すべての部屋から望める大川渓谷の絶景美が魅力の「大川荘」。会津若松という観光資源と大自然に恵まれた場所に佇む老舗旅館です。
雄大な渓谷美を望みながら入る棚田風露天風呂「四季舞台たな田」や、エントランス「浮き舞台」での三味線演奏など、ここでしか味わえない体験を求めて多くの観光客が訪れます。
大川荘は、客室のひとつをバリアフリーへとリニューアル。純和風の佇まいを崩すことなく現代建築のモダンテイストを融合させた、誰もが安らぎを感じられるくつろぎの非日常空間に仕上げました。
リニューアルの
きっかけ
大川荘のオーナー様は、住友林業ホームテックがリニューアルを手掛けた、猪苗代は沼尻温泉にある「沼尻高原ロッジ」も保有されています。ここのリニューアルを終えた当時、経年劣化の気になる大川荘の改修を検討していたというオーナー様。ご高齢の方、障がいをお持ちの方はもちろん、すべてのお客様に温泉をはじめとした滞在中のすべての時間をお楽しみいただける、ユニバーサルなお部屋をご用意したい思いから、「沼尻高原ロッジ」に続き、当社にお任せいただくことになりました。
ご要望&解決
住友林業の施設リニューアルでは
このように解決しました
客室のバリアフリー化といえば、工業製品然としたスロープや手すりが目立ってしまい、風情や歴史のある旅館であればあるほど、その存在が周囲から浮いて見えてしまう部分が否めません。リニューアルにはこれらの違和感の出ない配慮や見せ方が求められますが、その解決策を導き出したのが、誰でもないオーナー様です。もともと木に対する強いこだわりを持ち、その質感やぬくもりある風合いがお好きというオーナー様。「沼尻高原ロッジ」のリニューアルでも無垢材をふんだんに取り入れ、木の持つ価値を余すことなく活用されました。こうした経緯もあり、大川荘にも「沼尻高原ロッジの雰囲気を踏襲し、木質感を出してほしい」とご要望いただいたことが、旅館の雰囲気とバリアフリー製品のあいだを取り持つ意匠デザインへとつながりました。なお、踏込の天板には清らかな無垢材、床材には品の良さが光る国産栗材、というように木の材質を各所で変えることで、客室内に表情豊かな木質感を際立たせ、自然のもたらすメリハリをもたらせています。
なお、ユニバーサルの視点も欠かしてはいません。車イスで入ることのできるトイレはもちろん、踏込と前室は緩やかなスロープでつなげ、お部屋全体を段差のない仕様に。また、ベッドルームとほかのスペースに統一感が出るようトイレやスロープのタイルの色にもこだわり、全体的にシックな印象に仕上げています。室内には車イスを回転させるのに十分な広々としたスペースも確保。壁一面の大きな掃き出し窓からは車イスに乗ったまま、大川渓谷を望めます。
リニューアルのポイント
大川荘の魅力はなんといっても、すべての客室から望むことができる大川渓谷の荘厳な景観です。今回、リニューアルにあたったバリアフリー客室も例外ではありません。この窓からの景色を存分にお楽しみいただこうと、住友林業ホームテックがこだわった一つが、照明です。設計担当者は、「部屋に入った瞬間、正面の大窓から見える渓谷のダイナミックな景色をじゃましないよう間接照明を用い、床に直接灯りを落とさないようにしています」と、そのこだわりを語ります。ベッドのヘッドボードからこぼれるやわらかな灯りも、それ自体が映えるよう、なぐり加工の壁材をセレクト。複雑な陰影が織りなす揺らぎの表情がモダンテイストで統一した室内を効果的に演出しています。このように、「照明を制する者がデザインを制する」といわれる昨今のトレンドをふんだんに反映させる一方、天井は重厚な床材と対比させるかのように白を基調としたすっきりとした造りに。こうして均整の取れた空間とすることで、大窓から望める四季折々の景色を主役にしたリニューアルが完成しました。
リニューアルの成果
大川荘は窓から見える景色、エントランスの浮き舞台から響く三味線の音など、五感で受け取るものすべてが躍動的な旅館です。客室にも、その姿と共鳴する生命力あふれる木材を大胆に使用することで、エントランスからお部屋に至るまで統一感を打ち出すことができました。お部屋の出来栄えは、オーナー様、従業員の皆様はもとより、お客様にも好評を博しており、気兼ねなく宿泊できる満足感や、木質感あふれる客室で味わえる非日常なひとときをSNSなどで発信する様子が日々みられています。
「現代建築のテイストを取り入れトレンド感を出したいものの、歴史も大切にしたい」「利便性を高めたい。けれども、元来の良さも残したい」「ユニバーサル対応にしたいけれど、施設になじむだろうか」。伝統と歴史を守り続ける老舗のお宿ほど、このような不安や懸念をお持ちかもしれません。けれども、古くから脈々と受け継ぐお宿の魅力と、現代的な意匠や機能はトレードオフの関係にはありません。住友林業ホームテックが大切にしているのは、古き良きものを守りながら、新しい要素を付加する“温故知新のこころ”です。既存設備の有効活用は、コスト面からも大きな効果があります。オーナー様のご要望を実現しつつ、その先にいらっしゃるお客様の満足度にも寄与していく。住友林業ホームテックのリニューアルはこうした視点のもと、オーナー様の事業に寄り添っています。
オーナー様からの声
これからの旅館経営にユニバーサルの視点は欠かせません。「どなたでも快適にお過ごしになれる宿」を、住友林業ホームテックさんは、木に強い住友林業グループの調達力、企画力、総合力で見事実現してくださいました。木の癒しの効果は科学的にも実証されていると聞きます。温泉でやわらいだ心身を木の温もりがそっと包み込む。そんな安らぎを私たちが提供できる喜びはひとしおです。ご利用になったお客様がご満足された様子を、SNSを介して垣間見られることもまた、私たちの励みになっています。