問題業者のトラブル事例は? リフォーム会社の見分け方を建築士が解説

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リフォームでは、水漏れや設備の故障など、なるべく早く修理や交換をお願いしたいと思う不具合がきっかけとなるケースも多いものです。そのため、新築工事のように計画に時間をかけられないぶん、トラブルが起きやすい工事ともいえるでしょう。

実は、リフォームのボリュームゾーンとなる500万円以下の小規模の工事は、建設業の許可が不要です。いわば、リフォームの専門家以外でも工事を行うことができるため、技術的なトラブルも少なくありません。リフォームのトラブルでは、金銭的な問題だけでなく、施工不良による住宅へのダメージなども懸念されるため、トラブルを未然に防ぐことが重要です。

今回は、リフォーム時に発生しやすいトラブルと、その対策をご紹介します。

リフォームのトラブルは大きく分けて3つ

一般社団法人リフォーム推進協議会「住宅リフォーム潜在需要者の意識と行動に関する調査 第11 回調査報告書 P.8 図7 リフォームの際の不安や心配事(本調査 Q21)住宅の種類別」をもとに作図

上記グラフのとおり、リフォームの心配事の調査では、費用や工事の対応など不安のほとんどが施工業者に関するものです。では具体的に、どのタイミングで、どんなトラブルが起きやすいのでしょうか。

契約や金額、事務手続きに関する営業のトラブル

トラブルはリフォーム工事の序盤に起こりやすいものです。実際、見積もりや契約内容に関する説明が少ないなど、さまざまなトラブルが発生しています。
リフォーム契約では、本工事の契約以外に保険やローン、補助金の申請などさまざまな事務手続きを行うため、ひとつひとつの内容の確認が雑になってしまうことも多く、確認漏れや認識の違いなどによるトラブルがこのタイミングで発生しやすいのです。

プランや工事の仕上がりなどの技術的なトラブル

営業担当者の対応自体はていねいで契約内容や金額に問題はないものの、リフォームの完成度に満足がいかなかった、というケースも考えられるでしょう。施主側からの要望を業者はそのまま図面にするだけで、特に提案やアドバイスもなく、「計画のほとんどを自分たちでやっていた」などのプランニングに関するトラブルもあります。
なお、技術的なトラブルは、建設業許可を得ていないなど、リフォーム実績の少ない業者による工事で起こりやすいものです。なかには、はじめから詐欺目的で手抜き工事を行う事業者も存在しています。

伝達漏れなど、報告・連絡・相談に関するトラブル

見積書や図面に含まれない、細かい部分の仕様や仕上げなどでもトラブルは発生しやすいものです。本工事に付随する必要な工事を行ってもらうぶんには問題はありませんが、不要なオプションを勝手に追加されてしまったなどのトラブルに気を付けましょう。
「費用は多少かかるものの、ランニングコストが安くなる」など、あくまで善意だった場合は、トラブルとして取り上げにくいこともあるため、そのまま受け入れてしまうケースも考えられます。

よくあるリフォームのトラブル事例

(引用)フリー画像 写真AC

ここでは、よくあるリフォームのトラブル事例を「契約前」と「契約後(施工中)」「施工後」の大きく3つに分けてみていきます。

契約前

見積書では、工程ごとに必ず内訳が記載されます。たとえば、キッチンリフォームの場合、「既設解体撤去」「搬入運搬費」「システムキッチン本体」「取付け組立て費」「給排水工事」「ガス工事」「電気工事」「内装工事」「諸経費」などの項目が考えられます。これらを「キッチン工事一式」と包括し、工事内訳を記載していない場合は、必要のない工事が行われたり、工事費用を追加で請求されたりするケースも考えられるため、注意が必要です。また、見積書だけでなく、図面の提示や契約書類がない場合も同様です。
万が一トラブルが起きた場合、図面や書類に記されていないものは、責任の追及が難しくなってしまいます。

契約後~施工中

たとえば、内装のクロスなどは図面や見積書に品番を記載しないこともあります。これは、工事が始まってから柄や色などの詳細を決めるため、品番までは契約の時点で決定していないことも多いためです。契約後に決定する材料は口頭やメモで伝達することが多いことから、品番などが書面で残らないことも多いため、特に注意が必要でしょう。
伝達漏れによる違いだけでなく、完成イメージの相違など仕上がりの違いも発生するものです。イメージの相違は完成するまで気づかないことも多いため、やり直しで工期が伸びてしまうこともあるでしょう。また、マンションなどではリフォーム中の騒音問題なども多く発生します。工事前のあいさつや工事中の騒音トラブル対応など、しっかり対応してもらえるかどうかも確認しておくと良いでしょう。

施工後

耐震工事や水漏れ修理など構造部や下地の補修に関しては、壁や屋根を撤去して初めて問題が見つかることもあるものです。追加工事の発生はある程度仕方のないことですが、施主の許可なく追加工事を行い、費用を請求するというトラブルも多く見られます。また、雨漏りなどは実際に大雨や風雨が来ないことには、補修されたかどうか確認できないものもあります。
月日が経過してから補修が必要になる可能性のある場所は、その原因や補修についてトラブルとなりやすいため注意が必要です。

トラブルの解決方法

ここでは、トラブルを引き起こさないためにできること、起きてしまったトラブルはどのように解決できるのかをご紹介します。

1.トラブルを予防する

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要望をより明確に伝えるために準備をしておく

イメージの相違を防ぐため、施工事業者に見せる参考資料や写真は多く用意しておくとよいでしょう。

重要な項目は確認した内容と日付を記録しておく

「言った」「言わない」のトラブルを回避するため、重要な事項は確認した日付や内容、担当者名を必ず記録しておきましょう。打ち合わせの際にもらう図面や書類に、変更点や伝えた要望、打ち合わせ内容を記載して保管しておくと分かりやすくなります。

追加費用の可能性がないかどうか確認する

既設の劣化状態によって金額が上下する可能性のある箇所が無いか確認しましょう。また、工程表に収まらなかった経費などについても注意が必要です。
仮住まいや引っ越し業者を手配する場合、計画より延期してしまったぶんの仮住まい家賃や引っ越しのキャンセル料などが発生するため、工事費以外の経費についても確認しましょう。

相見積もりなど複数の業者を比較する

金額や工事の内容だけでなく、リフォーム実績や、引き渡し後に発覚した補修費用やアフターメンテナンスなども比較しましょう。

契約の内容は必ず書面で行い、控えも必ず保管する

リフォーム会社などを通さず、直接、業者や職人に依頼する場合などは、契約に関する書類に特に注意しましょう。補助金やローンの申請を行う場合では正式な見積書や契約書の提示が必要ですが、そうした公的な申請を行わない場合でも、必ず書面で契約の確認をすることが大切です。

2.トラブルが発生してしまった場合

(引用)フリー画像 写真AC

第三者機関に相談する

話し合いで解決できない場合やトラブルに対応してもらえない場合は、第三者機関に相談しましょう。消費者センター、国民生活センター、自治体の消費者センターなどのホットラインで、リフォームに関する相談が可能です。
また、費用の返還や損害賠償などを求める場合は、弁護士に直接相談するか、自治体で開催する弁護士の無料相談窓口を利用すると良いでしょう。

リフォーム会社とよく話し合う

リフォーム会社と話し合いをする前に第三者機関に駆け込んでしまうと、施工業者を悪者扱いしているようなイメージを持たれてしまい、むしろトラブルの解決を難しくしてしまうことも考えられます。まずはリフォーム会社としっかり話し合い、その対応に納得できなかった場合には、第三者機関に相談する、という順番が良いでしょう。

悪徳業者による被害も

リフォーム工事は、既設の状態に工事が大きく影響される難しさをともないます。そのため、リフォームで起こるトラブルや施工不良は必ずしも故意ということではありません。しかし、なかにはリフォーム詐欺などの被害も一部含まれており、高額な費用請求や、悪質な施工不良といったトラブルが後を絶たないのも事実です。

水まわりや耐震改修など、「早期の工事が必要である」と急かすものが多く、さらには、20~100万円という比較的捻出しやすい価格帯の工事が多いことなどから、リフォームは詐欺として使われやすいものとなっています。こうした悪徳業者は、早急の復旧を要す災害の後に増加する傾向にあるようです。訪問販売のように自ら営業に来るリフォーム会社には特に注意しましょう。

まとめ

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リフォームでは既設の建物を保全しながら工事をしなければならないこともあり、多くの制限があるなかで工事を行います。そのため不具合の原因を見つけるのに時間がかかったり、何度補修しても雨漏りが直らなかったりなど、工事がなかなかうまく進まないことも多々あります。多くのリフォーム会社では、こうした点も最初から考慮して対応してくれるので、問題点が発生しても大きなトラブルなく工事を終わらせてくれます。しかし、最初からまともに工事をする気がなかったり、技量に見合わない工事を請け負ったり、詐欺目的だったりする業者も残念ながら一部いるため、こうした業者にリフォームを依頼しないことがもっとも大切です。
リフォームを急ぐ場合であっても、業者の下調べやリフォーム実績、相見積もりなどを行い、対応や金額が適正かをしっかり検討するようにしましょう。