「自宅に運動スペースを設けたい」 ホームジムリフォーム成功のポイント

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新型コロナウイルスの影響を受け、就業体系が在宅ワークに移行した人は多く、「通勤=貴重な運動時間」としていた人にとっては、「からだを動かす機会が減ってしまった」と感じているかもしれません。また、人目や混雑が気になり、散歩に出かける機会が減ったという人もいることでしょう。

しかし、新型コロナウイルスの流行以前から、毎日の運動を意識して実施している人は増加しており、ここ数年、その意識は上昇傾向にあります。

スポーツ庁「令和3年度「スポーツの実施状況等に関する世論調査」について(速報値)」より引用

このグラフからは、意識的に運動をする人が増えていたところに新型コロナウイルスの流行による外出制限が重なったため、自宅でできる運動やトレーニングを始めたのではないか、と推測できます。実際、「自宅でできる〇〇」のように、ヨガや筋トレをはじめとするオンライン動画が増え、「外出できなくても意識的にからだを動かしたい」というニーズを実感できたことは記憶に新しいものです。

なお、運動を意識しているのは、何も若い世代に限りません。健康維持のため、高齢者も日々の運動を取り入れていることがスポーツ庁のデータからうかがえます。

スポーツ庁「令和3年度 「スポーツの実施状況等に関する世論調査」の概要|P2.●世代別週1日以上スポーツ実施率の比較」を基に作図

自宅に運動スペースを整えることは運動不足の解消や健康維持だけでなく、小さな子どもにとっても元気なからだづくりやストレス発散に役立ってくれるでしょう。ただ、そのためにはどんな設備が必要になり、どんなリフォームをするのが良いのでしょうか。
この記事では、自宅でトレーニングを行うための「ホームジムリフォーム」について紹介します。

自宅でできる運動と、自宅で運動を行うメリットデメリット

下記は、生活者が令和2年から3年にかけて実施した運動種目の上位データです。ここからは誰でも気軽に行える「ウォーキング」がもっとも多いことが分かります。ここには、散歩やぶらぶら歩きも加えられていることから、運動と意識することなく行っている人も多いのかもしれません。楽しみながらできること、身体への負担や無理も少ないことから継続のしやすさもありそうです。
そのほか、筋肉のしなやかさを維持する「体操」、筋力アップを目指せる「トレーニング」、足腰を鍛える「階段昇降」に取り組む人も一定数いるようです。

スポーツ庁「令和3年度 「スポーツの実施状況等に関する世論調査」の概要|P4.○この1年間に実施した種目について」を基に作図

では、リフォームでホームジムを作った場合、自宅でどんな運動が行えるようになるのでしょうか。

有酸素運動

有酸素運動の代表格は、ランニングやウォーキングです。屋外で行うことがベストですが、自宅なら天候を気にせず、テレビを見ながらでも行えます。財布や鍵など荷物を持って出かける必要もなければ、服装など身なりを気にする必要もありません。
自宅で有酸素運動を行う場合は、ランニングマシンなどを使用する方法以外に、踏み台昇降や高強度インターバルトレーニング(HIIT)など、簡単な道具や道具なしで行える運動もたくさんありそうです。

筋力トレーニング

筋力トレーニングは、ベンチプレスなどの器具を使うウエイトトレーニングのほか、腕立て・腹筋・背筋など、道具を使わず行える自重トレーニングがあります。これらが自宅でできるとなると、他人の目を気にすることなく自分のペースで行えます。短時間でできるメニューも多く、すきま時間に取り組みやすいというメリットもあります。

宅トレにはどんなリフォームが必要?

自宅で取り組みやすいトレーニングは多くありますが、これらにもまたいくつかのデメリットがあります。

トレーニング

デメリット

有酸素運動

・激しい動きをともなうため、騒音や振動が発生する

・器具の使用によって振動が発生する、摩擦により床が傷つく

・床が滑りやすい

・汗で床が汚れる

筋力トレーニング

・器具の使用によって振動が発生する、摩擦により床が傷つく

・床が滑りやすい

・汗で床が汚れる

・マシンが大型で高価なため、導入しにくい

これらをリフォームでどのように解決できるのでしょうか。

間取り

トレーニングスペースとして多く活用されているのが、寝室やリビングです。たしかに、ある程度のスペースがあったり、または集中しやすい空間があったりと、運動するのに適しているといえそうです。

リフォームの観点からは足音による騒音や振動を回避するため、1階に設置することがおすすめです。鉄筋コンクリート造の多いマンションは木造戸建て住宅と比べると、階下への足音は響きにくい構造と言えますが、騒音の発生しにくいトレーニングに限定することや、床材などで必ず足音に配慮する必要があります。窓や換気設備、空調設備などの環境整備にも配慮しましょう。

トレーニングを行う際は、けが防止のためにも室内用シューズを履くことが前提です。床材は耐久性が高く、掃除がしやすく、見た目の雰囲気を壊さないなどのメリットの多い、フローリングがおすすめです。実際、病院などの施設ではバリアフリー用の床材として多く使用されています。大型のトレーニングマシンを置く場合は、重量や摩擦によるダメージ、騒音振動を軽減させるためのラバーマットをマシンの下に敷く必要があります。マット類は、ダンベルなどの道具を床に落としてしまったときにも、騒音防止や床のキズ防止に効果を発揮するものです。
このほか、ビニル床シートも耐久性が高く掃除もしやすいため、適しています。フローリング同様、施設等でもよく使われています。しかし、見た目が無機質であるため、殺風景な雰囲気になってしまうことを念頭に置いておきましょう。
床の防音性を高めたい場合は、床材の下に吸音マットを敷く方法があります。床の張替えリフォームをするのなら、防音材を一緒に施工してもらうとよいでしょう。

トレーニングのフォーム確認のために壁面に壁を設置したい場合には、鏡自体の重量を考慮し、壁の下地補強なども行っておくと安心です。
また、室内に窓がある場合は、換気や採光の面でメリットがありますが、防音性が下がるというデメリットもあるため、音楽を流したり動画を見たりしながらトレーニングを行う場合は、屋外への音漏れにも注意が必要です。騒音は窓を通して伝わることも多いため、使用中は窓を開けないようにしたり、二重窓など防音性の高い窓に取替えたり、防音カーテンを使用したりといった対策を行うとよいでしょう。

天井

天井に懸垂用のバーを吊り下げる場合は、梁などの躯体や天井の下地に吊り下げ用の金具を取り付ける必要があります。ただし、下地部分をねらって取り付ける必要があるため、どこでも好きな場所に設置できるわけではありません。ただし、これは木造の住宅に限られます。鉄骨やコンクリート造の場合は、躯体に金具を打ち込むこと自体が難しく、重量のあるものを吊り下げるには、木製の下地などを天井内に別途設置する必要があります。こうした希望のある場合は、リフォーム業者に事前に伝え、下地の補強を確実に行ってもらう必要があります。

戸建て住宅や庭付きマンションでは、庭も運動用スペースとして活用できます。部活動の練習やゴルフ練習の場として活用したり、小さなお子さんが遊べる遊具を設置したりするのもよいでしょう。
運動用の庭には芝生がおすすめです。地面が柔らかいためケガをしにくく、さまざまな遊びやスポーツに適しています。人工芝であればメンテナンスもほとんど必要がなく、10年ほどは張り替えも不要です。
屋外で運動する場合は、日光を遮る屋根やテントなどを設置し、熱中症予防にも配慮しましょう。

リフォームの注意点

習慣的に運動する人の中には、「階段昇降」を実施している人も多いようですが、自宅で行う場合は転倒事故につながる危険をはらむことから、あまりおすすめはできません。実際、高齢者の家庭内事故では、「階段」が発生場所になるケースが非常に多く、階段を運動に使うのは危険です。階段昇降を行いたい場合は、踏み台昇降用の台を利用し、平面で行うなど安全を意識しましょう。
自宅という狭い空間で運動を行うことで、身体をぶつけてケガをしてしまうおそれもあるため、家具の配置や、運動場所にも注意が必要です。

また、マンションなどは同じような間取りで部屋が配置されています。特に真上や真下の部屋は、ほぼ同じ間取りであることが多いものです。そのため、寝室に使っている部屋は、真下の階も寝室として使うケースが多く、騒音対策にはより慎重にならなければなりません。

マンションの場合、「寝室をトレーニングルームにしない」「夜間にトレーニングルームを使用しない」などの配慮が必要でしょう。

まとめ

自宅に広いスペースさえあれば、トレーニングはすぐにでも始められます。大がかりな床の張替えやリフォームは、必ずしも必要ではありません。

また、一方で、「リフォームはしたいけど、継続できるか不安......」という人もいるでしょう。しかし、防音・振動対策ができていて空調換気設備の整ったスペースは、子どものプレイルームや、オーディオ・シアタールーム、楽器の練習室や仕事部屋など、そのほかの用途にも適しています。運動しない日や時間もフリースペースとして活用しやすいため、使いまわしの利く部屋となるようトレーニングの道具や子どものおもちゃを収納できるクローゼットや棚の設置がおすすめです。多目的な空間としても活用できるホームジムスペースは、いろいろな意味で家族を健康にも豊かにもしてくれることでしょう。