大音量で映画や音楽を楽しみたい! 防音リフォームに取り組む注意点とは
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防音対策で大切なのは、「どんな音を、どのように防音したいのか」を計画することです。「外部からの騒音を防ぎたい」「自宅で楽器やオーディオシステムを使用したい」など、防音室にもさまざまな用途や目的があるはずです。また、住宅密集地などでは、近隣住宅の生活騒音が気になる人もいることでしょう。
防音対策には、音の大きさを表す(デシベル・dB)の数値が重要です。環境庁の資料によると、たとえば、地下鉄の車内音は70~80dB、ファミレスの店内では60~70dB、静かな印象のある図書館でも約40dBの音が発生しているとされています。
なお、一般住宅における騒音のレベルは低いものでありますが、楽器やスピーカーを使用する場合には、かなりの大きな音が発生すると考えられます。
防音室というと費用が高額というイメージもあり、自宅に設置するにはハードルが高いと思う方もいるのではないでしょうか。
今回の記事では、自宅を防音リフォームするにあたり、知っておきたい防音の仕組みをはじめ、具体的なリフォームの方法について紹介します。
防音室の仕組みと基本
防音工事の基本は、床や壁などの内部に防音材を施工するものです。壁や床の厚みを増すことでも効果を得られますが、音の反響や広がりを楽しみたい場合は、防音材をうまく使い分けて施工する必要があります。
伝わりやすい音、伝わりにくい音がある
防音リフォームをするには、室内で使用する楽器やスピーカー、もしくは室外の車の音など、「防音したいものが何であるか」が重要です。これは音の大きさ(デシベル・dB)だけでなく、音の高さや周波数(ヘルツ・Hz)が関係します。
たとえば、カラオケやコンサート会場などの防音された場所でも重低音だけは外に漏れ聞こえている状態に遭遇したことはありませんか? これは、同じ音量でも低い音のほうが伝わりやすい(防音されにくい)からです。
楽器では、音域が広いグランドピアノや重低音が多いドラムなどが、高レベルの防音を必要とします。
このほか、生活音の大きさのレベルとして、以下を目安にすると想像がしやすいでしょう。
▼日常生活音のいろいろ
音の大きさ(デシベル) |
||
---|---|---|
家庭用設備 |
エアコン |
約41~59 |
温風ヒーター |
約44~56 |
|
換気扇 |
約42~58 |
|
風呂または給排水音 |
約57~75 |
|
家庭用機器 |
洗濯機 |
約64~72 |
掃除機 |
約60~76 |
|
目覚まし時計 |
約64~75 |
|
電話のベル音 |
約64~70 |
|
音響機器 |
ピアノ |
約80~90 |
エレクトーン |
約77~86 |
|
ステレオ |
約70~86 |
|
テレビ |
約57~72 |
|
その他 |
犬の鳴き声 |
約90~100 |
子どものかけ足 |
約50~66 |
|
布団を叩く音 |
約65~70 |
|
車のアイドリング |
約63~75 |
|
人の話し声(日常) |
約50~61 |
|
人の話し声(大声) |
約88~99 |
「遮音」と「吸音」のちがい
「音を漏らさない」と一口に言っても、その方法はさまざまです。また、音にも種類があります。ここでは、言葉とともにその意味を簡単に押さえておきましょう。
【遮音】 伝わる音を跳ね返すこと。よく反響する
【吸音】 音を吸収すること。反響しにくい
【防音】 「遮音」「吸音」などの総称。防音リフォームには、遮音材や吸音材を使用する
【空気音】 空気の振動によって伝わる音。楽器や、人の話し声などが該当する
【固体音】 床や壁を通して伝わる音。足音や電車の音や給排水の音などが該当する
防音室のリフォーム方法と注意点
この章では、床や天井といった内装ごとに、どのような防音リフォームが検討できるのかを紹介します。
床
床は楽器やスピーカーなどが、じかに接する面であるため、振動を防ぐことが大切です。仕上げ材には低反発ややわらかい素材のものを使用し、振動を吸収させます。これは、上階の足音や生活音などの騒音対策にも効果的です。
床の防音リフォームの方法
- 床の下地材の下に吸音材となる高密度グラスウールや高密度ウレタンなどを入れる
- フローリングやカーペットなどの仕上げ材の下に、ゴムやクッション材でできた遮音マットを敷く
- 床材を防音効果のあるコルクマットやクッションフロアなどに変える
- OAフロアや置き床を敷き、二重床にする。
壁
壁は面積が大きい部位なので、音の反響に大きな影響があります。そのため、遮音性を高めてしまうとひどい反響音が発生してしまいますし、吸音性を高めると無反響となり、音が漏れてしまいます。遮音材と吸音材の両方をバランスよく使用し、防音することが大切です。
壁の防音リフォームの方法
- 内部に吸音材を入れ、その上に遮音シートを張り、さらに仕上げ材を張る
- 防音機能のある壁材に張り替える
- 断熱材を防音効果のあるものにする
天井
木造住宅の場合は、屋根と天井のあいだに空間のあることが多く、もともと雨音などの騒音を室内に伝えにくい造りになっています。その一方、楽器などを使用する場合は、天井内の空間で反響し、音を増幅させてしまうことも。これを防ぐためには天井裏になるべく音を通さないようにすることが必要で、基本的には壁と同じような方法で防音します。
天井などに使われる吸音板は、小さな丸や波形の穴が開いた天井材で、会議室や音楽室などでもよく見られるものです。
天井の防音リフォームの方法
- 仕上げ材を吸音板に張り替える
- 下地材に遮音シートを張る
- 断熱材を防音効果のあるものにする
窓
壁や床などよりも部材自体の厚みが少ないため、音をよく伝えやすい箇所とも言えます。まずは、複層ガラスや二重窓などにし、窓自体の構造を複雑化することがおすすめです。ただし、複層ガラスにするだけでは、窓自体の厚さや構造は壁ほどの厚みがないため、防音度はさほど期待できないかもしれません。複層ガラスに取り替えたうえで、内窓を設置するなど、複数の対策を取ることで防音レベルを上げることがおすすめです。
簡単に施工する、ガラスに貼る遮音シートなどもありますが、単体では防音性は低いため、他の対策と併用することをおすすめします。
窓の防音リフォームの方法
- 断熱ガラスなどの複層ガラスに取り替える
- 内窓を設置する
換気口
換気口は、防音性を高めすぎてしまうと、空気の循環効率が落ちてしまいます。空気が悪いと、部屋にいる人間にとってはもちろん、機器や楽器にも悪影響の出るおそれがあり、防音性ばかりを重視できません。
大きな音が発生しないときには窓を開ける、サーキュレーターを使用するなどし、空気の循環を促すことが必要です。
換気口の防音リフォームの方法
- 部屋側の換気口にウレタンやグラスウールなど、専用の消音材を入れる
- 屋外の排気口に防音キャップや防音カバーを取り付ける
その他の防音方法としては、手軽なのは「防音カーテン」にすることです。体育館などにある、厚手のカーテンを想像するとよいでしょう。
防音カーテンは基本的に複層的な構造をしています。表面を金属繊維などでコーティングすることで遮音性を持ち、内側には何層もの布素材を重ねることで吸音効果を持たせてあります。
造りも窓になるべく密着するようヒダのないものが多く、断熱効果も高い構造です。ただし、大きな音を防音するほどの性能はないため、他の防音対策との併用が良いでしょう。
このほか、「防音室」「防音ボックス」といった防音性能のあるユニットを設置することも考えられます。防音スペースは小さくてもよい、という場合には、部屋のなかに防音室を丸ごと設置する方法もおすすめです。こうした防音室は、さまざまなサイズが販売されており、部屋の広さや用途によっては床や壁、天井、窓それぞれに対策するよりも、費用が安く済む場合もあるでしょう。解体して再度組み立てれば、別の部屋を防音にすることも可能です。
「断熱性が高い」=「防音性も高い」は、まちがい
吸音材にグラスウールなどの断熱材と同じものを使用する点や、二重窓や複層ガラス窓の設置する点など、防音リフォームには断熱リフォームとの共通点が多々あります。実際、断熱材のグラスウールは防音材としても使用されていますし、防音用複層ガラスや防音カーテンは、断熱効果にも優れています。
こうした共通点から、断熱性が高ければ防音性も高くなる、と思うかもしれません。
確かに断熱材には防音効果がある物がいくつもあります。しかし、必ずしも「防音性=断熱性」が高いわけではありません。たとえば、グラスウールなどの繊維質の断熱材は、吸音性は持っていますが遮音性はなく、吸音しきれなかった音は、室外へ漏れてしまいます。
また、省エネ・エコ住宅として近年注目されている、高気密・高断熱住宅は、防音性は高いものの、室内で発生した音が逃げにくいため、より大きく響いてしまうこともあるようです。防音性を持たない発泡プラスチック系の断熱材も用いている場合もあり、このように断熱材の種類によっては、遮音と吸音がうまく機能せず、音の反響に悩まされることもあるため注意が必要です。
まとめ
たとえば、貼るだけ敷くだけの防音材を購入し、自分たちでDIYしてみても、思ったような効果を感じられないことがあるかもしれません。音は、反射を繰り返して反響し、振動として伝わるもので、実はとても複雑な動きをしています。
防音は、音の複雑な動きの遮断と吸収を重ね、伝わる音のパワーを減少させています。複数の異なる性能を持つ防音材の組み合わせによって、室内の反響レベルなども操作していくのです。しかし、住宅の断熱性や気密性が影響し、どういった防音対策を行えばよいのか判断が難しい場合もあります。木造住宅は通気性や除湿性に優れた造りであることから、元々の防音性能は低いと言えるでしょう。
防音リフォームは工事範囲が部屋全体に及ぶため、費用も安くはありません。仮にDIYする場合でも、材料費が思ったよりかかってしまうこともあります。
「せっかくリフォームしたのに、ぜんぜん防音できていない」とならないためにも、防音の材料や防音効果などをしっかりと把握し、確認することが大切です。
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