冷え性に厳しい寒い冬......窓のリフォームで暖かく快適な部屋を手に入れよう!

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冬、ストーブやエアコンをつけているのに暖かくならない、と思っている方は多いのではないでしょうか。窓付近に立つと足元が寒いことに気付く人もいらっしゃるかもしれないですね。

窓付近を含む建物の外周部は建築用語で「ペリメーター」と呼ばれていて、外気温度の影響を受けやすい場所として認識されています。室内の温熱環境には、照明器具や人から発する熱の影響以上に、外周部からの熱量の影響が大きいといわれています。

ペリメーターゾーンのうち、特に窓の周辺は壁以上に外からの影響を受けます。日射を受けて窓辺が暖かくなることはもちろんですが、外が寒い日の窓はひんやり冷たく、夏にはじんわり暑くなります。なぜ窓の近くは外気の影響を受けやすいのでしょうか。また、外気の影響をうまく回避することはできないものでしょうか......。
この記事では、快適な住環境を得るための方法について、ご紹介します。

部屋の熱は窓から逃げる

冬の寒い日、部屋の内側から窓ガラスと壁を触ってみましょう。壁より窓ガラスの方が冷たいと感じるはずです。せっかく室内の空気を暖房で暖めても、窓ガラスがこんなに冷たいと熱が奪われ周囲の空気は冷えてしまいます。
下の図は、冬の暖房時に住宅のどこから熱が逃げていくのかを表したものです。

一般社団法人 日本建材・住宅設備産業協会の情報を基に作図
※1999年の省エネ基準(次世代省エネ基準)で建てた家がモデル

逃げる熱のうちの半分以上が窓などの開口部からである、ということがわかります。一方、壁は15%と開口部の半分以下です。なぜこんなにも大きな差があるのでしょうか。それは、窓ガラスと壁との間に、熱伝導率の大きな差があるからです。熱伝導率とは物体における熱の伝わりやすさのことで、熱伝導率が高いほど熱が伝わりやすく、低いほど伝わりにくいことを示しています。

下記の表はガラスと、外壁の中によく使われる断熱材のグラスウール、そして乾燥した空気の熱伝導率を示したものです。これを見るとガラスは断熱材よりはるかに熱伝導率が高く、室内の暖かい空気から熱を奪いやすいことがわかります。

表)素材の熱伝導率一覧
丸善出版「理科年表 2019」国立天文台 編p.245 、大阪教育大学Webサイト「熱伝導率[熱の伝わる速さ]」を参考に筆者作成

ここで興味深いのは、乾燥空気の熱伝導率がグラスウールよりも低いことです。つまり、乾燥空気は、絶好の断熱要素なのです。この特性を活かしたのがペアガラスやトリプルガラスといった「複層ガラス」です。複層ガラスとは、2枚や3枚のガラスの間に乾燥空気を挟んだ、断熱性能の高いガラスのことをいいます。

次のグラフは新築住宅における複層ガラスの採用戸数割合を示したものです。
統計の始まった平成11年には57.9%と6割に満たなかった複層ガラスの採用も、平成30年には98.6%に上り、最新データである平成31年・令和1年には98.9%とほぼ全ての新築住宅に採用されるまでになりました。

複層ガラスの普及率の推移
板硝子協会Webサイト「複層ガラス/Low-E複層ガラス普及率の推移」を参考に筆者作成

とはいうものの、これは新築での普及率です。複層ガラスではなくシングルガラスが使われている住まいではどのような寒さ対策をすれば良いのでしょうか。ひとつは、窓のリフォームを行い、シングルガラスからペアガラスやトリプルガラスに変更することです。断熱性を高めるもっとも確実なリフォーム法ですが、工事が大掛かりで費用もかかります。

費用を抑えるのならば、既存の窓より内側に内窓を取付けるリフォームが有効です。内窓を取り付けることで外気と室内の間に空気層を設けることができ、断熱性を高めることができます。こちらもリフォーム工事が必要になります。

では、もっと簡単な寒さ対策はないのでしょうか。手軽に始められる方法としては、ストーブの置き場所を変える、エアコンの風向きを変えるなど、暖房器具の風向きを見直す方法があります。また、カーテンやブラインドといった「ウィンドウトリートメント」のリフォームを行う方法もあります。

ストーブは窓際に エアコンの温風は窓の足元に当てる

部屋を効率的に暖めるには、ストーブを窓側に置くとよいでしょう。窓ガラスの近くで熱を奪われた冷たい空気がストーブに降りてくることで暖められ、その空気が床面に広がり、部屋の上部に向かうことで、室内を暖めてくれます。冷たい空気が発生したらすぐに暖めることで、冷たい空気が部屋中に広がることを防ぐことができるのです。

ヨーロッパの住宅ではパネルヒーターが使われる場合が多くありますが、これも窓の直下に設置されており、暖かい空気が室内を循環するように工夫されているのです。

暖房器具を壁際に置いた例(左)と窓際に置いた例(右) 筆者作成

エアコンの風向きを考える際も、ポイントは同じです。冷えた空気が部屋中に広がることを防ぐことが重要なので、窓際の足元をねらうと効率よく部屋を暖められます。最近のエアコンには風向きを二方向に分けられる製品もありますから、ひとつは窓際に、もうひとつはダイレクトに暖めたい場所に向けてみるのも良いかもしれません。

カーテンで冷気を包んで逃がさない

カーテンもまた寒さ対策の強い味方です。ところで、皆さんはカーテンを新調する際、その長さはどのように決めていますか? 床まである掃き出し窓に設置する場合、一般的には床から1㎝浮くくらいを勧められることが多いのではないでしょうか。
ところが、冷たい空気はこの床とカーテンの隙間の、たった1㎝からでも室内に流れ込みます。寒さ対策からカーテンを考えるには、この隙間を塞いでカーテンから冷気が漏れ出さないようにすることが重要です。カーテンの裾を床に着くまで垂らし、冷気を閉じ込めてしまいましょう。

カーテンと床の間に隙間がある例(左)と隙間がない例(右) 筆者作成

このほかにもブラインド自体で空気層を作り断熱するハニカムブラインドなど、窓まわりの工夫で寒さに対応することもできます。

まとめ

適切に断熱を施すこと、適切に空調をすること、そして適切に工夫をすることは、室内で快適に過ごすためにとても大切な手段です。こうした熱への対策は、冬の寒さに対してだけではなく夏の暑さにも有効な方法となります。

不快な熱環境から脱却してストレスの少ない室内環境を得ることは、家で過ごす時間を豊かで心地よいものにすることにつながります。快適な住空間を手に入れるために、まずは窓際から見直してみてはいかがでしょう。