災害に強い家にするには 健康維持とケガ防止の観点から看護師が解説

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日本は、地震や台風、土砂災害など、災害が多い国といわれています。狭い範囲で突如激しい雨が降る「ゲリラ豪雨」という言葉も一般的になりました。

これらの災害が起こったときに気になるのが、住まいへの影響です。家の倒壊まで至らなくても、大きな家具が倒れたり窓ガラスが割れたりするおそれがあります。電気やガスなどライフラインの停止による影響も心配です。

このような災害による被害を最小限にするために、私たちができることは何でしょうか?
今回は、住まいとリフォームに焦点を当てて、災害による被害を最小限にするアイデアを紹介します。

災害の多い日本 住まいへの影響は

「日本は災害が多い」といわれていますが、これはデータにも現れています。内閣府によると、日本は世界全体に占める国土面積がたった0.25%にもかかわらず、災害の発生割合は、マグニチュード6以上の地震回数が20.8%、活火山数7.0%、死者数0.4%、災害被害額18.3%と、他国と比べて災害リスクが非常に高いという特徴があります(※詳細は参照元をご覧ください)。

内閣府 「防災情報のページ|1 災害を受けやすい日本の国土」を基に作図

災害は住んでいる地域の気候や地形によっても異なりますが、被害として考えられることとして以下のものがあります。ご自身の住んでいる地域の特徴や災害のリスクを把握したうえで、これらへの対策を行うことが大切です。

家の倒壊

地震や土砂崩れによって、家が倒壊するおそれがあります。

家具が倒れる

大きな地震でなくても、しっかり固定されていないと倒れてしまうおそれがあります。

浸水

床上浸水と床下浸水があります。目に見える浸水範囲が狭かったとしても、家の基礎部分に被害が出ていることが考えられ、油断はできません。

ライフラインの停止

電気やガスなどのライフラインは、生活するうえで欠かせません。災害発生直後よりも、時間が経過するほど影響が大きくなります。

災害が引き起こす事故とは

災害による影響はさまざまありますが、具体的にどのような事故が多いのでしょうか。

家具が倒れて下敷きになる

地震の揺れにより、たんすや本棚など大きな家具が倒れることがあります。就寝中に地震が起きた場合、逃げ遅れて家具の下敷きになり、最悪の場合、窒息してしまうことが考えられます。そこまでに至らなくてもクラッシュ症候群になるおそれもあるでしょう。 クラッシュ症候群は長時間にわたって、からだが圧迫されることにより筋肉が損傷することで起こります。ミオグロブリンやカリウムといった物質が体内に放出され、腎不全や不整脈を引き起こします。

窓や食器など、ガラス類が割れる

高いところにある食器や窓ガラスが割れ、その破片が飛び散ると危険です。避難する際に床に散乱した割れ物を誤って踏んでしまい、ケガをすることも考えられます。

ドア付近に家具が倒れて開かなくなる

災害から逃げようと思っても、ドアが開かないことには逃げられません。ドア付近に家具が倒れてしまうと障害物となり、逃げ遅れの原因になりかねません。

浸水によって避難経路が絶たれる

家の中にたくさんの水が入ってくると、水圧でドアが開かなくなったり1階に降りられなくなったりしてしまいます。こうして避難経路が絶たれることは、最悪の場合、死に直結します。

総務省消防庁によると、地震による住宅内のケガの原因は、「家具等の転倒落下」が46%と最も多く、そのあとを「ガラス(29%)」が続きます。このデータから、地震によるケガを防ぐためのひとつの対策として家具等をいかに固定するか、が考えられます。

引用)総務省消防庁 「地震による家具の転倒を防ぐには

災害発生直後だけじゃない! その他の影響とは

災害の怖さは、災害そのものだけではなく、災害によって引き起こされるさまざまな状況によって大きなダメージを受けることです。具体的には、以下の5つがあります。

ライフラインが止まることにより、生活環境が悪化する

ライフラインが止まると、水が制限されて入浴できない、トイレが流せないなど、生活環境が悪化します。人体の影響として、水分を摂取できず脱水症状になる、清潔が保てないことで感染症が広がるといったことが考えられます。

持病が悪化する

もともと持病がある方は、災害によって症状が悪化することが考えられます。

薬が飲めなくなる

「家具が倒れて普段飲んでいる薬が取り出せなくなってしまった」「避難するときに持ってくるのを忘れてしまった」などの理由から、処方どおりに薬が飲めないと、体調を崩してしまいます。

食事のバランスが悪くなる

災害時は、野菜やフルーツなど日持ちしない食材を食べる機会が減り、米やパンなどの炭水化物(糖質)が多くなりがちです。糖質の摂取量が増えることで、特に糖尿病や高血圧などの生活習慣病は悪化しやすくなります。

災害によるストレス

住む環境が変わったり、これからの生活への不安が続いたりすると、ストレスがたまってきます。ストレスが大きくなると、睡眠障害や抑うつ状態など、メンタルに不調をきたすばかりか、身体面の病気のリスクにもなり得ます。ストレスをいかに和らげるかが重要です。

災害の被害を最小限にするためには

ここまで説明してきたとおり、災害による直接の被害はもちろん、災害によって起きる状況の変化もまた、心身に悪影響を及ぼします。これらを防ぐためには、災害による被害を最小限にする必要があります。ここでは住まいに関することにポイントを絞って、その対策を紹介します。

家具を固定する、置き場所を見直す

先述のとおり、地震による住宅内のケガの原因は「家具等の転倒落下」が約半数を占めていました。そのため、タンスや本棚といった大きくて重量のある家具をしっかり固定することが大切です。

最近は、金具やつっぱり棒など家具を固定できる製品がホームセンター等で簡単に見つかります。リフォームを検討している場合は、造りつけの家具へと変えることもおすすめです。
持ち物を整理して背の低い家具、コンパクトな家具に買い替える、ドアの近くには大きな家具を置かないなどの対策も考えられるでしょう。

棚の中の物を固定する

棚の中には食器や花瓶、ガラスの装飾品など、衝撃に弱いものが多くあります。これらが落下したり、割れたりしないよう耐震マットや滑り止めシートを活用しましょう。
扉付きのシェルフを新たに購入する場合は、扉にストッパーが付いているものを選ぶとよいでしょう。振動があっても扉が勝手に開かないので安心です。

窓ガラスの飛散を防ぐ

窓ガラスの飛散を防ぐには、飛散防止フィルムを貼るのが一番手軽です。合わせガラスや強化ガラスなど、安全性の高いガラスを取り入れるのもひとつです。
窓ガラスの周りには倒れやすいものを置かないようにし、衝撃から守るようにしましょう。

家の定期点検・メンテナンスを行う

外壁や屋根は、普段生活していると気にすることはほとんどありませんが、経年によって徐々に、そして確実に劣化していきます。
災害はいつ起こるか分からないからこそ、定期的に点検を行い、メンテナンスをする必要があります。外壁のひび割れはないか、排水溝のつまりはないかなど、専門業者の力を借りながら安心できる住まいを維持していきましょう。

まとめ

いつもと変わらない日常を過ごしていると、災害への意識は薄れがちになってしまいます。しかし、災害が起こると日常が一変します。
日常の基盤となる住まいを整えることは、生活を守ることの第一歩です。防災用品の準備や不用品の処分とともに、住まいを整えて災害に備えましょう。