事故物件を調べる方法は? 賃貸・売買別の告知義務とあわせて詳しく解説

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一昔前と比べて単身で暮らす世帯が増えてきた現代、誰にも気がつかれずに亡くなってしまう人も増えてきているようです。そして、そのような物件は「人が亡くなった不動産」などと一括りにされ「事故物件」と呼ばれることがあります。

誰しも「事故物件はいやだな」となんとなく思ってしまうのは、ある程度仕方のないことでしょう。しかし、内容を把握せずに無条件に忌避していると、せっかくの良い物件との出会いを逃してしまう可能性があります。

本記事では、安心して不動産取引するために、事故物件の調べ方と、その定義、最近改訂された告知義務の新ガイドラインなどについて解説していきます。

事故物件とは

事故物件には明確な定義はなく、殺人事件、事故死、自殺、孤独死などが起きた物件のことを総じて「事故物件」と呼んでいます。基本的に、病死や自然死は含めないとしていることが多いようです。

これらの事故物件には告知義務が定められています。事故物件に対して「怖い」「気味が悪い」のように、住みづらさを感じることを心理的瑕疵(かし)といいますが、このような物件は事前に説明するルールが賃貸、売買問わず定められています。不動産会社側が違反した場合、借主や買主は、損害賠償請求や契約解除を起こすことができます。

事故物件の調べ方

事故物件はどのように見分ければよいのでしょうか。基本的には不動産会社が教えてくれますが、その部屋で人が亡くなってからいつまでを告知義務期間とするかは、それぞれの不動産会社で異なっています。そのため、自分たちでも正しい情報を得られるように、以下のことに気をつけて調べてみるのも良いでしょう。

物件価格が相場どおりか確認する

事故物件は、そのエリアの相場価格より1〜5割程度安く、賃貸や売りに出されていることが多いようです。一般的なエリア相場は「駅名や地域名、相場」でインターネット検索をすると大体把握できます。
物件の価格は、エリア・面積・築年数を基本として決められます。設備やマンション自体のホスピタリティ、地域性なども加味して物件価格が高くなることもあれば、近隣に風俗店や暴力団関連施設、工場があったり、近所で殺人事件が起きたりなどの要因で価格が下がることもあります。
物件価格にマイナスの影響を与える事象を「瑕疵(かし)」といい、主に下記の4つに分類されます。

物理的瑕疵

建物の耐震強度やシロアリ問題、雨漏りなど

環境的瑕疵

風俗店や暴力団関連施設など、建物自体に問題はないものの、取引を進めるうえで住まいの置かれた環境に問題があること

法律的瑕疵

法令により建物や土地にさまざまな制限が課せられており、物件取得後の活動に影響を及ぼす可能性がある場合に記載される

心理的瑕疵

本記事で説明している事故物件のような場合、住まい自体に問題はないものの、住むことに心理的抵抗が感じられることをいう

このように、物件価格が相場より低くても、一概に事故物件だとはいえない場合もあるので、周辺状況もよく確認するようにしましょう。

「告知事項あり」「心理的瑕疵あり」の表示有無を確認する

募集時のネット広告や、内見時にもらう紙の資料特記事項に「告知事項あり」「心理的瑕疵」と書かれているかどうか確認しましょう。事故物件というキーワードは広告に記載されることはありません。事故物件かどうかを判断するうえで、この2つの言葉の記載があった場合には、不動産会社に確認しましょう。
募集時に記載がなく、契約時の契約書類に記載があったということも、まれにあります。そのようなときは慌てずに不動産会社に経緯を確認しましょう。契約をしないという選択もできますし、契約をすでに結んでいる場合でも契約解除事由に該当します。

不自然なリフォーム箇所がないか確認する

孤独死や殺人事件などの現場になったお部屋は、痕跡を残さないようにきれいにリフォームされることが多いようです。ただ、予算が少なかったり、あまり汚れがひどくなかったりする場合には、一部分だけ床や畳が交換されていることもあります。
筆者も不動産管理会社に勤務していた際、ロフト付きの物件で住民の方が自死されるということがありました。発見が早く、リフォーム箇所はほとんどなかったのですが、ロフトの手すり部分が曲がってしまいました。何も知らなければ使用に影響はないのですが、やはり事件を知っているとどうしても気になってしまい、最終的にオーナー様と協議し交換するということがありました。
何か気になる点があれば、遠慮せずに聞いておくことをおすすめします。

事故物件まとめサイトで調べる

全国の事故物件を確認できる総合検索サイトで調べるという方法もあります。地図上で確認できるものもあれば、住所一覧のような形式で確認することも可能です。ただし、自然死や不慮の事故などが含まれている場合があるので、正確な情報が知りたければ不動産会社に尋ねたり、過去の事件事故などの報道資料をあたったりするのもひとつの方法でしょう。

近所の人に聞く

気になる物件を内見したら、ついでに近所の方にそのエリアのことを聞いてみるのもよいでしょう。個人的には、地元のタクシー運転手や美容院の方は、そのエリアのおいしいご飯屋さんから、新築ビルのオーナーまで知っていることが多く、お話上手な方が多い印象です。
見ず知らずの土地でいきなり知らない人に声をかけるのは緊張してしまうという方は、マンションの管理人さんに聞くのも良いでしょう。他の住人の方の雰囲気も知ることができるかもしれません。

物件名の変更履歴がないか調べる

マンションの場合、事件が起きるとマンション名も報じられることがあります。そのため、外観の色を変え、マンション名を変えることもあるようです。ただ、オーナーチェンジで物件名が変わることもあるため、名称変更=事故物件というわけではありません。変更履歴があった場合、念のために不動産会社に確認してもよいでしょう。

告知義務のルールとは

事故物件の告知義務は、これまで明確なルールが定められておらず、契約当事者の公正な取引を妨げている要因となっていました。特に賃貸物件で入居者が亡くなった場合、物件オーナーはすべての死因の場合で告知が必要だと思い、高齢者の入居を避けるような傾向も見受けられました。

そのような背景から2021年10月、国土交通省は「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を制定しました。告知事項を伝えるのは宅地建物取引業者であることが多数を占めるため、宅建業者が担うべき義務としてまとめられています。(※1)

自然死や不慮の事故については告知義務なし

老衰や持病による病死などの「自然死」、階段からの転落や入浴中の「溺死」、食事中の誤嚥などの「不慮の事故死」に関しては、告知義務は不要という基準が定められました。これは、売買・賃貸ともに適用されます。(※1)
ただ、上記要因によって死亡したあと、長期間発見されず放置され、特殊清掃等を行なった案件は配慮が必要になることがあります。

共用部分も告知対象

賃貸物件において、集合住宅のベランダ、集合玄関、駐輪場、ゴミ置き場など、日常的に通常使用する場所で死亡事故が起こった場合、原則として発覚後3年経てば告知不要とされました。(※2)
ただ、売買においてはこれまで通り、不動産業者が案件ごとに判断し告知を行うことになっています。同様に自室で入浴中に亡くなり特殊清掃を行なった場合も、発覚から3年経てば告知義務がなくなります。(※3)
また、通常住民が出入りできないボイラー室や、取引物件の隣室で亡くなった場合は、通常使用しない場所であるという判断のため、賃貸・売買共に原則、告知義務はありません。

告知義務の期間

これまで各宅建業者がそれぞれの慣習にしたがって定めていた告知義務期間は、発覚時から概ね3年と明記されることになりました。ただし、事件性、社会に与えた影響、周囲からの認知性などを鑑み、それ以上の年月、記載されることが考えられます。(※4)

売主と買主の双方を守るためのルールですが、「自然死と聞いている」という曖昧な判断で告知義務を怠ると裁判事案になることも考えられます。善良な貸主・売主は、知っている情報や疑わしい点は正直に共有してくれるはずですが、借主・買主もまた積極的に質問することをお勧めします。

安心して暮らすために気になることは放置しない!

新生活を気持ちよくスタートさせるために、正しい情報を得ることは重要です。どんな物件でも事故物件になり得るということを念頭に置き、物件探しを進めていきましょう。

もし不安な点があれば、まずは担当の不動産会社に聞くのが早いはずです。そして、セカンドオピニオンとして、今回ご紹介したような自分たちでも調べられる方法があるとわかっていると安心でしょう。
良い物件と出会えることを願っています。