【建築士が解説】リフォームの打ち合わせ、いくらかかる? 何を決めればいい?

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リフォームは、住まいを相続したり、中古物件を購入したりした人にとって、初めての建築工事になることもあるでしょう。住宅に関する相談や修繕の依頼を行った経験がないことから、打ち合わせを行うことに不安を感じる人もいるのではないでしょうか。

リフォームに関する不安や心配ごとのアンケートでは、「価格」や「業者選び」など、契約前の段階での不安ごとが多く挙げられています。

一般社団法人リフォーム推進協議会「住宅リフォーム潜在需要者の意識と行動に関する調査 第11 回調査報告書 P.8 図7 リフォームの際の不安や心配事(本調査 Q21)住宅の種類別」をもとに作図

たしかに、リフォームの満足度は、打ち合わせが上手くできるかどうかが大きく影響します。しかし、リフォーム会社の担当者の対応や人柄はもちろん、自分たちが要望をうまく伝えられるかどうかにも不安を感じるものです。
この記事では、リフォーム工事の打ち合わせの方法や、ポイントをご紹介します。

リフォーム工事の流れ

(引用)戸建てリフォームの流れ 住友林業のリフォーム

リフォームでは、建物の構造や既設の状態などが工事の内容や費用に大きく影響するため、「現地調査」が重要なポイントです。そのため、リフォーム工事は、問い合わせをした会社の担当者から相談事項や要望のヒアリングを受けたのち、施工担当者の現地調査を受けることがスタートになります。
相見積もりを依頼した場合は、リフォーム会社がそれぞれ現地調査を行うため、その都度スケジュール調整が必要です。現地調査を終えると、その内容をもとにリフォーム会社がプランニングと見積もりを提示してくれます。

リフォームの打ち合わせは、主に見積もりとプランの調整のために行われます。プランニングでは、打ち合わせとプラン修正を繰り返し行うので、毎回1~2時間程度の時間の確保が必要です。リフォームプランが決まると、再度見積もりが提示されますので、これらにしっかり納得できた段階で、契約に進みましょう。なお、プランが出来上がった後も、細かい材料の決定や各種申請書類の確認、ローン等の申し込みなど、契約前の最終確認の打ち合わせがあります。

リフォーム依頼までに準備しておきたいこと

打ち合わせに必要なものは、リフォームの概要です。リフォームしたい箇所と現状、そして希望するリフォームの動機や希望をまとめておきましょう。細かい内容は、必ずしも事前に決めておく必要はありません。打ち合わせで相談しながら決めることも十分できます。

リフォーム内容と要望

リフォームを依頼するためには、当然ながらリフォームの内容を伝える必要があります。下記の表のように、リフォーム箇所ごとに現在の問題点と、どう改善したいかを考えておくとスムーズです。

筆者作成

たとえば、浴室はユニットバスへのリフォームが一般的ですから、要望として「ユニットバスへの取り換え」と書くだけでももちろん大丈夫です。その場合でも、現状の問題点をきちんと伝えるようにしましょう。
ちなみに、上の表では、「どのようにしたいか」という項目に対し、「あたたかく」と「安全」の2つの要望がありますが、このように記載しておけば、「あたたかく」という要望に対して浴室暖房機などの設備の提案を、「安全」という要望に対して段差の解消や手すりの設置等の提案をスムーズに行ってくれます。
現在ではインターネットやSNSで、さまざまなリフォーム事例を見ることができます。気に入った事例やデザインがあれば、写真などを持っていくと、より具体的な提案をしてもらうための参考になるでしょう。理想のイメージを伝えることが大切なので、他メーカーの実例でも大丈夫です。

家族構成と将来の構想

(引用)リフォーム事例  住友林業のリフォーム

小さなお子さんがいる場合は、見守りのできるプランニング、リビング学習のためのスペースの確保、子ども部屋の用意など、成長に合わせた計画が必要になるでしょう。一方、高齢者がいる場合や老後のためのリフォームでは、バリアフリーや家事の負担を軽減する設備の導入が理想的です。
現在の住まいに今後何年くらい居住したいのか、将来的に親子の同居はあるのかどうか、また売却や賃貸に出す予定の有無などもリフォーム計画の参考になります。また、今すぐリフォームする必要はないものの、今後の使用にあたって不安のある箇所、コストが気になる箇所は、まとめてリフォームしたほうがよいのかどうかも相談しておきましょう。

予算と費用の捻出方法

リフォームでは省エネ化や三世帯同居、バリアフリー改修など、さまざまなリフォームが補助金の対象となります。これらの各種申請やローン申請なども、リフォームの打ち合わせに含まれるため、大まかな予算や支払いについても事前に検討しておきましょう。
なお、リフォームの補助金のほとんどは、申請に期限や上限があります。補助金申請が定数に達すると受付が打ち切られるため、自治体のウェブサイトなどで早めに確認しておくことをおすすめします。

フルリフォーム等の場合は、仮住まいの用意を

フルリフォームなどの大規模リフォームでは、工期が数カ月かかることもあるため、仮住まいを考えておく必要があります。工期が不明で、仮住まいが必要かどうか微妙な場合は、打ち合わせの時に相談してみましょう。

図面で分かりにくいところは展示場やショールームへ

(引用)戸建てリフォームの流れ 02ご要望のお伺い 住友林業のリフォーム

大手リフォームメーカーでは3DパースやCGなど、立体的なイメージ図を提供してくれるところもありますが、小さな工務店ではそうした図面の作成は外部に依頼することになるため、提供をお願いした場合には、作成費が別途かかることもあるでしょう。もしも、3DやCGでのイメージ図で必ず確認したい場合は、相見積もりの時点で確認することをおすすめします。

また、システムキッチンやユニットバス、トイレなどの設備は、ショールームや展示場で実物の製品を見て触れて体験できます。特に使い勝手が重要になる水まわり設備は、実物を見て、体験してみることが一番のおすすめです。

ショールームで体験してみると「必要ないと思っていたけど、意外と便利」と感じるオプションもたくさんあるでしょう。また、反対に「便利かと思っていたけれど、実際は使わないかもしれない」と感じるオプションもあるかもしれません。ショールームでの確認に不安がある場合は、設計担当者に同行をお願いするとよいでしょう。

自分で決めていいのはどこまで?

(引用)戸建てリフォームの流れ 04お見積り・プランのご確認 住友林業のリフォーム

リフォームでは、元々の設備を撤去するため、壁や床の一部を取り払うことも多いものです。そのため、床材や壁紙は原則、貼り替えとなります。大規模な間取り変更では壁や床材の撤去だけでなく、建具の取り替えや内装変更などもともなうため、内装のプランニングも多くなるでしょう。特に要望がない場合は、一般的によく使われる内装材が予算に合わせて用いられることになります。

内装にもしっかりこだわりたい場合は、そのひとつひとつまで自分たちで決めることも、もちろん可能です。壁紙1枚からでも要望があるのなら、どんどん伝えていきましょう。設計担当者に伝えておけば、予算に合ったカタログやサンプルを提供してもらえます。また、変更によって予算が増える場合は、追加予算とするか、別の項目の予算を削るのかなども打ち合わせで相談しましょう。

まとめ

(引用)戸建てリフォームの流れ 06 詳細打ち合わせ 住友林業のリフォーム

リフォームの内容や要望を伝える場合は、個人の意見ではなく家族の意見として伝える必要があります。たとえば「家主や資金を出す人の要望ばかりで、リフォーム内容に納得していない家族もいる」という状態の場合、打ち合わせはスムーズに進まず、出来上がりの満足度にも大きな影響が出てしまいます。このような事態を防ぐためにも、まずは打ち合わせの前にご家庭で十分に相談しておくことが、もっとも重要なポイントです。

家族間で意見がどうしても一致しなかったり、うまく計画がまとまらなかったりした場合には、それぞれの要望をそのままリフォーム会社に相談してみてください。自分たちでは見つけられなかった糸口を、"プロ"の視点から、うまく手繰り寄せてくれるかもしれません。