リフォーム費用はもっと安くできる? お財布にやさしいプランの立て方を建築士が解説

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長く同じ家に暮らしていると、「あそこを直したいな」「ここが傷んできたな」「あの部屋の雰囲気をガラリと変えて......」のように、手を加えたいところがいくつも思い浮かんでくるものです。そのようなとき、何回かに分けてリフォームを計画したり、手のつけやすいところから始めてみようと思ったりする方も多いことでしょう。ところが、気の向くままにリフォームを始めてしまうと、経済的にもったいないことが起こることもあります。

今回は、まとめてリフォームを考えたい機能や箇所について解説します。費用と期間、そして満足度を上手にバランスさせるために工夫できるポイントをぜひチェックしてみてください。

工事をひとまとまりで考えてみよう

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建物の工事、と聞くと足場に囲まれている家の姿が、まずは思い浮かぶでしょう。たしかに、足場は屋根や外壁など建物の外側の工事をするときや、屋内でも天井の工事など手が届かない場所での作業のために組まれるものです。
作業員が安全に作業を行うために設置するものですので、組み上げるのにも解体するにしてもそれなりの時間と労力が必要です。こうして準備した足場ですから、「今回は屋根と水まわり、次回は外壁と内装」のように足場を組む機会を分けてしまうと、時間と費用が重複してしまいます。
足場を組む工事をするのなら、足場を必要とするリフォームはまとめて行うのが、長い目で見て時間や費用も抑えられるコツです。

また、工事では実際の作業だけでなく、足場のように作業を安全に行うための準備や設備が必要になることがあります。新築工事では、さまざまな工程が工事の流れの中に含まれており、工事の準備や使用する設備を各作業個所で共有したり、工事スケジュールを効率的に組んだりと、工期中のムリ・ムラ・ムダが最小限になるよう段取りがされています。その一方、リフォームでは工事個所が単発になりやすいため、新築工事では共有可能な準備や設備も個別に行うことになり、かかる時間や費用が大きくなってしまうのです。

なお、リフォームにあたっては、衛生設備を同時に行うなど、工種をまとめることもおすすめです。屋内をリフォームするときには内装会社、設備会社、大工さんなど、さまざまな専門業者が工事に入ることになります。このとき、工種ごとではなく部屋ごとリフォームすると、その度に多くの業者が立ち入ることになるため、作業日数や運搬費、工賃が割高になってしまいます。いずれ直すことを決めているのであれば、各作業をまとめて行ってもらうことで、時間や費用を効率的に使うとよいでしょう。

壁をリフォームするのなら断熱対策も一緒に

「外壁を新しくして家の雰囲気を変えてみよう」「手狭になった間取りを変えてみよう」のように、住まいの壁に目が向いた時は、省エネリフォームの良い機会です。その壁の数センチ先の、壁の中にも目を向けてみましょう。

壁の省エネリフォームでは、断熱材を使うケースがほとんどです。断熱材は発泡素材でできたカップ麺の器のように、空気をよく含むので熱の移動を妨いでくれます。暖房や冷房だけに頼らずに、冬の寒さや夏の暑さの影響を少なくすることができます。

建物の断熱化は省エネの面からもよいことですが、防災面、環境面でも効果を発揮します。
住まい全体の断熱化が理想ですが、予算や暮らし方に応じ、ひんぱんに使うLDKだけ、LDKと水まわりだけなど、重点的にリフォームするのもよいでしょう。

水まわりの刷新と一緒に考えたいバリアフリーリフォーム

住まいの中で、水まわりはとりわけ身近な存在ではないでしょうか。年齢、性別を問わず誰もが日に何度も訪れる、利用頻度のとても高い場所です。ただし、そこでは居室のように寛ぐのではなく、身支度や家事、排せつなどさまざまな行為が行われています。

水まわり空間にはあらゆる機能が求められるぶん、進化を遂げた最新の設備はとても魅力的に映るものです。「リフォームしよう!」と思うきっかけになることも少なくありません。

そんな水まわり空間のリフォームと同時に考えたいのは、バリアフリーリフォームや断熱リフォームです。
水まわり空間は、機能が多いわりに空間はそれほど大きくなく、それなのに立ち座りの動作や服の着脱、移動などさまざまな動作が行われます。これらを安全に行えるよう、バリアフリーリフォームを一緒に計画するとよいでしょう。特にトイレは体調や気分に関わらず、必ず利用する場所です。移動を助ける横棒手すりや、立ち座りを助けてくれるL型、I型の手すりは取り入れやすいバリアフリーアイテムです。
また、入浴や脱衣の際は、足元が濡れているので転倒のリスクが高くなりますし、服を脱いでいる時間が長いという場所柄、大きなケガにつながってしまうこともあります。手すりの設置とあわせて、滑りにくい素材の床仕上げに変えてみるのも良いでしょう。

加えて、水まわりの断熱化はヒートショック対策として高齢者のいる家庭におすすめしたいリフォームです。ヒートショックとは、冬場に暖房の効いた暖かい部屋から、寒い脱衣所や浴室に入ると、その温度差から血圧が変化し、心臓や血管の疾患が起こることをいいます。

消費者庁の資料によると、高齢者の浴槽内での不慮の溺死及び溺水による死亡事故は、1月をピークに11月〜4月、特に冬季に多く発生していることがわかります。

消費者庁「冬季に多発する高齢者の入浴中の事故に御注意ください!|p.3 図4.高齢者の「不慮の溺死及び溺水」による発生月別死亡者数(令和元年)」から引用

ヒートショックの対策のポイントは、部屋間の温度差を少なくすることです。
脱衣室や浴室に暖房器具を設置することもできますが、脱衣室では狭い空間のわりに動作も多いため、使い勝手や移動の安全の面から見ると得策ではないでしょう。その点、断熱化を行い、脱衣室や浴室を冷えすぎないようにすれば、空間を狭くすることも機器が壊れて修理が必要になることもなく、快適な入浴時間が過ごせます。
水まわりの断熱化は、水まわりを利用する人はもちろん、周りで見守る家族にも安心を与えてくれるリフォームです。

まとめ

目の前にある問題をクリアし、理想の暮らしに近づけようとリフォームを思い立つのはとても良いことです。しかし、せっかくの大切な住まいに、大切なお金をかけて手を加えるのですから、「同時にできることはないか」「長い目でみた時にいずれ必要となることはないか」「もっと安全で快適にできる方法はないか」のように、さまざまな視点から、リフォームについて考えたいものです。