【薬剤師が解説】リフォーム前に知っておきたいシックハウス症候群対策

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環境の変化がヒトに新たな病気や症状を引き起こすことがあります。大気汚染や水質汚染による健康被害はよく知られていますが、もっと身近な「住まい」が引き起こす健康被害のひとつが「シックハウス症候群」です。

シックハウス症候群は、1990年代から報告されている症状です(※)。室内の空気汚染が原因とされていますが、住宅の高気密化・高断熱化にともない生まれた新たな症状といえます。

国土交通省「平成29年度 国土交通白書|第8章 第6節 大気汚染・騒音の防止等による生活環境の改善 5 シックハウス等への対応」の情報を基に作図

室内空気の汚染原因としてよく知られているのは、建材などから発生する化学物質です。その他、ダニやカビ、タバコの煙、ストーブなどから発生する一酸化炭素や二酸化炭素なども空気の汚染原因として指摘されています。これらの症状のあらわれ方には個人差があり、同じ環境下でもまったく影響を受けない人から過敏に反応する人までさまざまです。

今回は、シックハウス症候群の原因として、よくみられる症状にふれたあと、シックハウス症候群の予防に役立つ家づくりについて解説します。

シックハウス症候群とは

「シックハウス症候群」とは、室内の空気環境が悪化することでさまざまな体調不良があらわれることをいいます。原因である建物の外に出ると、症状がなくなったり軽くなったりするのが大きな特徴です。

シックハウス症候群の症状

まずは、厚生労働省の情報をもとに、シックハウス症候群の主な症状を、部位ごとにみてみましょう。

厚生労働省「科学的根拠に基づくシックハウス症候群に関する相談マニュアル(改訂新版)P.29」より転載

なお、症状には個人差があります。また、どのような体質の人にシックハウス症候群があらわれやすいかは明らかになっていません。

シックハウス症候群の原因

シックハウス症候群の発症にはさまざまな要因がありますが、主に問題となるのは「汚染源となる物質」「住環境」「生活習慣」の3点です。これらが揃うと発症リスクが高まります。そのため、家を建てたり、リフォームしたりするときは、これらの点に特に注意しなければなりません。

室内空気の汚染源としては、以下のようなものがあります。

建材などから発生する化学物質

ホルムアルデヒド(接着剤等に含まれる)、トルエン(塗料の溶剤)、キシレン(塗料の溶剤)、パラジクロロベンゼン(防虫剤の成分)など

生物由来の物質

カビ、細菌、ダニアレルゲンなど

居住者のライフスタイルに由来するもの

タバコの煙に含まれる成分、ストーブなどから発生する一酸化炭素や二酸化炭素など

外部から侵入してくるもの

粉塵、黄砂など

住環境で問題となるのは建物の気密性です。生活習慣では、換気をしない/できないことが大きな問題となります。

シックハウス症候群を防ぐ家づくり

家の新築・リフォームを検討する際には具体的にどのような点に注意すればよいのでしょうか。

設計段階(間取りの決定)

シックハウス症候群を防ぐには換気や風通しに配慮した間取りにすることが大切です。事業者に任せっきりにせず、しっかり希望を伝えましょう。
窓や家具の位置にも注意が必要です。家具で窓をふさいでしまったり、風の通り道に家具を置いたりしなくても暮らせる間取りを目指しましょう。場合によっては、換気扇を利用して風の通り道を作ることも考えましょう。
なお、シックハウス症候群の原因となるカビやダニを防ぐためには、こまめな清掃が欠かせません。掃除のしやすい段差の少ない間取りにすることも、シックハウス症候群対策といえるでしょう。

使用する建材など

使用する建材や接着剤、塗料などは、化学物質の放散量が少ないものを選びましょう。建築業者にも希望を伝えてください。なお、建材として使われる合板などは、ホルムアルデヒドを放散する量が「☆」で表示されています(例:F☆☆☆☆)。☆4つがホルムアルデヒドの放散量がもっとも少ないとされています。シックハウス症候群防止のため、できるだけ☆の数が多い建材を選びましょう。

完成後入居前の注意点

入居前には窓を開けて換気を行い、化学物質が室内に滞留しないようにしましょう。作り付けの家具や戸棚の扉、押し入れのふすまなども開けるようにしてください。なお、家具やカーテンやじゅうたんから放散される化学物質がシックハウス症候群をまねくこともあります。生活用品は慎重に選び、運び込んだあとは念のためしっかり換気しましょう。

国土交通省「快適で健康的な住宅で暮らすために|P5 化学物質の主な発生源」から転載

入居後の注意点

入居後もできるだけ換気をしましょう。入居から数カ月の間は、可能であれば1時間に1回は窓を開けてください。不在の場合は、24時間換気設備などを積極的に利用しましょう。
そして、こまめな掃除も欠かせません。掃除は、ダニやカビの発生を抑えるだけではなく、ゴミに吸着された化学物質を取り除くのにも役立ちます。なお、空気中の粒子状物質の除去には、空気清浄機が有効です。

室内でゴミ・ほこりが溜まりやすいところ

アレルゲン物質として気になるのが、室内のゴミやほこりです。下記の厚生労働省の資料を参考に、お掃除の際には意識を働かせながら行えるとよいでしょう。

厚生労働省「科学的根拠に基づくシックハウス症候群に関する相談マニュアル(改訂新版) P.44」より転載

リフォームしたあとも健やかな生活を送るために

シックハウス症候群対策は、「家を新築・リフォームすれば終わり」というわけではありません。シックハウス症候群に配慮した家を建てても、入居後に使うワックスや殺虫剤、芳香剤などでシックハウス症候群が誘発されることもあります。また、カビやダニなどを防ぐためには、十分な換気とこまめな掃除が必要です。

シックハウス症候群対策は、人が暮らす限り続きます。健やかな生活を送るために、生活習慣の見直しなども含めて早めに予防策を講じることをおすすめします。