木造住宅のリフォームはいつ必要? 費用と耐用年数を建築士が解説

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住まいを維持していくためには、キッチンやユニットバスなどの設備の取替え、外壁・屋根の張り替えなどのリフォームが必要です。リフォームをするきっかけの多くは、「老朽化」「劣化」であることが、下記のアンケートの結果からもうかがえます。

一般社団法人住宅リフォーム推進協議会「住宅リフォーム潜在需要者の意識と行動に関する調査 第11回 調査報告書|P.7 図6 リフォームの動機(本調査 Q16)住宅の種類別 築後年数別」より一部抜粋のうえ作図

しかし、老朽化や劣化が気になったときにはすでに製品の耐用年数を経過し、製品本来の能力を発揮できていない状態であることが多いため、水漏れや雨漏りなど、急なトラブルにつながるリスクもいなめません。
木造住宅では、水漏れが柱や梁などの腐食につながり耐震性にも影響するため、できれば老朽化する前にリフォームに着手したいところです。このとき、「築何年目では、どのようなリフォームが必要なのか」の目安は、中古住宅を購入する場合や中古の設備を使う場合に、特に重要なポイントとなるでしょう。

この記事では、木造住宅の築年数ごとにどのようなリフォームが必要なのか、また築年数ごとにどのくらいのリフォーム費用がかかるのかをご紹介します。

リフォームのタイミングと計画の重要性

木造住宅のリフォームでは主に、外まわり(屋根・外壁)、設備の交換、内装のリフォームが必要です。なお、マンションは、屋根・外壁・窓・ベランダ・玄関ドアなどは共有部分となるため、リフォームを行うことができません。そのため、リフォーム範囲の広い戸建て住宅のほうが、リフォーム費用が高額になります。いわば、木造住宅のリフォーム時期や費用を知っておくことは、住まいを手に入れるうえで大切な判断材料になるのです。

なお、水まわり設備は料理やお風呂など日常生活に欠かせないことから、リフォームや設備の取替えをするのであれば、最短日数でリフォームをしたいものです。しかし、リフォーム業者を探すことや、相見積もりを取って検討するのには時間がかかりますし、依頼する業者が決まったところで、工事にすぐ着手してもらえないことも多々あります。
近年は、災害や社会情勢などの影響から機械製造の遅れや建材の不足が発生することも多く、ときとして製品自体が手に入らないこともあるでしょう。すると、工事が間に合わないだけでなく、製品の高騰も起こりうるため、リフォームを先延ばしにしすぎないことも費用を抑える手段のひとつになります。

築年数ごとのリフォーム内容

ここでは、木造住宅の築年数ごとに必要なリフォームをみてみましょう。

築5年~築10年

(引用)リフォーム事例  住友林業のリフォーム

住宅設備の中でも耐用年数が比較的短いのが「ガスコンロ」です。一般的な耐用年数は5~6年ですが、使用頻度やメンテナンスの頻度によっては早い段階で不具合が表れることもあるでしょう。
また「内装材」は、ぶつけたり汚したりして早い段階でキズやシミが出来てしまうこともありますが、築10年程度なら表面的な汚れやキズであることも多く、軽微な補修で済みます。

築10年~築15年

(引用)岐阜支店からのお知らせ 外壁塗装工事の重要性について 住友林業のリフォーム

築10年は、水まわり設備の付属品や目地材、パッキンなど、部分的な劣化が出始める頃です。「トイレの便座」や「ウォシュレット」は、劣化・破損しやすいため、本体より先に取替えが必要となります。
また、「雨どい」や「ベランダ」の破損や剥離なども、屋根材や外装材の劣化より先に起こることがあるため、部分的な修理・補修が必要になることがあります。外壁では、耐用年数が長い材料で施工した場合、外壁材よりも先に目地材である「コーキング」が先に劣化し始めることもあるでしょう。コーキングのひび割れは、目に見える劣化であるため、住まいの外観にも影響を及ぼします。

築15年~築20年

(引用)リフォーム事例  住友林業のリフォーム

築15年以降は、水まわり設備の耐用年数を迎えるころです。「キッチン」や「トイレ」は、実際には20年以上使い続けられる製品が多いのですが、耐用年数を超えて使用している場合、いつトラブルが起きてもおかしくありません。新しいものに取り替えることで、節水や節電にもつながるでしょう。
さらに「屋根」や「外壁材」も築20年頃から耐用年数を迎えます。これらの補修や張り替えは、高所作業となるため足場の設置が必要です。
足場設置は1回で30万円程度の費用がかかるため、足場を必要とする屋根補修・外壁補修はなるべく同時に行うと、足場の設置費用が1回分に抑えられます。

築20年~築30年

(引用)リフォーム事例  住友林業のリフォーム

水まわり設備の中でも比較的使用頻度が少なく、使用時間も限られている「浴室」は、住宅設備の中では比較的耐用年数が長く、メンテナンスによっては30年近く使い続けることも可能でしょう。しかし、耐用年数を超えると本体の素材自体も劣化するため、破損しやすくなったり、本来の保温性・断熱性を失うようになったりします。また、浴室暖房乾燥機などの空調設備は、本体よりも早い段階で不具合が出る場合があります。
なお、このころには住んでいる家族の成長や加齢の影響もあり、新たに必要な設備が生じたり、不要な設備が出てきたりすることもあります。「バリアフリー」化にともなう段差の除去や、「建具の取替え」、家族の変化に合わせた「間取りの変更」も必要になってくるでしょう。

築30年以降~

(画像引用)フリー画像  写真AC

築30年を経過すると、基礎などにひびが入っていたり、中古住宅では建物そのものが傾いていたりすることもあります。こうした場合は「地盤や土台、基礎の補修」が必要です。これらをしっかり行うことで、築30年以上でも安心して住み続けることができます。
なお、築年数ごとのリフォームをほとんど行うことなく築30年経過した場合は、「フルリフォーム」もおすすめです。建て替えなくとも新築に近い住まいを取り戻せるうえ、かかる費用も新築より安く、部分リフォームよりも自由度の高い設計も可能です。

リフォームにかかる費用の目安

築年数ごとのリフォームにはそれぞれどのくらいの費用がかかり、その合計金額はどのくらいになるのでしょうか。ここでは、築年数ごとのリフォーム費用の目安を見ていきます。

築5年~築10年

ガスコンロ

2万円

内装補修

6万円

2万円

5~10年目 合計

10万円

築10年~築15年

トイレウォシュレット

5万円

給湯器

20万円

雨どい・屋根・ベランダ補修

20万円

外壁コーキング補修

35万円

10~15年目 合計

80万円

築15年~築20年

キッチン取替え

80万円

洗面台取替え

15万円

トイレ本体取替え

15万円

屋根塗装

45万円

外壁塗装

80万円

足場組立

30万円

15~20年目 合計

265万円

築20年~築30年

浴室(ユニットバス取替え)

150万円

建具の取替え・間取り変更

250万円

20~30年目 合計

400万円

築30年以降~

土台・躯体の補修

100~200万円

フルリフォーム

1,000万円~

リフォーム費用は劣化や破損の状態によって大きく変動しますが、これは気候や風土、災害などの自然の影響も大きく受けるため、目安の年数や費用と大きく違ってきてしまうケースもあります。たとえば、海沿いの地域では潮風による塩害などが発生するため、ガルバリウム鋼板などの金属製サイディング外装材は錆びやすく、耐用年数が大きく下がる傾向にあります。
目に見える劣化や不具合が現れた場合は、目安の時期に惑わされず、すぐに調査を依頼しましょう。

まとめ

(引用)リフォーム事例  住友林業のリフォーム

多くの建材や住宅設備は、耐用年数以上の耐久性があることが多いため、すぐに取替えせず、できる限り長く使い続けることもエコのひとつといえそうです。リフォームの目安を知ったものの、実際はそのタイミングでリフォームをする必要がない、ということもあるでしょう。
しかし、住宅設備は10年前と比べて省エネ性や断熱性などの性能が向上しており、水道代や電気代の節約、安全性、快適性などにもつながります。特に不具合がない場合でも、築年数を目安に、リフォームすべきかどうかを検討してみるのも良いかもしれません。

中古住宅を購入する場合は、築年数が重要な判断材料となりますが、それまでの住宅の使われ方や、以前の住人がどんな生活をしていたのかまでは知ることが難しいものです。そのため、メンテナンスが行き届いていたのかどうかの判断も難しく、内部のカビや腐食、目に見えない下地や構造材の劣化などが気になるところです。情報が少なく、判断に不安がある住宅のリフォームでは、耐震性や劣化・不具合を第三者が調べるホームインスペクション(住宅診断)を依頼し、状況を把握したうえで行うとよいでしょう。