暖房リフォームにはたくさんの選択肢が。専門家が徹底解説します

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リフォームによって省エネ性がアップした住まいに暖房設備を導入する際、どのような種類があるのか、またどのようなリフォームを必要とするのかを知っておくと、製品を選ぶときに役立ちます。

この記事では、リフォームによって取り付けられる暖房器具のひとつひとつを順に紹介します。リフォームの方法や費用の相場、注意点もあわせて解説しますので、暖房リフォームに興味がある方はもちろん、イメージがわきにくいと感じるときに知識のひとつとして、ぜひお役立てください。

ビルトインエアコン

天井に埋め込むタイプのエアコンを「ビルトインエアコン」と言います。ビルトインエアコンのリフォームは、ルームエアコンを設置するより費用がかかりますが、冷暖房の効率がよく、省エネ性のアップを期待できます。

1.特徴

  • 凹凸が少ないため空間がすっきりする
  • 空調効果が高い
  • 天井の空きスペースを活用できる
  • 室外機を好きな場所に置ける(複数台設置する場合でも室外機1台で対応できる)
  • 熱源が天井にあるため、火傷の心配がない
  • ルームエアコンよりも種類が少ない
  • 機器費用、設置費用が高い
  • 故障や取り替えの際、工事が必要
  • メンテナンスのための点検口を住まいに設ける必要が生じる場合がある

2.リフォームのイメージ

  • 広い部屋に冷暖房効率のよいエアコンがほしい
  • 地下室への設置を考えている
  • エアコンを目立たせたくない
  • 室外機を置くスペースが限られている

3.リフォームの手順

1.現地調査

取り付ける天井裏の状況や配管ルートを確認します。既存のエアコンがある場合、配管や室外機が再利用できるかを確認します

2.見積、契約

現地調査をもとに見積書が作成されます。値段に合意したうえで契約を結びます

3.着工、養生

運搬ルートを確認し、取り付ける部屋に傷がつかないよう養生材で保護します

4.天井開口

エアコンを取り付ける部分を、適した大きさに開口します

5.配管

ダクト配管工事を行い、配管に結露防止の断熱材を施工します

6.本体設置

新しいエアコンを天井に設置し、化粧パネルをかぶせるように施工します

7.既存物の撤去、ふさぎ、再利用準備

既存の室外機やダクトの配線が残っている場合は、撤去、またはふさぐ作業を行います。再利用する場合は、洗浄してサイズを調整します

8.試運転

配管に冷媒を注入し、動作確認を行います<完了>

4.費用相場

1台あたり15~25万円

密閉式石油ヒーター

密閉式石油ヒーターは、「FF式暖房機」と呼ばれます。換気をすると室内が凍り付いてしまうような寒冷地での信頼を特に集める暖房機です。ヒーターから発せられる遠赤外線の輻射(ふくしゃ)効果で部屋全体がじんわりと暖まります。

1.特徴

  • 暖まるのが早い
  • 室内の空気を汚さず、安全
  • 換気の必要がない
  • 水蒸気が発生しない
  • 静か
  • 電気式の暖房機に比べて低コスト
  • 床に置き場所が必要
  • 熱源が床付近に来るため火傷に気を付ける必要がある
  • 置くだけの「開放式石油ヒーター」と比べて機器代が高い

2.リフォームのイメージ

  • 高気密の住宅である
  • 室内の空気を汚したくない
  • 換気が面倒、換気によって室内が冷えるのを避けたい
  • ランニングコストを抑えつつパワフルな暖房がほしい

3.リフォームの手順

1.現地調査

取り付ける場所の状況や配管ルートを確認します。既存のヒーターがある場合、煙突が再利用できるかを確認します

2.見積、契約

現地調査をもとに見積書が作成されます。値段に合意したうえで契約を結びます

3.着工、養生

運搬ルートを確認し、取り付ける部屋に傷がつかないよう養生材で保護します

4.各配管取り付け

給気用のホース・排気用の煙突・給油配管をヒーターに取り付けます

5.煙突取り付け

取り付けた配管をもとに煙突の位置を決めて大きさを測定し、外壁に穴をあけ、接続します。その後、屋外に金物を取り付け、雨水や虫の侵入対策をします

6.試運転

動作確認を行います

7.防水措置

屋外の煙突まわりに防水措置を行います<完成>

4.費用相場

1台あたり7~20万円

床暖房

床暖房は、床材の下に敷いた熱源からの輻射効果で部屋全体を暖める暖房機です。そのため、他の暖房器具にはない心地よさを感じるという人は少なくありません。
部屋の広さや使う時間に応じて「電気式」「温水式」を使い分けると、お財布にも優しいリフォームになります。

1.特徴

  • ホコリを舞い上げない
  • 水蒸気が発生せず室内の空気を汚さない
  • 暖房器具を置くスペースを必要としない
  • 足元からの輻射効果で部屋全体が暖まる
  • 静か
  • 部屋全体が暖まるまで時間がかかる

電気式床暖房の特徴

  • 電熱線ヒーターで暖める
  • 床材一体型がある
  • 温水式より工事が簡単に済み、工事費用が安い
  • 温水式より光熱費がかかる
  • 8畳に満たないさほど広くない部屋や長時間利用しない部屋に向いている

温水式床暖房の特徴

  • 給湯器で作られた温水を床下の配管に循環させて暖める
  • 室外に給湯器を置くスペースを要する
  • 電気式より工事の手間と費用がかかる
  • 電気式より光熱費が安く済む
  • 広い部屋、全館床暖房、長時間暖房する部屋に向いている

2.リフォームのイメージ

  • ハウスダストなど、アレルギーが心配な家族がいる
  • 床暖房の暖まりかたが好き
  • 足元の冷えが気になる

3.リフォームの手順

▼床暖房(電気式)

1.現地調査

取り付ける場所を確認します。床の傷み、建具との干渉、リモコン設置場所、配線ルートなどを確認します

2.見積、契約

現地調査をもとに見積書が作成されます。値段に合意したうえで契約を結びます

3.着工、養生

運搬ルートを確認し、取り付ける部屋に傷がつかないよう養生材で保護します

4.既存床補強

既存の床の傷みを補修し、必要に応じて補強・断熱します

5.電気工事

分電盤の配線工事を行います

6.床暖房敷設

床面に暖房パネルを敷きます

7.仕上げ

床暖房対応のフローリング材等を施工します

8.開口部周辺仕上げ

床と建具が干渉する部分の調整や仕上げを行います

9.リモコン取り付け

リモコンを取り付けます

10.試運転

熱源機を設置して動作確認を行います。問題がなければ、はれて引き渡しとなります

▼床暖房(温水式)

1.現地調査

取り付ける場所を確認します。床の傷み、建具との干渉、リモコン設置場所、配管ルート、給湯器の設置場所などを確認します

2.見積、契約

現地調査をもとに見積書が作成されます。値段に合意したうえで契約を結びます

3.着工、養生

運搬ルートを確認し、取り付ける部屋に傷がつかないよう養生材で保護します

4.既存床補強

既存の床の傷みを補修し、必要に応じて補強・断熱します

5.配管

床下に温水チューブを施工します

6.温水パネル敷き込み

床面に温水パネルを敷きます

7.接続

温水チューブと温水パネルを接続します

8.仕上げ

床暖房対応のフローリング材等を施工します

9.開口部周辺仕上げ

床と建具が干渉する部分の調整や仕上げを行います

10.リモコン取り付け

リモコンを取り付けます

11.漏水検査

水漏れがないか確認します

12.試運転

熱源機を設置して試運転を行います。問題がなければ、はれて引き渡しとなります

4.費用相場

  • 床暖房(温水式) :8~15万円(1畳あたり)
  • 床暖房(電気式) :5~10万円(1畳あたり)

浴室暖房機

浴室暖房機は、入浴時の寒暖差をやわらげる浴室専用の暖房機です。温度差による血圧の変動でおこる「ヒートショック」を防ぎ、安全で快適なバスタイムをサポートしてくれます。

1.特徴

  • スタンダードな「暖房乾燥機」のほか、上位機種の「換気乾燥暖房機」がある
  • 涼風機能付きの「換気乾燥暖房機」もある
  • ユニットバス、在来浴室どちらにも施工が可能

なお、浴室暖房機には、「ヒートポンプタイプの電気式」「電気ヒーター式」「ガス温水式」があり、それぞれに特徴があります。

ヒートポンプタイプ

  • 室外の空気から回収した熱を留めて暖める
  • 省エネ性、パワーに優れる

電気ヒーター式

  • ヒーターを発熱させて温風を流し、暖める
  • 設置費は比較的安い
  • ヒートポンプタイプと比べてパワーが劣る

ガス温水式

  • 室外の熱源機で作られた温水による熱から温風を流し、暖める
  • 電気式と比較してパワーがある
  • 熱源機の設置スペースを要する
  • 電気式より工事手間と費用がかかる

2.リフォームの手順

1.現地調査

取り付ける場所や天井裏、分電盤の空き状況を確認します

2.見積、契約

現地調査をもとに見積書が作成されます。値段に合意したうえで契約を結びます

3.着工、養生

取り付ける部屋に傷がつかないよう養生材で保護します

4.壁・天井開口

取り付け場所を開口し、取り付け板を設置します

5.ダクト配管

ダクト、電気配線を設置します。必要に応じて電気工事を行います

6.本体取り付け

新しい暖房機とリモコンを取り付けます

7.室外機取り付け

室外機を取り付けます

8.試運転

試運転を行い、正しく動くか確認します

9.防水措置

室外機に防水措置をします<完成>

3.費用相場

1台あたり10~25万円

洗面脱衣室(小部屋用)暖房機

洗面脱衣室暖房機は、電気の力で内蔵のヒーターを発熱させて温風を流し、室内を暖めます。狭くて燃えやすい布製品の多い洗面脱衣室でも、熱源に触れる心配がなく安全です。

1.特徴

  • 立ち上がりが早い
  • 部屋全体がすぐに暖まる
  • 「人感センサー」「ドライヤー」「涼風」など、さまざまな機能を有する機種がある
  • 長時間使う場合に光熱費がかかる

2.リフォームの手順

1.現地調査

取り付ける場所や分電盤の空き状況、コンセントの位置を確認します

2.見積、契約

現地調査をもとに見積書が作成されます。値段に合意したうえで契約を結びます

3.着工、養生

取り付ける部屋に傷がつかないよう、養生材で保護します

4.電気工事

電気配線が無い場合、分岐をして配線工事を行います

5.下地工事

必要に応じて取り付ける位置の下地補強を行い、取り付けプレートを設置します

6.本体取り付け

本体を設置します

7.試運転

試運転を行い、正しく動くか確認します。異常がなければ引き渡しとなります

3.費用相場

1台あたり4~10万円

全館空調

全館空調とは、住居内の空調を一括管理するシステムのことです。室内機と室外機、ダクト、各部屋に配置された吹き出し口で構成され、ひとつの機械で換気・冷暖房・空気清浄を行います。24時間室内の環境を一定に保ってくれるため、どの世代も安心して暮らせる住まいづくりに必要不可欠な設備と言えます。
リフォームで設置する際は、家の気密性や断熱性もあわせて改善する必要があるので、まるごと相談できる業者に依頼しましょう。

1.特徴

  • 住宅内の温度環境を一定にできる
  • 各部屋に設置されるのは吹き出し口のみのため、インテリアのじゃまをしない
  • 設置費用がかかる
  • 部屋ごとの室温調整は苦手
  • 部屋が乾燥しやすい
  • 定期的なメンテナンスが欠かせない

2.リフォームのイメージ

  • 高断熱、高気密の家である
  • 温度変化で体調を崩しやすい家族がいる
  • 室内の温度環境による不快を解消したい
  • 留守中も室内温度を快適に保ちたい
  • 吹き抜けや広い部屋を作りたい

3.リフォームの手順

1.現地調査

家の気密性、断熱性、取り付けスペースの確認などを行います

2.見積、契約

現地調査をもとに見積書と計画書が作成されます。値段に合意したうえで契約を結びます

3.着工、養生

住まいに傷がつかないよう必要に応じて養生材で保護します

4.高気密化、高断熱化工事

現地の状況に合わせて、壁・床・天井・窓や玄関ドアなど開口部の断熱、高気密化を行います

5.ダクト配管

計画に基づき、ダクトを配管します

6.コントローラー、吹き出し口設置

各部屋に吹き出し口とコントローラーを設置します

7.室外機、室内機設置

室外機と室内機を設置します

8.仕上げ工事

ダクトの隠蔽、吹き出し口やコントローラー周りの仕上げ、室内機設置場所の仕上げを行います。

9.試運転

試運転を行います。異常がなければ引き渡しとなります。

4.費用相場

1軒あたり120~300万円(※35坪程度)

セントラルヒーティング(温水暖房システム)

屋外に設置された熱源機でつくられた温水を配管によって住宅内に行き渡らせ、室内を暖房するシステムです。輻射熱によって家全体がじんわりと温まります。
各部屋にはパネルヒーター、床暖房、ファンヒーターが設置され、室内の用途や使い方に適した暖房方法を選べます。
暖めるのに時間がかかりますが、ホコリを舞い上げず、空気を汚さない、健康に良い暖房システムと言えます。

1.特徴

  • 室内の空気を汚さない
  • 火傷の心配が少ない
  • 耐久性に優れている
  • 乾燥しにくい
  • ホコリを舞い上げない
  • 住居の温度を一定にできる
  • メンテナンスをさほど必要としない
  • 部屋全体を暖めるまで時間がかかる
  • 光熱費がかかる

2.リフォームのイメージ

  • 高断熱、高気密の家である
  • 温度変化で体調を崩しやすい家族がいる
  • ハウスダストなどアレルギーが心配な家族がいる
  • 室内の温度環境による不快を解消したい
  • 留守中も室内温度を快適に保ちたい
  • 吹き抜けや広い部屋を作りたい

3.リフォームの手順

1.現地調査

家の気密性、断熱性、取り付けスペースの確認などを行います

2.見積、契約

現地調査をもとに見積書と計画書が作成されます。値段に合意したうえで契約を結びます

3.着工、養生

住まいに傷がつかないよう必要に応じて養生材で保護します

4.高気密化、高断熱化工事

現地の状況に合わせて、壁・床・天井・窓や玄関ドアなど開口部の断熱、高気密化を行います

5.配管工事

各部屋へ温水を送るための配管工事を行います。床下を利用するケースが多くみられます

6.室内機設置

パネルヒーターや床暖房などを設置します

7.室外機設置

室外機を設置します

8.試運転

正しく動くか確認します。異常がなければ引き渡しとなります

4.費用相場

1軒あたり70~150万円 ※35坪程度

暖房リフォームを効果的に行うためのポイント

ここでは、暖房リフォームをより効果的にするために知っておきたいポイントを解説します。

断熱リフォームも行おう

新しい暖房設備を導入しても住まいの断熱性能が低いままでは十分な効果を得られません。これを機に断熱リフォームもぜひ一緒に行いたいところです。
断熱工事には、壁・床・天井・基礎に断熱材を補填する方法と、玄関扉を断熱仕様に交換する方法、窓に断熱内窓を設置する方法があります。開口部の断熱リフォームは、比較的手軽にできて効果もあるのでおすすめです。

間仕切りの設置

広い空間は暖房が効きにくく、暖めるのにもエネルギーと時間が必要になります。必要に応じて、空間の間仕切り工事も行いましょう。
間仕切り工事は、壁をつくる方法もありますが、コンパクトに畳める折れ戸を設置したり、扉がない部屋に扉を設置したり、階段部分にロールスクリーンを付けたりするだけでも暖房効果は上がります。

換気設備の確認

せっかく暖めた部屋も、換気によって冷やされてしまう場合があります。暖房リフォームを行う際は、窓の開閉を必要としない換気システムの同時導入がおすすめです。24時間換気システムを行っている住まいは、熱を逃がしにくい換気扇に交換するのもよいでしょう。

暖房リフォームの注意点

快適な住まいの実現のために行う暖房リフォームですが、施工にあたりしっかり考えておきたいことがいくつかあります。

本当に必要なリフォーム? 事前点検で確認しましょう

お金をかけて新しい暖房を設置しても、残念ながら生活が快適にならないケースがあります。たとえば、住まいの断熱性や気密性が悪く、暖房してもなかなか暖まらず光熱費ばかりがかかってしまうケースです。その一方、新たな暖房器具を導入しなくても、開口部に断熱を行うだけで、冷え込みが改善するケースもあります。
リフォームを行う前に点検やシミュレーションをしてもらい、予算と要望に合った暖房リフォームを行いましょう。

費用相場は相見積もりでチェック

同じリフォームでも、業者によって施工方法や費用が異なります。できれば、2~3社に相見積もりを依頼し、適した工事方法と費用相場を確認しましょう。相見積もりは、担当者の対応力など信頼できる業者を見極めるのにも役立ちます。

耐震性も確認しましょう

暖房リフォームでは、外壁に穴を開ける工事が行われることがあります。大きな穴を開けることはまれですが、壁で耐震性を保っている住まいの場合は、小さな穴開けでも耐震性が損なわれることがないか、業者に確認してもらいましょう。その際は、根拠となる計算書や仕様書なども提出してもらえると安心です。

最後に

暖房リフォームの種類と費用感を知ると、ご自宅に合った工事方法の選択に役立ちます。地域の特徴や現時点の住まいの断熱状況を把握しながら、予算にあった納得のいく暖房リフォームができるといいですね。