木造戸建て築10年目からの住まいのメンテナンス~今の住宅に長く住み続けるために~

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念願叶って購入した戸建て住宅、できれば長く快適に住み続けたいですよね。木造住宅の経年劣化は避けることは難しいですが、適した時期に適切なメンテナンスを行うことで住宅を長持ちさせることができます。

ここで言う住まいのメンテナンスとは、点検から修理、交換、改修など、住まいを維持するための管理方法のことを指します。

"一級建築士に聞いた!"シリーズでは、住友林業ホームテック株式会社の一級建築士さんたちの経験に基づいた、住まいに関する様々なことを紹介していきます。今回は、木造住宅のメンテナンスの重要性をお聞きしてきました。

木造住宅の劣化はいつ頃から?

木造住宅の劣化はいつ頃からはじまるのでしょうか。最初は小さな変化でも、それを見逃すと、劣化が進み早期に大きな修繕が必要になってしまうことがあるので、日頃から住宅の変化に目を向けておくことが非常に重要になります。

屋根の色あせ

外壁のカビ

外壁に生じる変化

住宅外部の劣化は自然環境によるものが多く、劣化の原因は紫外線や湿気などが挙げられます。例えば、紫外線の影響で外壁に色あせや汚れなどが目立ってくるケースがあります。また、劣化の状態がわかりやすいのが外壁のコーキングです。コーキングとは外壁材であるサイディングの継ぎ目に注入されるゴム状の物質で、住宅を守る重要な役割を果たしています。コーキング材は築10年目から劣化し始めることが多いので注意が必要です。

設備の劣化

住宅の内部では、食洗機やエアコンなどの設備、水栓の劣化が生じはじめます。特に給湯器は築10年ほどから劣化するケースが多いと言います。お湯が出にくいなどの症状が出始めたら早めに修理に出すなどの対策を行いましょう。他にも築10年の木造住宅ではドアの建付けが悪くなるなどの症状も出やすくなります。

事例から見るメンテナンスの重要性

実際のお客様の事例を元に木造住宅の具体的な劣化について、一級建築士さんに詳しくお話を聞いてみました。今回は外壁、床下、屋根、内装、設備という5つの部位で実例を紹介します。

自然環境の被害を受けやすい外壁と屋根

―― まずは外壁の劣化についてお聞きしたいと思います。

一級建築士さん:築25年を超えた木造住宅で、外壁のひびから雨水が中に浸水してしまったことがありました。外壁材の1つであるモルタルを使用した住宅だったのですが、下地の金網にまで雨水が達してしまい、錆びの影響で大きくはがれてしまっていました。ここまで劣化してしまうと、修繕には周りのモルタルまで全てはがして新たに塗り直すという大掛かりな工事が必要になります。外壁は熱や紫外線の影響で表面の塗膜にひびが入ることがあるんです。小さなひびを見つけたら早めに修理した方がいいと思います。

―― 環境の影響を受けやすいのは屋根も一緒でしょうか?

一級建築士さん:屋根も雨や紫外線などの影響を受けやすい部分なので注意する必要がありますね。スレート瓦を使っている木造住宅で、屋根が色あせてしまっているケースがありました。色あせの場合、塗装の塗り替えなどの対処法がありますが、メンテナンスの適時期を逃してしまうと表面の劣化が進み再塗装できません。そうした状態になってしまうと、屋根を全て替える「葺き替え」という工事になり、大きな費用が発生してしまいます。

―― 他にはどんな事例がありますか?

一級建築士さん:日本瓦の面戸漆喰(めんどしっくい)が劣化して脱落した事例もありました。面戸漆喰とは、平瓦と棟の間にできる空間を埋める漆喰のことです。面戸漆喰がなくなってしまうと瓦を留めている土が丸見えとなり、美観を損ねてしまいます。放置しておくと瓦と瓦の隙間がどんどん大きくなり、雨漏りへと繋がってしまうこともあるので注意が必要です。

屋内と床下は湿気が大敵

―― 次に床下の事例を教えてください。

一級建築士さん:築15年を超えた住宅で防蟻処理を怠った結果、浴室の入口部分(洗面所側)の床が抜けてしまったというケースがありました。シロアリは湿度が高いところを好みますので、浴室はリスクが高い場所の1つです。気づかないうちにシロアリが床下で繁殖し、木材を食い荒らしてしまうということがあります。この事例では、結局、浴室と洗面所の全面改修を行う事態になってしまいました。シロアリ被害を未然に防ぐためにも、防蟻処理は新築時から10年後に実施、そのあとは5年ごとに行うことが必要です。

―― 他にどんな被害がありますか?

一級建築士さん:水漏れが原因で床下の土台が腐朽してしまったケースがありました。特に床や壁にタイルを貼った浴室の場合、タイルとタイルの間の目地の劣化から漏水が起きます。床下の変化はなかなか気づきにくいですが、定期的な床下点検でこういった事態を防ぐことができます。

―― 内装の劣化事例はありますか?

一級建築士さん:内装での事例だと、窓近くの天井から壁近くまで水のシミができてしまった住宅がありました。調べてみたところ、原因は雨漏りでした。放置すると木部にまで水が染みこみ、カビの原因やシロアリの発生に繋がってしまいます。

―― 設備関係はどうでしょうか?

一級建築士さん:例えば、キッチン本体は30年持つと言われていますが、ガスコンロや換気扇など部位ごとに不具合は出てきます。ガスコンロは10年、換気扇は20年ほどで買い替えるお客様が多いです。急に使えなくなって困ってしまうという事態を避けるためにも、不具合を感じたら早めに買い替えを検討していただくと良いかもしれません。

木造住宅のメンテナンス時期の目安は?

大規模な修繕工事まで発展させないためにも、リフォーム会社や専門業者による定期的なメンテナンスは重要です。外壁、床下、屋根、内装、設備という5つの部位のメンテナンス時期や修理時期をまとめてみました。あくまで目安となりますので、住宅の劣化に気づいたら適時期でなくてもリフォーム会社や専門業者に問い合わせるなどの対策を行いましょう。

場所

点検すべき時期

修理すべき時期

交換すべき時期

備考

外壁

築10年ごと

築10年ごと

築30年

外壁の材質によって適時期は異なる可能性があります。

屋根

築10年ごと

築10年ごと

築20〜50年

屋根の材質によって適時期は異なる可能性があります。

床下

築10年・後5年ごと

築10年・後5年ごと

築30年

内装

築10年ごと

築10年ごと

築20年

設備

築10年ごと

必要に応じて

築20〜30年

キッチンやトイレなど部位によって適時期は異なる可能性があります。

リフォーム会社の点検費用

一般的にリフォーム会社の点検費用は無料になっています。屋根から床下まで全ての点検を行っても1時間から2時間程度で終了しますので、気になるところがあれば一度点検してもらいましょう。

自分でもできる簡単な点検方法

日常的な掃除や点検でも、住宅の劣化を最小限に留めることができます。ここでは、自宅で簡単にできる点検方法をご紹介します。

外部の変化をチェック

住宅の小さな変化に気づくためにも日頃から外壁や屋根の状態をチェックする習慣を作ることが重要です。外壁であれば汚れやひびの有無、屋根は色の変化や破損している箇所がないか点検してみましょう。ご自分でできるメンテナンスとして、雨戸やシャッターは錆びが付着することが多いので、年に一度は乾拭きすると錆びが軽減されて長持ちにつながるのでおすすめです。

屋内は念入りな換気と掃除が鍵

前述しましたが、屋内では湿気が大敵です。放置しておくと湿気が溜まり、床下の木部の腐朽につながります。特に、ホコリは湿気が加わると水分を吸って固まり、こびりつくことで、カビが発生や湿気の吸着を引き起こす可能性があります。湿気対策には十分な換気と、水まわりや玄関などの湿気の溜まりやすい部分の掃除をこまめにするようにしましょう。

異変に気づいたら早めにリフォーム会社や専門業者へ

住宅の劣化は放置し続けてしまうと、家の寿命を縮めてしまうということがわかっていただけたかと思います。劣化に対し適切な処置をしないと、さらに症状を悪化してしまう場合もありますので、異変に気づいたらリフォーム会社や専門業者へ相談することをおすすめします。