【薬剤師が解説】カビやダニを防ぎ、家族の健康を守るリフォームのポイント

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どれほど清潔を心がけても、「ちり」や「ほこり」はどこからともなく発生するものです。そのなかでも、ほとんど目に見えない1mm以下のものを「ハウスダスト」と呼びます。
ハウスダストはどの家にもあるものですが、吸い込んでしまうと、くしゃみや鼻水などのアレルギー症状や喘息症状などをまねくことがあります。

▼ハウスダストとの関係が指摘されている疾患

関係が指摘されている疾患

症状

アレルギー性鼻炎

くしゃみ・鼻水・鼻づまり。鼻水は透明でサラサラしている場合が多い。

アレルギー性結膜炎

目のかゆみ・充血・違和感・痛み・涙が出るなど。

アトピー性皮膚炎

湿疹・強いかゆみなど。掻くことで症状が悪化する。

気管支喘息

激しい咳・息苦しさ・喘鳴・粘り気のある痰など。

喘鳴:呼吸時に「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という音がすること。

筆者作成

では、ハウスダストが発生しにくい健康に良い家とはどのようなものなのでしょうか。
今回は、家を建てるときやリフォームの際に取り入れたいハウスダスト対策を紹介します。

ハウスダストの発生源と溜まりやすい場所

ハウスダストのうち、花粉など家の外から入ってくるものは約3割、残りの約7割は家の中で発生するといわれており、トイレや洗面所、廊下など、人の出入りが多くて比較的狭い空間に溜まりやすいとされています。家具の上や部屋の隅など、掃除しにくい場所にも溜まるほか、バルコニーには、花粉や砂土ほこり、排気ガスなどに由来するハウスダストが蓄積します。

家の外から入ってくるハウスダスト

家の外から入ってくるハウスダストは、花粉や細かい砂土のほか、煙や排ガス、昆虫の死骸やフンなどさまざまです。これらは、「外から持ち込まない」「洗濯物への付着を防ぐ」「換気のとき注意を払う」などで量を減らせます。

空気中のハウスダスト

カビの胞子やウイルスなどの病原菌、ダニの死骸やフンは、ハウスダストのなかでも比重が軽く、空気中に多く浮遊しています。これらの発生を抑えるには、原因物質が生育しにくい環境を整えることが大切です。たとえば、換気とともに空気清浄機を活用し、空気を清潔に保つ工夫も必要でしょう。

屋内のハウスダスト

屋内のハウスダストのうち、床や家具の上などに蓄積しやすいのは、衣類から発生する綿ぼこりや食べ物のカス、髪の毛、フケ、畳や紙に由来する繊維、ペットの抜け毛などが挙げられます。これらは比較的粒子が大きいため、こまめな掃除で取り除けます。そのため、掃除しやすいレイアウトやすき間・段差を作らない工夫など、設計段階からハウスダストを意識した家づくりをすることが重要です。

リフォームに取り入れたいハウスダスト対策

ここでは、リフォーム時に取り入れたい対策をハウスダストの種類ごとに見ていきましょう。

外から入ってくるハウスダスト対策

花粉や砂土ほこりなど外から入ってくるハウスダストは、持ち込まないこと、侵入させないことが大切です。そのため、リフォームでは、できることなら玄関に手洗い場を設け、帰宅後すぐに手指洗浄できる環境を整えましょう。居住スペースにハウスダストを持ち込まないために、コートやカバン類を置ける玄関収納を設けるのもおすすめです。
玄関に手洗い場や収納スペースを設けられない場合は、玄関から洗面所まで非接触で移動できる動線を確保し、帰宅後すぐに手洗いや着替えができるようにするとよいでしょう。
洗濯物を外に出さない工夫も必要です。ただし、室内の湿度が高くなる部屋干しはおすすめできません。浴室乾燥機や除湿機能の高いエアコンの設置など、湿度を抑えながら洗濯物を乾かすことのできる環境を用意しましょう。なお、窓を開けて換気するとハウスダストが侵入しやすくなります。換気扇や24時間換気システム、エアコンの換気機能などをうまく活用して、空気の入れ替えをするようにしましょう。

空気中のハウスダスト対策

空気中の対策としては、ハウスダストの原因となるカビやダニの生育を抑えることが重要です。カビは高温多湿を好み、湿度が60%を超えると一気に増殖するといわれています。そのため、湿度を抑える工夫が必要になってきます。特に大切なのが、結露対策です。窓付近の結露は、内窓を設置したり窓枠を樹脂など結露しにくい材質にしたりすることである程度防げます。壁や天井に断熱材を入れるのもおすすめです。湿気がこもらないように、24時間換気システムを活用するのも良いでしょう。
高温多湿を防ぐのは、ダニ対策としても有効です。リフォームを機に、ダニの温床となるカーペットや畳、ソファなどがなくても暮らせる住まいを目指すのがおすすめです。たとえば、床暖房を導入すれば冬でも暖かいため、カーペットやラグが不要になりますし、丸洗いできる座布団などを利用すれば、ソファがなくても快適に過ごせます。
もっとも、各種対策を講じても空気中のハウスダストをゼロにはできません。必要に応じて空気清浄機を設置し、空気中に浮遊するハウスダストを除去しましょう。

屋内のハウスダスト対策

室内のハウスダストの多くは、こまめに掃除することで取り除くことが可能です。したがって、リフォーム時に掃除しやすい家づくりを目指すことがハウスダスト対策につながります。そのためには、できるだけ物を置かないようにするのがポイントです。なるべくなら家具は造り付けにし、追加で置く家具は掃除しやすい足つきタイプを選ぶと良いでしょう。
さらに、ほこりやちりが溜まりやすい段差を減らすことも大切です。たとえば、室内の戸を敷居が不要な吊り戸にすると、ほこりが溜まりにくくなるだけではなく、モップや掃除機などもスムーズに使えるようになります。掃除のしやすさは、家の設計段階である程度決まってしまいます。リフォームの際には、住みやすさや快適さだけではなく、ハウスダスト対策として掃除のしやすさにも配慮しましょう。

ハウスダスト対策は掃除しやすい家づくりから

ハウスダストの持ち込みや発生を100%防ぐことは不可能です。しかし、さまざまな工夫で減らすことはできます。特に、ハウスダストの構成成分の多くを占める綿ぼこり、次いで多い髪の毛や食べ物のクズなどは日頃の掃除で取り除くことが可能です。
リフォームする際には、ハウスダスト対策も視野に入れて「掃除しやすい家づくり」を目指しましょう。