2018.04.13
住友林業株式会社
住友林業ホームテック株式会社
住友林業緑化株式会社
住友林業(株)(社長:市川 晃 本社:東京都千代田区)100%出資子会社の住友林業ホームテック(株)(以下、ホームテック社)と住友林業緑化(株)(以下、緑化社)は、総本山仁和寺※1(門跡:立部 祐道 住所:京都市右京区 以下、仁和寺)の境内にある旧家※2「松林庵」の改修および造園工事を担当しました。
松林庵は仁和寺御室御所の諸大夫(しょだいぶ)で寺医も兼ねた久富家(ひさとみ)※3から1937(昭和12)年に寄贈された木造2階建て、延床面積159.97m²の旧家。仁和寺が宿泊施設として活用するため日本財団「いろはにほん」プロジェクト※4の助成を受け改修し2017年9月に竣工。総事業費は約157百万円で2018年4月より宿泊希望者の受け入れを開始しました。
建物を改修したホームテック社は住友林業のリフォーム専門会社です。同社は木のよさと伝統的な木造建築工法を熟知した「温故知新」の旧家再生を数多く手掛けています。本工事は、日本の古き良き風情を感じられる建物を目指して進められました。希少な構造梁など残せるものは残し、建築当時の趣が残る宿泊施設として生まれ変わりました。耐震補強工事の一環で基礎を新設する際、仁和寺は埋蔵文化財の指定エリアのため地盤を掘削せずにコンクリート基礎を新設。また従前あった床の段差を解消するなどバリアフリーにも対応しました。
ホームテック社は戸建住宅の改修にとどまらず、非住宅・商業建築分野への事業拡大を推進します。
修景造園工事を担当した緑化社は2003年から、仁和寺御殿及び境内庭園の手入れ・維持管理を担当しています。本工事は「松林庵」が周りの木々に溶け込んで佇む姿をイメージして作庭。植栽は自然樹形を保てる様に枝先を切らず柔らかい剪定整枝を施し、訪れた宿泊者に御寺境内からつながる自然のままの風景を堪能していただけるよう設えています。
建物裏の本庭は周囲の建物の圧迫感を緩和するため、盛土地形を利用。掘削できない地盤条件の中で平地から築山(つきやま)を築き、草木や灯篭、庭石などを配しています。植栽樹木は1年以上の月日をかけて選出、建物になじむよう枝葉を仕立てたものではなく、路地に生える草木のように植栽しました。
そのほか当社グループは2010年、仁和寺の名勝「御室桜」の組織培養による苗木増殖に成功。現在、増殖した苗木の保護・保存にも協力しています。
住友林業グループは1691年の創業以来、山林経営から木材・建材の製造・流通、住宅や緑化、バイオマス発電まで木と緑に関する事業を一貫して手掛けてきました。今回の取り組みは当社グループの技術力と知見を結集した事例であり、京都の景観維持や文化の継承に大きく寄与するものと考えています。今後も人々の生活にかかわる様々なノウハウを蓄積し、事業の拡大・発展を推進してまいります。
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※1京都市右京区御室にある真言宗御室派総本山の寺院。仁和4年(888年)宇多天皇の創建。古都京都の文化財として、世界遺産に登録されている。
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※2ホームテック社では、1950年(昭和25年)以前に建てられた木造住宅を「旧家」と呼んでいます。
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※3久富家とは文政12年(1829年)、御室八十八ヵ所霊場を開創、仁和寺御室御所の諸大夫で寺医も兼ねた久富遠近守文連(ひさとみとおとみのかみふみつら)の子孫
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※4本プロジェクトは、原則非公開の寺院など歴史的な建造物をリノベーションし、一棟一組限定での宿泊を伴う体験プログラムを通して日本文化の価値を再発見、再認識してもらい、日本に対する理解と文化財に対する関心を高めることを目的としている。利用料の一部は文化財 保護プログラムに活用し、日本文化の保護継承の一助となることを目指すもの。
総本山仁和寺 松林庵 概要
- 住所
- 京都市右京区御室大内33番地 仁和寺内
- 面積
- 延床 159.97m²
- 構造
- 木造2階建
- 施設内容
- 居室 9、浴室、脱衣所、トイレ、洗面所
- 工事内容
- 屋根瓦交換・破損部分修理、耐震補強工事、浴室・脱衣所・洗面所設置、玄関増築、襖・建具・畳等備品整備、修景工事、造成工事、数奇屋門設置
- 総事業費
- 156,734,520円 (日本財団発表)