三世代同居のメリット・デメリットとは? 国や自治体の補助金制度も解説

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日本では少子高齢化や女性の社会進出にともない、子育てや介護が社会的問題となっています。国や自治体は三世代同居や近居を推進しており、補助金などさまざまな対策を打ち出しています。ただ、実際に三世代同居をした場合には、よいことばかりとはいえません。

この記事では、三世代同居で考えられるメリット・デメリットや、国や自治体の補助金制度について解説します。

三世代同居とは

三世代同居は戦前の日本では当たり前でしたが、近年においてはある種のノスタルジーを感じさせる家族のスタイルです。ここでは三世代同居の現状をご紹介します。

1.祖父母・夫婦・子供の三世代が同じ家で一緒に暮らす

三世代同居とは、同じ家の中で祖父母・夫婦・子どもの三世代が一緒に暮らすことをいいます。国民的アニメ「サザエさん」を思い浮かべるとイメージしやすいのではないでしょうか。

子育て中の夫婦は祖父母の手を借りながら、にぎやかな環境で子どもを育てることができます。その後、子育てを手伝ってもらった子ども夫婦が、親の介護を各家庭で行うことにより、介護費の抑制など高齢社会対策につながる余地が見込めます。

また、大家族としてお互いに支え合える家庭環境であるため、子育て中の親が孤立する心配がありません。政府は子育ての負担を軽減することにより少子化が抑えられるとして、三世代同居や近居をしやすい環境づくりを推進しています。

2.三世代世帯数割合はどんどん減っている

政府が力を入れている反面、実際のところ三世代世帯は年々減少傾向にあります。厚生労働省「高齢社会白書」によると1980年に全世帯の半分を占めていた三世代世帯は、1990年には約40%、2000年には26.5%とどんどん少なくなっており、最新データとなる2018年には10%になっています。子どもの生まれる数も年々減少していることから、国が期待している効果は現状得られていないといえるでしょう。

厚生労働省「令和2年版高齢社会白書(全体版)|図1-1-8 65歳以上の者のいる世帯数及び構成割合(世帯構造別)と全世帯に占める65歳以上の者がいる世帯の割合」を基に作図

三世代同居のメリット・デメリット

「国民生活基礎調査(平成28年)」の結果によると、日本でもっとも三世代同居が多い(65歳以上の人と子との同居率が高い)都道府県は山形県(※1)のようです。
ここでは、山形県のデータを基に、メリット・デメリットをみてみましょう。

メリット

三世代同居の大きなメリットは、親子で助け合いながら生活できる点です。たとえば、毎日の家事を協力し合ったり、病気になった際には病院へ連れて行ってもらったりできることが挙げられます。孫にとっては、親だけでなく祖父母との温かい触れ合いを体験しながら成長でき、祖父母もまたかわいい孫の成長を楽しみながら暮らせます。

共働きの夫婦は自宅に祖父母がいるので、安心して仕事に取り組めます。また、子ども夫婦は親が所有している持ち家に住んでいる場合、住宅ローンや家賃などの住居費がかかりません。経済的に余裕のある生活ができるのもメリットです。そして、祖父母は若い世代と同居できるので、老後の生活に安心感を得られます。三世代同居とはつまり、互いに協力をしあいながら相手のメリットになることを与えあえる家族関係といえるでしょう。

山形県「山形県における三世代同居・近居に関するアンケート|P23 図表1-14 三世代同居のメリット(全体、性別)<複数回答>」の情報を基に作図

デメリット

親子関係が良好ならメリットの多い三世代同居ですが、親と子の折り合いが悪い場合は家庭環境に悪影響を及ぼすことも考えられます。また、良好であってもライフスタイルや価値観の違いにより、行き違いが生じる場合もあるようです。たとえば、祖父母は定年退職をして悠々自適な生活を楽しんでいるにもかかわらず、現役世代の子ども夫婦は仕事が忙しく、生活サイクルがかみ合わないというのは、想像しやすいものです。

価値観が世代によって違うため、お互いの考え方や行動が理解できない面もあるでしょう。たとえば、時代により子育ての仕方も変わるため、祖父母と子ども夫婦で衝突することも考えられます。さらに、いまは元気で頼りになる親も、いつかは年老いて子どもが面倒を見るようになります。将来の介護を考えると、心のなかで負担に思ってしまう場合もあるようです。祖父母もまた年齢が上がるにつれて、孫の面倒を見るのが体力的にきつくなります。このように家族といえども違う世代の人同士が同じ屋根の下で生活するのは、実際のところ並大抵のことではありません。

山形県「山形県における三世代同居・近居に関するアンケート|P29 図表1-19 三世代同居のデメリット(全体、性別)<複数回答>」の情報を基に作図

国と自治体の支援制度

上述のとおり、国や自治体は三世代同居を推進しています。ここでは、国と自治体の支援・減税制度について解説をしていきましょう。

グリーン住宅ポイント

建築または購入する住宅が三世代同居仕様である場合、「グリーン住宅ポイント」の加算を受けられます。三世代同居仕様住宅とは、キッチン、浴室、トイレ、または玄関のうち、2つ以上が複数個所ある住宅をいいます。要件や加算されるポイント(※2)は、以下のとおりです。

▼加算されるポイント数
  • 高い省エネ性能等を満たす場合......60万ポイントを加算(合計100万ポイントを発行)
  • 一定の省エネ性能を満たす場合......30万ポイントを加算(合計60万ポイントを発行)

このポイントは、「商品交換」と「追加工事交換」の2種類で利用できます。商品交換では家電やインテリア、スポーツ用品など生活に関するアイテムを選べ、追加工事交換では「新たな日常」に分類される追加工事に利用できます。たとえば、ワークスペースの設置など自宅でのテレワークが快適になるリフォームや玄関まわりの洗面化粧台など、菌・ウイルス拡散防止工事が対象です。

このように、自分の好きな方法でポイントを利用して、暮らしや住まいのグレードアップに役立てることができます。

長期優良住宅化リフォーム推進事業

既存住宅の性能向上や子育てしやすい環境をつくりあげるリフォームを支援する「長期優良住宅化リフォーム推進事業」もあります。補助対象費用のひとつには「子育て世帯向け改修工事に要する費用」が盛り込まれており、補助率・補助限度額は以下のとおり(※3)です。

  • 補助率:補助対象費用の3分の1
  • 補助限度額:原則100万円/戸

この事業では主に発注者に代わって施工業者(補助事業者)が申請手続きを行い、国から補助金をもらったあと、施工業者から発注者へと還元する流れになっています。

自治体の三世代同居・近居支援事業

各自治体でも三世代同居・近居支援事業を積極的に実施しています。たとえば千葉市では、離れて暮らしている「親と子と孫」を基本とする三世代の家族が、これから市内で同居または近居をする際、住宅の新築費用として助成金を受給しています(限度額50万円、市内事業者が施工した場合は限度額100万円)。(※4)

まとめ

三世代同居は、子は祖父母という心強い子育てサポーターが身近にいるため、心身にゆとりある暮らしが実現しやすく、孫にとっては祖父母とのふれあいをとおして情操を育める良さがあります。そして、祖父母にとっては孫の成長を身近にしながら生きがいをもって暮すことのできるライフスタイルです。

ただし、人間には相性というものがあり、親との関係が上手くいかない場合には家庭環境にひずみが出ることも考えられます。近居ではなく、完全にひとつ屋根の下で親と一緒に生活をする場合は、関係性を良好に保てる工夫を凝らしながら、異なる世帯それぞれが自分たちらしく暮らしていけるようにしたいものです。