当社のほか、銀行、アメニティー会社、ロゴデザイナー、地元協力会社など、多くの会社とともに取り組んでいます。
「案件に応じて必要な会社を選定のうえプロジェクトチームを形成し、今回のような『天ケ瀬を復興させる』など共通の目標に向かい、コンセプトをオーナー様と一緒に考え、予算・スケジュール・プランをデザインできるところが当社の強みだと思います」(担当者)
リニューアルの成果
水害復旧が中心となった今回のリニューアルは、被害に見舞われた吊り橋やエントランスをはじめ、ロビー、ラウンジ、食事室に費用の大半を費やしました。しかしながら、既存の宿泊室や浴室とアンバランスになってしまうようでは、せっかくのリニューアルが台無しになってしまいます。私たちは該当箇所のみならず、コンセプトに沿って手直しする部分をフォーカスし、最小の費用で世界観を統一できるよう何度も話し合いを重ねました。その結果、うまく費用を分散しながらリニューアルを行え、晴れてオープンを迎えることができたのではないかと感じています。
スタッフの方々が笑顔になり、真剣にオペレーションの準備をしている姿を拝見したときに、これから訪れるお客様も満足してくださるのではないか、と思いました。
オーナー様からの声
令和2年7月の豪雨災害時には、足下の悪いなか、駆けつけてくださったボランティアの方、励ましのメッセージをくださった方など、多くの人に支えられていることを改めて実感しました。そのような応援があったからこそ「休業期間」を、未来に向けて自らの事業を「見つめなおす貴重な期間」と考え、今回の計画を進めることができたと感じています。その私たちの考えをくみ取り、限られた時間の中で今後の成天閣のあるべき姿をともに真剣に考えてくださった住友林業ホームテックの方々にはとても感謝しています。
いままで統一感無く増改築を行ってきた施設を、「川辺の休息」というコンセプトのもと、食事室などの配置、お客様・スタッフの動線の見直し、館内のサイン、内装デザインの統一、さらには名称やロゴ、アメニティーの見直しまで行い、見事、「天ケ瀬温泉 成天閣」として再出発することができました。
訪れたお客様からは、「1階ロビー、食事処がリニューアルされてきれいで気持ち良かったです」「飲み物はセルフでしたが、ロビーでゆったりとくつろぐことができました」「夕食の食器のセンスが良く、お料理も美味しかったです。お部屋も居心地が良く、ゆっくりできました」など、うれしいコメントをいただいています。
まだまだ課題は山積みですが、今後も復興に向けて取り組んでいきたいです。