給湯器の見直しでガス代を節約 環境にもやさしい快適リフォーム

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家庭で消費されるエネルギーは、何に、どの程度、使われているかご存知でしょうか。月々の光熱費を気にすることはあっても、その内訳まで気にする人は少ないものです。

近年は夏の平均気温が上がり、「熱中症対策のため、冷房をつけたままにしておくと良い」と、ニュースで見聞きしたりもしますが、電気代を気にしないわけにはいかないものです。パソコンやタブレット、調理家電など、家庭で使う電気機器も増えましたから、電力消費を意識する人も増えていると考えられます。

では、実際のエネルギー消費はどうなっているのでしょうか。下のグラフは、家庭におけるエネルギー消費の内訳です。実は、冷房や暖房よりもエネルギー消費が高いひとつに「給湯」が挙げられます。それもそのはず、給湯は冷暖房と違って1年を通して稼働しているため、年間で考えれば消費割合が多いことは想像に易いことでしょう。

経済産業省資源エネルギー庁ウェブサイト「省エネって何?」の情報を参考に筆者作成

しかし、給湯器は家の外にあるためか、日頃はその存在に注目をすることは少ないかもしれません。また、内装や水まわり設備のリフォームは気にしていても、給湯器のリフォームについて考える機会は、そう多くないものです。
このごろは、「エコ住宅」への注目も高まっており、給湯機をエネルギー効率の良い新しい設備と交換することは地球にやさしく、光熱費の節約にもつながることが考えられます。

給湯器の移り変わり

かつて給湯機は、小型の湯沸かし器としてキッチンの流し台の前に置かれたり、浴槽の真横に設置されていたりと、それぞれ独立したものとして用意されていました。必要な湯量を必要な場所で温めてつくる、というシンプルな考え方はある意味、省エネ的な発想のような気もします。
そして、近年はひとつの給湯器でお湯をつくり配管を通って必要な場所に運ばれる、セントラル方式が多く採用されています。キッチンや浴室だけでなく、床暖房やパネルヒーティングといった暖房の熱源として住戸全体で使われることも増えてきました。

このように用途を広げてきた給湯機の中には、自然エネルギーである太陽の熱を利用して水を温める「太陽熱給湯」も普及しつつあります。その始まりは第二次世界大戦後と古く、最初は黒塗りした金属の水槽をガラス板で覆った簡単なものからスタートし、一次オイルショック直後には太陽熱を利用した給湯製品が多く発売されるようになりました。(※1)
その後は、給湯のセントラル化が進んだことで利用が減少していましたが、近年は自然エネルギーの有効利用に関心が集まっていることもあり、再び注目され始めています。

2001年になると空気の熱を利用してお湯をつくる「電気ヒートポンプ式給湯器」の販売が始まります。エネルギー効率が高く、オール電化にできるというメリットもあり、普及率は高くなってきています。
環境省によると、2016年以降に建築された住宅では約6割が「ガス給湯器」を、約3割が「電気ヒートポンプ式給湯器」を利用しているそうです。

▼2016年以降に建築された住宅で使用している給湯機・給湯システム(平成29年度・複数回答)

ガス給湯器・風呂がま(エコジョーズを含む)・・・・60.4%
電気ヒートポンプ式給湯機(エコキュートなど)・・・30.3%
電気温水器・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5.5%
灯油給湯機・風呂がま(エコフィール含む)・・・・・2.1%
その他・給湯機・給湯システムはない・不明・・・・・5.3%

環境省「2017年度の家庭のエネルギー事情を知る~給湯機器について~|表1 建築時期別使用している給湯器・給湯システム(平成29年度)」の情報を基に作成

熱源によって多種多様な給湯器

ここでは給湯機に使用される頻度の多い、ガスや石油、電気といった熱源の違いをみてみましょう。

ガスや石油でお湯を作る

ガスや石油を熱源とする給湯器には「従来型給湯器」と「潜熱回収型(高効率)給湯器」の二種類があります。従来型ではガスや石油を燃焼させ、水を温めます。この時に水に伝わらず排気として出ていった熱を、水を温めるためにもう一度使おう、というのが潜熱回収型です。潜熱回収型の給湯器のうち、ガスを熱源とするものは「エコジョーズ」、石油を熱源とするものは「エコフィール」という名称で知られています。

環境省ウェブサイト「潜熱回収型給湯器のしくみ」より引用

電気でお湯を作る

電気でお湯を作る仕組みにも2つの方法があります。ひとつはタンク内の水をヒーターで温める方法です。「電気温水器」「電気ヒーター温水器」などと呼ばれています。とてもシンプルな給湯方式で、2000年代、2010年代は新築住宅の約1割に採用されていました。(※2)
もうひとつは「ヒートポンプ式」とよばれる、大気中の空気を利用して熱を得る方法です。圧縮すると温度が上がるという気体の性質を活用したもので、フロンガスや二酸化炭素といった気体(冷媒)を電気の力で圧縮して温度を上昇させると同時に、周囲の空気熱を取り込むことで水を温め、タンクに貯めておくのです。この仕組みは「エコキュート」という名称で知られています。

環境省ウェブサイト「冷媒 CO2ヒートポンプ給湯器のしくみ」より引用

ガスと電気のハイブリッド

エコジョーズ(ガス潜熱回収型給湯)とエコキュート(ヒートポンプ給湯)の利点を組み合わせた「ヒートポンプガス瞬間式併用型給湯器」も、その省エネ性の高さから注目されています。これは、エコキュートの仕組みであらかじめお湯をつくり、使い切った場合にはエコジョーズの仕組みで必要なぶんを沸かす、というものです。
エコキュート単体と比べてタンクの湯温が低いこと、タンク容量が少なくて済むことから、省エネ性能がとても高いことで知られています。

どのくらいエコに給湯できるのか

給湯器の名前には「エコ」と付くものが多くあります。ガス潜熱回収型の「エコジョーズ」、石油潜熱回収型の「エコフィール」、空気熱でお湯を沸かす「エコキュート」、そして、その良さを組み合わせたヒートポンプガス瞬間式併用型給湯器の商品名にもエコの名が使われています。これらはどの程度「エコ(省エネ)」なのでしょうか。

平成25年、建物全体の省エネルギー性能を把握するために、「一次エネルギー消費量」という指標を用いた省エネ基準が導入されました。一次エネルギーとは、化石燃料、原子力燃料、水力・太陽光など自然から得られるエネルギーのことを指します。一方、都市ガスや電気、石油など一次エネルギーを変換・加工して得られるエネルギーは「二次エネルギー」と呼びます。

住宅など建築物では二次エネルギーが使われていますが、電気やガスなど、その機器によって使われる種類は異なります。そのため、どの機器を使うと、どの程度省エネになるのかは、直接比較することができずにいましたが、これらを一次エネルギー消費量に換算し、同じ単位にすることで比較・検討できるようになったのです。

では、実際にどの程度一次エネルギー消費量を抑えることができるようになったのでしょう。 少々古いデータにはなりますが、一都3県が含まれる「九都県市首脳会議」で2010年に公表された比較データをご紹介します。これによると、従来型ガス給湯器の一次エネルギーと比べて、どの給湯システムでも一次エネルギー消費量を抑えることができることがわかります。

九都県市首脳会議「家庭における給湯設備の比較調査報告書(平成22年9月)|P8.表1 既築住宅(4 人世帯)の給湯器別の比較結果」の情報を基に作図

電気ヒートポンプ給湯器やヒートポンプガス瞬間式併用型給湯器は、導入時のコストが大きいことから検討を見送られることがありますが、長く使うことを考えると運転時のコストと環境負荷を抑えられることは魅力のひとつになります。

お住まいの地域の気候特性や、住まい方、導入時や運転時にかかる費用にも目を向けると、選択肢の幅は広がるかもしれません。

おわりに

近年は住まい方や暮らし方が多様化しました。家族それぞれの生活時間の違いから入浴時間はさまざまであり、二世帯住宅でも水まわりを完全に分けて程よい距離感で暮らす家庭も増えてきています。

温水を使って床暖房を行うなど給湯が必要となる場面が増えた家庭も多くありますし、地域によって気候もさまざまです。それに呼応するかのように、給湯器も豊富なラインナップがそろい、住まい手のあらゆる要望を満たそうとしています。

暮らしのなかでも多くのエネルギーを消費する給湯機。リフォームの際には、新しい設備との交換を検討してみませんか。光熱費を削減しながらエコな生活を送ることは、これからの時代のスタンダードとなっていくはずです。

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