マンションにこそ土間リフォームを! メリットと活用方法を解説

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土間とは、土足で入れるスペースを指しており、玄関の延長として使われることが多いです。昔は玄関から家の奥のかまどのある台所、そして裏口まで土間が続く間取りも多く見られ、通気性の良さ、耐熱性、動線の便利さなどが重宝されていました。しかし、戦後の住宅ではガスコンロが一般化し、住宅や間取りもコンパクトになったため、広い土間を設置する住宅は少なくなっています。
ところがいま、感染症対策や趣味として人気の高いアウトドアなどに土間が活用できることが再発見され、広い土間のあるマンションのニーズが高まりつつあるのです。

現在の生活と、土間のメリットはどのようにマッチするのでしょうか。また、マンションの限られた床面積で、土間リフォームを行うにはどのような方法があるのでしょうか。

土間のメリットデメリット

(画像引用)フリー画像 写真AC

土間は玄関の延長であり、屋外と屋内の中間に近いスペースでもあるため、居室とは性能が大きく異なります。

土間のメリット

最大のメリットは汚れを気にせず使用できるというところです。
自転車やベビーカー、子どもが外で遊んだおもちゃ、部活の道具類、キャンプ用品やバーベキュー道具の置き場所として活用できれば、屋外で使う道具や大型のものを気にせず置いておけます。さらにはアウトドアグッズを広げたり、片付けたりといったときにも便利であり、DIYスペースとしても活用できるなど、用途の幅が広いことも魅力です。

土間のデメリット

土間の最大のデメリットは冬場の寒さです。玄関は外に近いうえ、タイルや石は冷えやすい素材であるため、冷気が溜まりやすいのです。マンションは、玄関まわりの通気性が悪いため湿気がこもりやすく、夏場は熱気に悩まされる場所でもあります。夏も冬も厳しい環境にあたるため、断熱対策が必要です。
また、下足で歩けるスペースが多いと泥汚れの範囲も広くなり、玄関掃除の大変さも増してしまうでしょう。さらには、土間と部屋を行き来するために履物を換える必要が生じ、往来が面倒という面もあります。

土間の間取り例と注意点

マンションでは玄関ドアや窓など、屋外と接する箇所はリフォームできません。そのため、もともとの玄関ドアに合わせて土間リフォームをすることが前提となり、土間の配置には制限がかかります。こうしたなかで、土間のリフォームはどのように行えばよいのでしょうか。

玄関に隣接する居室を土間にリフォーム

(画像)筆者作成

費用が安く工期も短いのは、玄関まわりに限ったリフォームです。単身者や夫婦二人だけの世帯では、使っていない居室や物置代わりの部屋もあるのではないでしょうか。こうしたスペースが玄関に隣接してあるのなら、まとめて土間にリフォームすることで、広い玄関と土間ができるだけなく、収納を増やすこともできます。

キッチンや洗面所に直結する土間

(画像)筆者作成

キッチンや洗面所と直接つながる土間は、動線の面でも効果的です。たとえば廊下は、玄関から洗面所やキッチンに直結していることも多いため、土足で歩いて行けるよう、そのまま土間に変えるのも良いでしょう。
廊下のような細長い動線は、石やタイルにこだわると見た目もオシャレです。玄関から部屋の中の様子も見えにくいため、プライバシー性も高くなります。
距離が長い土間を作るためには、大規模な間取り変更や内装変更が必要になるため、フルリフォームを検討している場合に取り入れてみるとよいでしょう。

窓があるスペースを土間にリフォーム

(画像)筆者作成

玄関の近くに窓がある場合、窓も含めたスペースを土間にリフォームすると通気や採光を確保するのに効果的です。マンションでは外壁のリフォームができないため、窓の撤去や増設はできませんが、もともとある窓を活かすことで、自然光の入る玄関リフォームが実現できます。
一般的にマンションの玄関まわりは通気性が悪く、湿気やカビなどに悩まされることも多いスペースです。この点、開閉できる窓がある場合、通気と採光の両方の問題を解決できるでしょう。土間から換気ができることで、家の広い範囲に風を通せるのなら、室内全体の湿気やカビ問題の解消にもつながります。
自然光のあたる通気性のよい土間では植物もよく育ち、グリーンが映えるので、観葉植物を置いたり、坪庭を作ったりして楽しむのもよいですね。

土間をゾーニングに活用する

(引用)リフォーム事例  住友林業のリフォーム

ゾーニングとは、病院などの医療機関において、感染拡大防止のために清潔区域と汚染区域を区別するためのものです。
土間では、室内へ上がる際に、靴を脱いで室内用スリッパに履き替えるという行動により、壁やドアがなくても空間が自動的に分断されるのが特徴です。この特徴を利用して、自宅でもゾーニングが可能となります。ある程度の広さのある土間を汚染区域とすることで、汚れた衣類の片付けや消毒、マスクの処理や手洗いなど、さまざまな感染症対策・花粉対策ができるでしょう。
具体的には以下のような間取りや設備がゾーニングに役立ちます。

手洗い場を設置、もしくは洗面所に直結させる

感染症対策で最も大切な対策のひとつが手洗いです。しかし、汚れたままの手で家に上がり、そのまま洗面所のドアなどに手を触れてしまうと、そこに菌が付着してしまうため、洗った後の手や、他の家族の手に菌が広まる原因になります。
こうした問題も、土間に手洗い場を設けたり洗面所と直結させたりすることによって、手を洗うまでの間に触れる場所や開けなくてはならないドアを最小限にでき、清潔区域に汚染が広がることを防止できます。「家に帰ったらすぐに手を洗う」という習慣づけにも役立ってくれるでしょう。

コート掛け、カバン置き場など、外で使う衣類の保管場所をつくる

コート、カバンはウイルスや花粉などが付着しやすく汚れやすいものですが、毎日洗濯できるものでもありません。そのため、室内に持ち込みたくない人も多いのではないでしょうか。
こうした場合には、土間にコートやカバンを置く場所を造作することで、清潔区域に汚れものを持ち込まないようにするとよいでしょう。コートやカバンをアルコール消毒したい場合も、帰宅後すぐ、玄関スペースのみで完結できます。

湿気対策

マンションの場合、玄関まわりはどうしても湿気がこもりやすくなってしまいます。そのため玄関の延長である土間にも、カビなどの予防のため湿気対策が必要です。マンションは、窓や換気扇の後付けが難しいため、除湿器やファンの設置で対応するとよいでしょう。

コンセントの設置

除湿器やサーキュレーターなどの家電の使用にはコンセントが必要です。DIYなど、土間をさまざまな用途に使いたい場合、2箇所ほど設置しておくと便利です。

まとめ

(引用)リフォーム事例  住友林業のリフォーム

玄関や土間は家と外の出入りに使うだけのスペースであり、「広くしても使いきれないし、ムダ」というイメージを持つ人もいるかもしれません。しかし、感染症対策や花粉対策など、居室内の安全性や快適性を向上させるうえで、土間を使ったゾーニングは非常に有効です。普段あまり使わない場所だからこそ、使用頻度の少ないものや週末だけ使うものの収納場所としても活用したいものです。

近年では石張りや坪庭風など土間のデザインもさまざまで、キッチンやダイニングにも土間を取り入れる住宅が見られます。石は耐熱性にも優れているため、石張りの土間を暖炉置き場として活用することも可能です。さらにベランダやテラスと土間をつなげれば、バーベキューなどのアウトドアスペースとしても使用できます。

土間の最大のデメリットである寒さは、断熱性能の向上した現在の住宅においては、徐々に改善されつつあります。

住宅の性能が向上した今こそ、より使いやすく、生活の質をさらに上げるために、土間リフォームを検討してみるのもよいのではないでしょうか。