リフォームでは好きなだけ何をしても良いの? 法律のルールを建築士が解説

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昔の建築基準で建てられた家は、いざリフォームしようとすると現在の建築基準に合わせた工事が必要となります。レイアウトを少し変更するだけと思っていても、耐震性や耐火性を高めるリフォームは予想以上に費用がかかるものです。

今回は、古い家をリフォームする際の注意点をはじめ、リフォーム後に必要となる「確認申請」、知らないと損をするかもしれない今と昔の建築基準法の違いもあわせて解説します。

リフォームする前に要確認! 「既存不適格」になっていませんか?

戸建住宅に住んでいる方が最初に気になるのは、現在の建築基準に適用する家であるかどうか、ではないでしょうか。建物を建てる際は、その土地にどれくらいの規模・仕様の建物を建てられるのか、「用途地域(ようとちいき)」などを確認して決めていきます。
しかし、これらは日々移り変わる都市の建設計画の中で、変更になる場合があります。その場合、どのようなことが起こるのでしょうか。

既存不適格とは

土地には13種類の「用途地域」が定められており、それぞれの地域の秩序を守るために、建てられる建物の高さ、広さ、形を具体的に指定しています。
住宅がメインのエリアであれば、高い建物が建てられないようなルールを定められていますし、繁華街であれば、なるべくたくさんのテナントがお店を構えられるよう、敷地を最大限使って建物を建てられるように数値設定をしています。しかし、もともと用途地域が設定されていない土地にマイホームを建て、その後、その土地に用途地域が設定された場合、そのルールにマイホームが適合していなかったら、「既存不適格建築物」(以降、既存不適格)ということになります。

既存不適格でもリフォームはできる

マイホームを建てた後に法令が変わり、既存不適格になったとしても、そのまま住み続けることができるので安心してください。ちなみに、法律改正前からルールに適合していなかった建築物は「違反建築物」といわれ、新しい法令に適合させなければ存続できません。
既存不適格かどうかの判断は素人では難しいこともあるため、必ず建築士がいるリフォーム会社に確認してもらいましょう。
既存不適格となった住宅のリフォームには増改築の面積によって緩和措置がとられています。ただし、木造2階建の小規模な住宅などの場合は、建物基礎を除いて現在の法律基準に合わせるように、と決められています。

確認申請が必要なリフォームとは

建築物を建てる「建築主」は、一定範囲以上の規模、構造、用途の建築物を建てる際には、着工する前に国が定める検査機関に「確認申請書」とそれに付随する図面を提出します。検査機関から承認をもらい「確認済証」という書類を交付してもらって初めて工事をすすめることができます。この一連の流れを「確認申請」といいます。

確認申請が必要な建築物と工事内容

確認申請は「大規模な修繕・模様替え」といわれるリフォーム工事の際にも必要な場合がありますが、下記に当てはまる場合、確認申請は不要です。日本でよく見かける一般的な木造住宅の場合、リフォーム工事で確認申請は不要だということがわかります。

木造の場合:2階建て以下かつ延べ面積が500㎡以下
非木造の場合:平家建てかつ延べ面積が200㎡以下

ただし、鉄骨造2階建や木造3階建の住宅の場合には、上記に該当しないため「大規模な修繕・模様替え」を行う場合確認申請を提出しなければなりません。大規模な修繕・模様替えとは、主要構造部である「壁・柱・床・梁・屋根・階段」の1種類以上について行う過半の修繕と模様替えをいいます。つまり、壁紙を張り替える、窓サッシを交換するといったリフォームなら確認申請は不要ですが、キッチンの位置を移動するために階段の位置を変える、壁を抜くというようなリフォームの場合には必要、ということになります。

【ポイント1】準防火地域・防火地域での増築

駅前や商店街など人や交通量の多い地域や、緊急車両の通行が見込まれる主要な幹線道路が通っている地域は「防火地域」として指定されます。住宅が密集しているエリアも同様に「準防火地域」として指定されます。この地域内にある住宅は、面積に関わらず増築をする際には常に確認申請が必要なので気をつけましょう。

【ポイント2】10㎡以上の増築

先に述べた確認申請が不要な建築物でも、「増築」を行う場合は必ず確認申請が必要です。ただし、10㎡以内であれば確認申請は不要です。もし増築を検討している場合はこの条件を覚えておくと良いでしょう。
増築とは、もともとの建物に部屋を付け加える工事以外に、同じ敷地内に建てるガレージや物置の建築も含まれます。地面に固定されて動かせず、屋根がある工作物は、建築物という扱いになることを覚えておきましょう。

【ポイント3】屋根のふき替え

屋根は建物を構成する主要な構造部にあたるため、確認申請が必要な場合があります。ただ、屋根の葺き替えは既存の屋根スレートの上から新しいものを貼る方法や、瓦屋根の場合は下地をどこまで補強するのかなど、さまざまな方法があります。自治体によっては、どの方法でリフォームするかにより確認申請の有無を決めている場合もあるので、必ず事前に確認しましょう。屋根の重量で建物にかかる負荷も変わってくるため構造計算が必要なこともあります。

【ポイント4】外壁の貼り替え

屋根のふき替えと同じく、壁は建物の主要構造部にあたります。先述したとおり、一般的な木造住宅よりも規模の大きい住宅の場合、外壁を過半修繕する際には確認申請が必要です。
ちなみに外壁を塗り替えるリフォームは、確認申請を必要としません。もともと吹きつけの建物に、サイディングボードなどを貼り直すようなリフォームの場合のみ手続きが必要です。

【おまけ】石綿の使用有無

平成18年に改正されたアスベスト(石綿)規制により、リフォームをする際にも石綿の除去や飛散防止を行うことが義務付けられました。アスベストは体内に吸収することにより、肺がん等の健康被害を発生させる恐れがあるとしてその有害性が認められています。
これまでは住宅の屋根用スレート板や、配管の保温材、天井裏への吹きつけなど住宅を建てる際に多用されていました。そのため、築年数が長い住宅は、アスベストを使用していることがあります。
もしも、リフォームの際にアスベストの使用が認められた場合、アスベストを除去するかアスベストの飛散防止策を講じる必要があります。既存の建物とリフォームを施す面積の割合によってどちらの方法をとるのかが異なります。きちんと対処すれば、引き続き長く住み続けられるので、調査をしっかりしてもらうのが大切だといえるでしょう。

改正建築基準法を確認! 木造住宅に適用される法律とは

2019年に建築基準法が一部改正されました。木造の戸建住居に関する法改正もあるため、触れておきましょう。

建坪率の10%緩和

都市部は住宅街でも、建物が密集して建てられているエリアがあり、もし火災が起きた場合、被害が広がったり、避難が困難になったりすることが予想されます。そのため、先述した通り防火地域というエリアを定め、建物を建てるときのルールを定めています。
防火地域ではなるべく燃えにくい建物(耐火建築物)を建てて欲しいため、耐火建築物を建てる場合は建坪率を10%上乗せしても良いというルールがありましたが、改正によって、準防火地域にも拡張されました。
リフォームとなると少しハードルがあがりますが、準防火地域で今後の建て替えを考えている場合は燃えづらい構造・仕様にすることで今よりも広い家を建てられる可能性があります。

4階建の木造建築物が建てやすくなる

これまでは、木造で軒高9m、高さ12mを超える場合、耐火建築物として建てる必要がありました。これは約3階建の高さに値し、4階建の木造建築物にする場合には、木の部分がきちんと覆われるように石膏ボードを貼ったりする必要が生じていました。しかし、改正によって、軒高16m超え・4階以上の建物以外であれば、耐火建築物でなくても良いというルールに変更になりました。そのため、たとえば木の梁などをあらわしにしたデザインができるようになりました。木の温かみある雰囲気を生かした木造の建物が、より増えていくことが期待されています。

「延焼防止建築物・準延焼防止建築物」が追加

防火地域や準防火地域では、建物の規模ごとに耐火建築物・準耐火建築物を建てることが義務付けられてきましたが、改正によって建てられる建築物の種類が増え、「延焼防止建築物」「準延焼防止建築物」も建築が可能になりました。
具体的には、これまでの耐火建築物は外壁だけでなく、内装の柱や天井も燃えにくい構造にする必要がありましたが、延焼防止建築物の場合、外壁を燃えにくくすることで、内装制限が緩和されています。これは近隣で火災が起きた場合の、もらい火に耐えうる基準が制定されたということでしょう。内装の自由度も上がったので、リフォーム時の外壁補修によってこの基準をクリアすれば、室内の意匠にもいままで以上にこだわることができるかもしれません。

法律を確認し、安心のリフォームを行いましょう

法律は私たちが快適で安全に生活を送れるよう整備されています。
愛着のあるマイホームをリフォームすることは、楽しみが多くあると同時に、思いがけないトラブルにも見舞われるかもしれません。まずは、いまの住まいの問題点を把握し、現在のルールに合っているかどうか確認しましょう。分からない点はプロに頼りながら、長く住み続けられる住宅リフォームを、ぜひ実現してください。