良かれと思ったリフォームが逆効果に!? ベストなリフォームのタイミングとは

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バリアフリーは、筋力が低下したり、関節の動きに支障が出たりと、身体機能が衰えてくる高齢者にも安全に利用できるように整備されるものです。スロープ設置による段差の解消や手すりの設置、わずかな力で開閉できるドアなど、公共施設や病院などのバリアフリーをイメージすると分かりやすいでしょう。

バリアフリーのメリットは身体への負担なく利用できることですが、そうしたメリットを住まいに取り入れることで、「毎日楽をしてしまって、筋力の低下を進行させてしまうのでは?」という不安も起こりうるものです。
バリアフリーリフォームは安全対策が重要で、丈夫な部材を使用しなくてはいけないことや下地補強が必要になるなど、簡易的に行えるものではありません。すべてを整備するには費用も高額となってしまうため、リフォームが必要かどうかをしっかりと判別し、計画的に行う必要があります。

では、住まいのバリアフリー化は、いつ、どんなリフォームを行えばよいのでしょうか。この記事では、バリアフリーリフォームのタイミングと注意点についてご紹介します。

バリアフリー化によるデメリット

バリアフリーリフォームは安全のためのリフォームですが、いくつか考えられるデメリットがあります。

▼バリアフリーのデメリット例
  • 他の居室が狭くなる
  • 介護保険によるリフォーム補助金(上限20万円)は、原則1回しか申請できない
  • バリアフリー慣れすることにより、外出先で転倒などを引き起こすリスクが高くなる
  • 狭いスペースに設置した手すりが、他の家族にとってじゃまになることも
  • 移動の障害となる壁や建具を減らすことで広い空間がとれるが、空調効率が下がる
  • 使い方、開け方、間取りが変わることによって、利用方法がわからなくなる

バリアフリーでは車いすの利用を前提とした有効幅を元に設計するため、居室の一つひとつの面積を広く設計します。しかし、リフォームでは限られた面積で間取りを再構築するため、必然的に優先度の低い居室や収納などの床面積が削られてしまうことがあります。開放感のある空間では冷暖房の効率が下がってしまうというデメリットも発生するでしょう。
バリアフリーを必要とする人の身体能力や介護レベルはさまざまですが、なかには脳の障害や認知症など、記憶することが難しいケースもあるものです。そのため、ドアの開け方やシャワーの出し方、部屋の場所などがリフォームによって変わってしまうと、使い方を覚えるのにかなりの時間がかかってしまうという問題も考えられます。

早めに行いたいバリアフリーリフォーム

身体能力の低下や、病気、障害の進行などに備えて、早めに行っておきたいバリアフリーリフォームをご紹介します。

段差の解消

東京消防庁のデータによると、事故種別ごとの救急搬送では「ころぶ」が最も多く、その事故の半数以上は「住宅内」で発生しています。

消費者庁ニュースリリース「10(てん)月10(とう)日は「転倒予防の日」、高齢者の転倒事故に注意しましょう!(令和2年10月8日)

そのため住宅内の段差を解消してケガを未然に防ぎ、その後の寝たきりなどを防ぐリフォームが必要です。特に骨折など、長期間からだを動かせなくなってしまうケガは、起こってしまってからでは遅いため、早期に整備するべき項目でしょう。毎日の生活をしっかり自力で行うことが、身体能力の低下を防ぎ、健康寿命を延ばすことにつながるため、安全な動線を作ることが大切です。

広いスペースや玄関など大きな段差がある場所の手すりの設置

(引用)リフォーム事例  住友林業のリフォーム

玄関や縁側、ウッドデッキ、階段など、大きな段差がある箇所には、早期に手すりを設置しましょう。大きな段差がある場所は、小さな子どものためにも手すりが必要です。高齢者だけでなく、家族みんなの安全のためにも、なるべく早い段階で設置することが望ましいでしょう。

浴室リフォーム

(引用)リフォーム事例  住友林業のリフォーム

浴室は、住宅内の事故発生件数が高い場所でもあるため、現在の浴室に不安がある場合は早期にリフォームを計画しましょう。タイルや石張りの浴室は、冷えやすく滑りやすいなど、危険やデメリットが多いため、リフォームでは、ユニットバスへの取り換えが推奨されます。ユニットバスへの取替えによって、浴室の問題点の多くを解決できるだけでなく、掃除のしやすさや手入れのしやすさも向上します。
浴室内では、ヒートショックを防止するため、温度管理も重要です。寒暖差を防ぐため浴室暖房を設置し、脱衣場でも温度差が生じないよう暖房設備やヒーターを設置しましょう。

病気や障害に合わせて行いたいバリアフリー化

(引用)リフォーム事例  住友林業のリフォーム

バリアフリーリフォームでは、「リフォームをしたものの、実際ほとんど使っていない」「使わなかった」という失敗も多いものです。費用をかけて行うリフォームをムダにしないよう、タイミングを待って行うと良いバリアフリーリフォームをご紹介します。

トイレなど狭いスペースの手すり設置

狭いスペースでは、手すり自体がトイレ動作や介護の妨げとなるケースもあるため、介護のレベルや障害に合わせて設置するほうがよいでしょう。たとえば、右半身に麻痺がある場合では、右側に手すりのある必要はないものの、麻痺や障害が何もない状態では、手すりを右側にすべきか左側にすべきか判断することは難しいものです。狭い場所に必要のない手すりを設置することが、動作の際の障害となり、身体をぶつけてケガをすることも考えられます。
また、車いす利用や介助が必要な場合は、トイレ自体を広くするリフォームを行う可能性もあるため、間取り変更リフォームのタイミングに合わせて手すりを設置するのも良いでしょう。

床材の張り替え

畳やカーペットは、拭き掃除がしにくく衛生管理が難しいことや、車いすの操作がしにくいというデメリットが大きいため、バリアフリーでは基本的にはフローリングへの張り替えが推奨されます。しかし、車いすや介護を必要としていない場合は、急いで床を整備する必要はありません。後々、介護が必要になったり車いすを利用するようになったりすると、居室の間取り変更リフォームを検討する必要が出てきます。その時に床材も張り替えることになるため、間取り変更リフォームのタイミングに合わせて床材変更を行うと良いでしょう。

間取り変更

自宅介護、通所介護、訪問介護など、自宅での介護負担がどれくらいかによって、自宅にどれだけのレベルのバリアフリーが必要か変わってくるものです。
たとえば、自宅で介護できるリフォームを万全に準備していても、いざとなったら介護してくれる人がいないというケースも考えられます。
介護してくれる人がいないのであれば、福祉施設の利用を検討しなくてはならず、自宅に高レベルのバリアフリーは必要なかった、ということにもなりかねません。
間取り変更を含めた大々的なバリアフリーリフォームをする場合は、家族の将来なども含めてよく相談したうえで、計画しましょう。

バリアフリーリフォームのタイミングの注意点

消費者庁News Release「御注意ください!日常生活での高齢者の転倒・転落!」(平成 30 年9月 12 日)より転載

上記の表は転倒による年代別の救急搬送数です。注目したいのは「中等症以上の割合」です。65‐69歳以降、中等症以上の割合が30%を超えています。これは、身体能力には何の問題もなく、転倒の事故件数も少ないとしても、転倒によるダメージの影響は大きく受けやすくなっている年代ということです。骨自体の密度や、骨や内臓を守るための筋力も、加齢により低下していくことから、早期にバリアフリー整備をしておく必要があるということが分かるのではないでしょうか。
65歳以上では介護保険被保険者証が交付されるため、この年齢を基準にバリアフリーリフォームを検討してみてください。ただし、60歳を超えるとリフォームローンが組みにくくなります。この点に注意しながら、50~65歳までにある程度のリフォームを終えていることが理想です。

バリアフリーでは平屋暮らしが理想的であるため、2階に寝室などの生活スペースがある場合は、問題なく動けるうちに、自分たちで1階部分へ生活スペースを移動させておくとスムーズです。実際に1階部分だけで生活してみて、不便だと思う点をリフォーム候補に挙げておくことがおすすめです。

まとめ

国連の世界保健機関(WHO)による定義では、65歳以上を高齢者としています。しかし、60代では、健康面や身体能力に問題なく、元気な人が多いため、バリアフリーリフォームに着手することに難色を示す人も多いかもしれません。とはいえ、バリアフリーリフォームは高齢者のためだけでなく、将来的に介護する家族のためのリフォームでもあります。

住まいのバリアフリーは、「障害や病気に備えるバリアフリー」ではなく、「ケガや家庭内の事故を未然に防ぎ、障害や病気を予防するためのバリアフリー」と考えたほうが良いでしょう。転倒防止やヒートショック防止など、利用頻度の高い場所や重大な障害につながる危険は、早期にバリアフリー対策を行っておくと、家族の精神的な安心感にもつながります。