住宅火災から高齢者を守ろう! リフォームでできる対策とは

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住宅火災は乾燥しやすい冬に多く発生しています。(※1)住宅火災での死亡者数は減少傾向にありますが、死者数に占める高齢者の割合は増加の一途をたどっています。(※2)

高齢者が火災に巻き込まれないためには、住宅にどのような対策ができるのでしょうか。

今回は、高齢者世帯にとっての火災の危険性を解説します。あらかじめの対策で、ご自身や大切な人を守れる住まいを実現しましょう。

高齢者が知っておきたい火災の危険性と原因

高齢化社会が進む日本では、住宅火災によって亡くなる高齢者がたいへん多くなっています。消防庁の2014~2018年のデータ(※3)によると、たばこの不始末、石油ストーブや電気ストーブが原因となるもの、そして電気配線が火のもととなる火災によって高齢者が亡くなっています。
また、住宅火災による死者のうち約7割が高齢者であり、その半数以上は「逃げ遅れ」が原因です。

総務省消防庁「令和2年(1~12月)における火災の状況(確定値)|p8」を基に筆者作成

リフォームでできる高齢者の火災防止

身体機能が低下しがちな高齢者を火災の危険から守るために、リフォームの視点からでは以下のことが考えられます。

キッチンのリフォーム

毎日の食事づくりに欠かせないコンロは、IHクッキングヒーターや安全装置つきの製品にリフォームするのがおすすめです。安全装置付きのコンロには、下記のような機能が付いており、万が一のときにも安心です。

  • 天ぷら油の発火を防ぐ加熱防止装置
  • 火を消し忘れたときの消化機能
  • 吹きこぼれなどで火が消えてしまった場合にガスを止める機能

この安全装置は、2008年10月以降に製造された家庭用ガスコンロの全口に搭載することが法律で義務化(※4)されています。それ以前に製造されたガスコンロを使用している場合には、ぜひとも検討してみましょう。

住宅用火災警報器の設置と点検

火災が起きれば就寝中でも大きな音で知らせ、逃げるように促してくれる住宅用火災警報器は高齢者にとって非常に重要な機器です。とはいえ、古くなると電子部品の劣化や電池切れなどで火災を感知しなくなる場合があり、そのまま放置していると、いざという時に逃げ遅れてしまう原因になります。定期的に火災報知器の点検を行うことが必要です。

防炎性能を持つカーペットやカーテンを取り入れる

高齢者の住まいのリフォームでは、転倒してもケガをしにくいカーペットを床材として採用するとよいでしょう。その中でも「防炎性能」が表示されているカーペットが高齢者の居室にはおすすめです。

防炎性能とは、以下のような機能を指します。

「防炎とは、「燃えにくい」性質のことであり、繊維などの燃えやすい性質を改良して防炎の性能を与えると、小さな火源(マッチやライターなど)に接しても炎が当たった部分が焦げるだけで容易に着火せず、着火しても自己消化性(小規模燃焼において(有炎、無炎を含む)燃焼が継続しない性質)により燃え広がらなくなる性質のことである」

引用:消防庁 「防炎の知識と実際」 p4 防炎とは

防炎物品には「防炎ラベル」が取り付けられています。これは消防法で定められた基準に合格した製品にのみ認められた証です。製品を選ぶときは、この「防炎ラベル」の有無を確認するようにしましょう。

JFRA 日本防炎協会ウェブサイトより引用(一部加工)

「防炎物品」にはカーペットやカーテンだけではなく、パジャマや布団カバーなど就寝時に身近にあるものや、キッチンで身につけるエプロンも用意されています。このような「燃えにくい」性能を持つ製品を取り入れると、初期消火を行うことで延焼を防ぎ、高齢者の命を守ることにつながります。

高齢者が火災を起こさないために

ここでは、高齢者が住宅火災を起こさないための、その他の注意点について見ていきましょう。

ストーブ

ストーブが原因となる住宅火災を起こさないためには、そばに燃えやすいものを置かないことは絶対です。ストーブの上に干した洗濯物、電気ストーブから着火した布団から家中に火が燃え広がる事例は多く見られます。ストーブの周りは常に整理整頓して、燃えやすいものは置かないように心がけましょう。
このほか、石油ストーブを運転させたまま動かそうとして転倒したり、火をつけたまま給油していたら、灯油がこぼれて発火したりすることも、住宅火災の原因のひとつです。石油ストーブの移動や給油は確実に火が消えてから行うようにしましょう。

たばこ

たばこが原因の住宅火災を起こさないためには、吸い殻はためずに一度水にさらしてから捨てることが重要です。また、喫煙する場合は灰皿のある決まった場所で吸うようにしましょう。部屋の中での「歩きたばこ」、布団に入っての「寝たばこ」は住宅火災の原因となりやすいため絶対にしないように心がけてください。

コンロ

高齢者のみの世帯では、キッチンをリフォームしてIHクッキングヒーターや安全装置付きのコンロを取り入れることをおすすめしました。その上でさらに注意したいことは、調理中に火から目を離さない、燃えやすいものをコンロのそばに置かないことが挙げられます。
なお、揚げ物中に発火した場合は、水をかけると炎が爆発的に広がり延焼の原因になります。必ず消火器で消すようにしましょう。

電気配線

コンセント周辺では「たこ足配線」が火災の原因となります。コンセントやプラグが過熱されてそこから発火するためです。
また、アイロンやドライヤーをコンセントに差したままにしておくことも、とても危険です。何かの拍子にスイッチが入ると住宅火災につながります。冷蔵庫やテレビのプラグは、見えにくい場所にあることが多くなっています。そのため、ホコリがたまって放電して出火することもあります。
住宅火災を起こさないためには、電気配線が傷んでいないかを注意すること、こまめにコンセントまわりを掃除することが重要です。

ローソクなどの灯明

仏壇などのローソクや灯明も高齢者が暮らす住宅火災の原因となっています。倒れたローソクや灯明の火が畳や座布団に移って燃え広がることが起こっています。仏壇のそばを離れるときは短時間でも必ず消すようにしましょう。仏壇などのそばに窓がある場合には、風やカーテンにも注意が必要です。
最近では、ローソクのようにゆらぐLEDの照明器具なども販売されています。住宅火災を防ぐために、このような器具への交換を検討することをおすすめします。

まとめ

今回は、高齢者が気をつけたい住宅火災の原因や注意点について解説してきました。
住宅火災の原因となるいくつかの要因は、キッチンや床材のリフォームによって予防できます。その他の原因も生活習慣を見直すことによって、火災を起こす危険からご自身と大切な方の身を守れます。
さっそく住まいを見直し、今日から安心安全な暮らしを始めましょう。