Vol.06『町家大工の夢』京都府 I様邸 築約80年
「昔、町家大工をしていたんです」ご主人が語りはじめた。
京都、二条城のほど近く。歴史ある古都に残る、情緒ある町並み。その一角に、昔ながらの面影を残しながらも、品良くモダンな一軒の町家がある。
「どうです、いいでしょう」リフォームされた家を眺めるご主人は、いかにも誇らしげだ。
それもそのはず、ご主人はもと町家大工。
この家には、格別深い思い入れがあったのだ。
「町家大工仲間でも評判のリフォーム会社を思い出しました」
伝統的な町家づくりの家は、その昔ご主人とそのお父様が気に入って購入したもの。
まさに町家大工のお眼鏡に叶った家なのである。
しかし、築約80年。耐震性に不安があったため、本格的なリフォームを決心した。「今の自分では体力的に負担が大きいため、町家大工仲間でも定評があるリフォーム会社にまかせることにしました」
「あまりに快適で、リフォーム後も何の違和感もなく生活できています」
「それはもう、こだわりましたよ」とご主人。
「町家大工だった私からみて、耐震補強も文句なし。
以前は構造上取り除くのが無理だと言われていた壁を撤去でき、開放的なダイニング・キッチンが生まれました。浴室から坪庭を眺められるようにしたり、和室には雪見障子を入れました」そのすべての出来映えを気に入っていると言う。
「家中が気持ちよくて、どこにいてもしあわせです」
奥様の希望でキッチンもこだわった。身長に合わせてつくった設備に、効率的な家事動線。安全性の高いIHヒーターや、省エネになるガス温水器も採用。
入ってすぐ和めるよう玄関ホールも畳敷きにした。
「玄関や通路まで気持ちいいんです」と微笑む奥様。
夫婦の幸福にみちた、伝統ある京の町家。それは、かつて町家大工だったご主人の夢そのものである。
京都府 I様邸のリフォームデータ
所在地 | 京都府 |
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築後年数 | 約80年 |
総工事床面積 | 104㎡ |
工事期間 | 6ヶ月 |
強く心地よく生まれ変わった、町屋づくりの家。
キッチンとダイニング、和室が一体となって、オープンで心地よい空間が生まれた。
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和室
広くなった和室は、雪見障子を採用したり、畳の縁や建具の色を茶系統に統一したりと、こだわりが満載。
キッチン(リフォーム前)
キッチン(リフォーム後)
閉ざされていたキッチンは、カウンターを隔ててリビング・ダイニングと一体となった。
リビング
キッチンからも和室からもつながる開放的なスペース。
坪庭
和室からも浴室からも眺められる坪庭。手作りのししおどしが趣をそえている。
玄関
石畳が敷き詰められた長い通路は、町家ならではの風情がある。