Vol.03『66年目の冬』富山県魚津市 Y様邸 築約65年
「真冬には、家の中が外よりも寒いこともありました」
富山県魚津市。
杉林を背に建っている一軒の旧家をたずねた。
北陸地方で、長年の間厳しい寒さに耐え抜いてきたその家は築65年になるのだと言う。老朽化が進み、そのまま住み続けるのは限界だったのだそうだ。
「ただでさえ寒い上に、裏が林なので日が当たらなくて冬場はつらかったんです」ご主人はそう語った。
「冬場でも暖かく過ごせる家にしたい」
暖かく快適な家にする。
それだけなら建て替えでもいいようなものだ。しかし、ご主人には先代が建てた家としての愛着があった。
また、自分がその家を住み継いでいる責任も感じていた。
さらに、「できることなら、残してほしい」という親戚の声もあって、リフォームすることを決断したのだそうだ。
暖かくなったリビングに、家族が集まるようになった。
リフォームで最もこだわったのは、断熱性。
断熱材を充填したり、ガラスサッシを気密性の高いものに交換して、家の断熱性を高めた。
また、取り入れてみて大正解だったのが蓄熱暖房。
深夜電力で寝ている間に熱を溜めておくものなのだとか。
「冬でも部屋の中がちょうどよく暖まって、朝起きるのが楽になりました」家族みんな大助かりなのだと言う。
「心地よさも、雰囲気も、どちらも大切にしたかったんです」
コンセプトは「旅館」と言うだけあって、玄関から客間にかけては、何とも言えない趣がある。
他の部屋より一段高くなった「枠の内」と呼ばれる客間の天井には、大きな梁がある。この地域の伝統なのだとか。
「生活部分と、雰囲気重視の部分と、メリハリをつけたことが良かったみたいです」66年目のこの家の冬はとても心地がいい。私もすっかり魅了されてしまった。
富山県魚津市 Y様邸のリフォームデータ
所在地 | 富山県魚津市 |
---|---|
築後年数 | 約65年 |
総工事床面積 | 235㎡ |
工事期間 | 7ヶ月 |
伝統を守りながら、暖かく心地よい家へ。
快適で暖かく過ごせる家にするため動線を意識した生活部分と、雰囲気を重視した客間や玄関をメリハリをつけて設計。
![]() |
![]() |
![]() |
外観(リフォーム前)
外観(リフォーム後)
軒裏の太い垂木など、風格のある外観に生まれ変わった。
客間
旅館のような雰囲気の和室は枠の内と呼ばれる客間。天井高が5メートル近くあるため、主照明のほか、スポットライトなどの間接照明を設置し明るさを確保。単調な畳敷きをやめ、板の間を設けたデザインがユニーク。
玄関
来客を迎えるための「主玄関」と家族用の玄関を格子で分離。家族用玄関には収納を設け、クロークとしての機能を持たせている。
子供部屋
子供部屋のロフトにも梁がある。採光のために設置したガラス瓦には、屋根をすっきり見せる効果と雨漏りがしにくい利点が。
2階ホール
2階ホールの腰板は、先代が大事に残しておいた無垢材を利用。