中古マンションの断熱リフォーム 費用を抑え効率よく仕上げるための考え方

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最近の住まい方のひとつの選択肢として、中古マンションを購入し、自身のライフスタイルに合わせてリフォームするといった方法が注目されています。

土地を買い、住まいを新築することに比べて、中古マンションは価格的にも手が届きやすく、かつリフォームも新築に比べるとコストを抑えることができます。このようにして、自分らしい間取りを実現できることがマンションリフォームのメリットと言えます。
また、子育てが終わり、子どもが家を出た後、所有していた戸建ての住まいは単身や夫婦で過ごすには大きすぎることもあり、自宅を売却して適度な広さのマンションに住む方も多く見られるようになりました。

マンションリフォームと言えばコンクリートをあらわしにした事例もよく見られますが、単に見た目だけを考えていると、夏は暑く冬は寒い住まいになりかねません。マンションリフォームであっても、快適な住まいとするためには、断熱性についても十分に考慮する必要があります。

今回は、マンションでもできる断熱リフォームの方法について解説していきます。

中古マンションのリフォームは、断熱向上も同時に

国土交通省の資料によると、全国の高齢世帯が居住する持ち家の共同住宅のストックのうち、現行の省エネ基準(平成11年制定)のひとつ前の基準である、平成4年時の省エネ基準を満たす住宅は全体のわずか11.6%に留まっています。さらに、昭和55年に定められた最初の省エネ基準を満たしていない住宅(昭和55年以前に建てられた住宅)、つまりほぼ無断熱に等しい住宅は39.8%と、全体の約4割を占めています。
こうした数値から、中古マンションの多くは断熱性能が不十分な状態であることが推察できます。

国土交通省「既存住宅ストックの現状について|P4 高齢世帯が居住する住宅ストック(持家の場合)」の情報を基に筆者作成

マンションの多くは鉄筋コンクリート造であり、木造に比べると室内が温かいイメージを持たれる方も多くみられます。
確かにコンクリートは木に比べると熱を蓄える力(熱容量)が大きいため、昼間に暖められた熱が夜に放出されることで、1日を通して部屋の温度が安定しやすいことは事実です。しかし、夏の強い太陽の熱も受け止めるので、断熱が不十分だと夏場は1日中暑い住まいとなってしまいます。

マンションリフォームでは内装をやり替えて間取り全体を変えることが多いため、1度すべての仕上げ材を撤去し、躯体のコンクリートをあらわしとした状態にしてから工事を行うことになります。その後、新しく仕上げをして躯体を隠してしまうと、後から断熱工事を行うことが難しくなってしまいます。そのため、リフォームによって間取りを更新するのであれば、既存の仕上げを撤去し、躯体があらわしとなった状態のときに、あわせて断熱リフォームを行うことが効率的、と言えます。

外壁を断熱する方法

マンションでの断熱リフォームは、外壁を断熱することが主になります。既存のマンションの状態によって、リフォームの方法が異なるため、それぞれの違いについて解説していきます。

既存マンションが無断熱、またはボード状の断熱材の場合

築年数が経ったマンションでは、無断熱状態の場合も多く見られます。断熱が施されていても薄いボード状の断熱材が使われているだけ、ということもあります。
既存の断熱材は性能が低く、劣化も考えられるので、そのまま利用すると結露などの不具合の原因になりかねません。こうした場合、既存の断熱材をすべて撤去してから、新しい断熱材を施工するほうが断熱性を確保しやすいと言えます。

既存マンションが吹付の断熱材の場合

比較的築年数の浅いマンションの場合、ウレタンなどの吹付系の断熱材が使われていることがあります。これは現在でも一般的な工法です。ただし、築年数によっては吹付の厚みが薄い場合もあるので、断熱リフォームを行うことでより快適性を向上させることができます。
吹付の断熱材は撤去が難しいことから、断熱リフォームを行う場合は、既存の断熱材の上から吹付を行う「付加断熱」が適切と言えます。これによって断熱の厚みを増し、より屋外の影響を受けないようにすることができます。

引用)住友林業のリフォーム「マンションリフォームの断熱技術

最上階は屋根、1階は床下の断熱を行う

断熱は屋外に面する部分に行う必要があります。最上階の場合、屋根面に強い太陽熱を受けるので、天井部分にも断熱を行わなければなりません。屋根面となるコンクリートに吹付の断熱を行ったり、天井面に断熱材を敷き込んだりすることで効果が現れます。なお、住まいが1階の場合は、地下や土からの影響を受けるため、床下に断熱材を敷き込むなどし、断熱する必要があります。

窓の断熱性能を向上させるには

窓は、屋外の熱の影響を最も受けやすい場所です。断熱リフォームを行う場合、窓まわりの断熱対策は外せません。しかし、マンションの場合、窓は共有部扱いとされることが多く、交換が難しい物件がほとんどです。そのうえ、中古マンションでは断熱性の低い単板ガラスの窓が多く見受けられます。

このような場合の断熱方法として、「内窓の設置」が考えられます。内窓とは、既存の窓の内側に窓を設置して窓を二重にすること。これにより、断熱性能を確保できます。この場合、新しく取り付ける窓と既存の窓とのあいだに空間が生まれますが、この空間が空気層と同じ役割を果たし、断熱効果を発揮します。

最近では需要の高まりから、内窓用の既製サッシも販売されるようになってきました。マンションで多用されているアルミサッシでなく、より断熱性能の高い樹脂サッシの内窓を選べば、より高い断熱性能を発揮することができます。

引用)住友林業のリフォーム「マンションリフォームの断熱技術

断熱はどの範囲まで行うもの?

マンションでは主に、外側となる部分の断熱リフォームを行いますが、迷うことの多いのが、隣や上下の住戸とのあいだの戸境壁や、床・天井の断熱です。こうした住戸同士の境界も断熱を行う必要があるのでしょうか。

たとえば、マンション全体をひとつの大きな戸建て住宅と考えると、それぞれの住戸は戸建て住宅におけるひとつひとつの部屋と言えます。そう考えれば、住戸の境となる壁や床、天井の断熱を、コストをかけてまで行う必要がないと言えるでしょう。

自分が冷暖房を使用している場合、同じように他の居住者も冷暖房をして部屋を快適に保とうとしています。であれば、隣や上下の部屋が極端に寒い、または暑いということはほとんど起こらないと考えられます。

予算が潤沢にある場合を除けば、屋外に面する箇所以外はコストをかけて断熱しなくてもよいことが想像できるのではないでしょうか。

中古マンション購入時に気を付けたい、断熱のポイント

断熱は屋外に面する外側の部分に行うのがポイント、と解説しましたが、重要なのは住戸がマンションのどこに位置するかを考えることです。

断熱の観点から考えると、条件的にもっとも不利なのは、屋根や床下からの熱の影響を受けやすい最上階や1階の住戸と言えます。また、角部屋も同じく、屋外に面する外壁面が多いので、最上階、1階に次いで熱の影響を受けやすい住戸位置と言えます。反対に、影響を受けにくいのは、両隣と上下を別の住戸に挟まれた住戸です。屋外に面する部分が少ないため、屋外の影響を受けにくく、断熱リフォームにかかるコストも抑えることができるのです。

しかし、最上階は見晴らし、1階は専用のテラスや庭、角部屋は採光といった魅力があることも事実です。断熱リフォームに多少のコストがかかっても物件として魅力的な住戸を選ぶか、断熱の観点からよりメリットのある住戸を選ぶかは人それぞれです。自身のライフスタイルや予算を考慮して購入を検討することが大切です。

図)筆者作成

まとめ

中古マンションのリフォームは戸建ての新築と比べてコスト上のメリットがあり、有利な予算で、都心により近い場所で生活できることもひとつの魅力です。一方で、快適な住まいとするためには、断熱リフォームを十分に行うことがとても重要になってきます。加えて、住戸の位置によってその環境も大きく異なります。中古マンションを購入する際は何を優先したいのか、自身の価値観を整理して検討することが大切であると言えます。

すでにマンションに住んでいる人にとっても、夏や冬が不快な場合、断熱リフォームを行うことで、これらの悩みを解消することができます。

マンションの断熱リフォームは、より簡便に快適な住まいを手にできる、一つの方法といえるでしょう。