住まいの劣化対策のポイント 木材の腐朽やシロアリの侵入を防いで家を長生きさせよう

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日本の住まいのほとんどは木造で作られています。

寿命が短いと言われる現代の木造住宅ですが、ていねいに使い、不具合があればメンテナンスをしっかり行っていくことで80年以上長持ちさせることも十分可能です。しかし、住まいの劣化、とりわけ構造体である木材の劣化は住まいの寿命に関わる大きな要素です。

今回は、住まいを長く使い続けるために大切な劣化対策について解説していきます。

耐震性を低下させる木材の劣化

壁紙のシミや外装材の汚れなど、外側から確認できる建物の劣化に対し、構造材である木材は床や壁、天井の仕上げに隠れていることが多いため、気付いた時にはすでに劣化が進行していることもあります。特に仕上げ材の劣化が水漏れによるシミである場合は、水が仕上げの内部まで侵入し木材を劣化させていることがありますので注意が必要です。

木材の劣化は住まいの耐震性に大きく影響を及ぼします。構造材である土台、柱、梁またその接合部の劣化が進むと地震に対する耐力を発揮することができず、倒壊するリスクが高くなります。実際、これまでの大地震においても木材の劣化が進行していることで地震の力に抵抗できず倒壊した住まいが多く見られます。

木材を劣化させる主な要素として、「腐朽」と「蟻害(ぎがい)」が挙げられます。たとえば、蟻害の被害は「床下」「玄関」など、地面に近い箇所で多いことがわかります。

日本長期住宅メンテナンス有限責任事業組合「シロアリ被害実態調査報告書(2013年3月31日)|P55「被害箇所別蟻害割合」の情報を基に筆者作図

これを基礎の構造別で比較すると、最近の住まいの標準的な構造である「べた基礎」に比べ、古い住宅に見られる「布基礎」と地面の土壌が現しの組み合わせになっている住まいでは発生率が高くなっていることがわかります。

日本長期住宅メンテナンス有限責任事業組合「シロアリ被害実態調査報告書(2013年3月31日)|P45「基礎構造別蟻害発生率」の情報を基に筆者作図

こうしたデータを考慮すると、腐朽や蟻害は床下など地面に近く水分が多い箇所ほど発生しやすく、また古い住宅ほど湿気対策ができておらず、劣化が進行している傾向にあることがわかります。

そのため、住まいのリフォームを行う場合は、床下を含めた木材の劣化確認を行い、必要に応じ劣化対策を行うことが大切です。

木材の腐朽を防ぐ

ここからは、構造材である木材の強度を低下させてしまう腐朽とシロアリによる劣化対策について解説していきます。

屋外の雨を受ける場所で、デッキ材などの木材が腐っている様子を見たことがある人は多いのではないでしょうか? こうした木材の腐朽を進行させるのが「腐朽菌」の存在です。

水分の多い床下などでは特に腐朽菌が発生しやすく、急速に木材の強度を低下させていきます。
こうした腐朽を進行させないポイントを挙げてみましょう。

浴室まわりの水漏れを防ぐ

水漏れは木材の腐朽を進行させる主な要因と言えますが、特に多いのが浴室の床下における水漏れです。なかでも古い住宅で一般的に施工されていた、在来浴室における水漏れは多く発生しています。なお、「在来浴室」とは、近年の住まいで一般的になっているユニットバスでなく、現場で施工するタイプの浴室のことです。

在来浴室はユニットバスに比べると水密性を長年にわたって維持することが難しく、またメンテナンスが行われていないことで目地のコーキング部分が劣化して水漏れを起こし、床下の土台などを腐らせている事例が多く見られています。

こうした在来浴室の場合、ユニットバスに取り換えることは防水上非常に有効です。取り換えることが難しい場合でも、タイルや浴槽周りの目地をリフォーム時にコーキングし直すことが大切です。なお、コーキングは経年劣化していきます。定期的に修繕することで水漏れを防ぎましょう。

引用)住友林業のリフォーム 「リフォーム事例」(在来浴室からユニットバスへのリフォーム)

定常的な雨漏れを防ぐ

雨漏れが発生している場所がある場合も要注意です。特に豪雨のたびに雨漏れが発生しているようであれば、定常的にその周りの木材が水分を吸収しており、腐朽が進行しているおそれがあります。こうした雨漏れは屋根まわり、サッシまわりにおいてよく見られます。軒の出が少ない住まいほど、屋根と外壁の取り合い部から雨水が侵入するリスクが高くなります。

雨漏れの跡が見られる場合は、リフォーム時に必ず原因をつきとめると同時に、その周りの木材の状態を確認することが非常に大切です。

軒の出が少ない場合は、軒の出をしっかりと確保することで漏水リスクを減らすことができます。

壁内の結露を防ぐ

通気層のない外壁となっている住まいなどでは、壁の中で結露が起こり、壁内の木材やその下の土台の腐朽が進行していることもあります。こうした壁内結露は普段は目視で確認できないため、リフォームで内壁を解体した際に初めて明らかになることも多いのです。そのため、リフォーム時は壁内での結露跡がないか、確認しておくことが大切です。

壁内の結露を防ぐには、外壁側に通気層を設けて壁の中の湿気を逃がす、室内側に気密シートを設けて室内の湿気を壁に入れないなどの工夫を行うことが大切です。

床下の湿度を高くしない

水漏れがなくとも、常に水分のある高湿度の場所では木材が腐朽することがあります。たとえば、床下です。普段の生活で目に見えなくとも、床板を外すと床下が湿っており、床の下地や土台が腐っていることもあります。特に布基礎+土壌が現しになった基礎の場合は、地中からの水分により高湿度となっている場合が多く見られます。こうした場合は土の上に防湿シートを敷設したり、被膜材を吹き付けたりするなどして地中からの湿気を防ぐことが大切です。

シロアリ対策のポイント

腐朽と合わせて気を付けたいのが、シロアリによる蟻害です。リフォーム時にシロアリによる食害を見つけたら、部材の取替に加え、適切に駆除しておく必要があります。
シロアリも腐朽菌と同じく、水分のある場所に侵入してきます。ひどいときには、屋根裏にまでシロアリが侵入しているケースも見られます。

引用)住友林業のリフォーム「シロアリ

シロアリによる被害を防ぐには、どういう方法があるのでしょうか。下記解説していきます。

基礎の形状を改善する

シロアリは地中から基礎を伝い、木部に侵入してきます。そのため、床下で土が現しになっている場合、シロアリは地中から容易に侵入してきます。
この場合の対策は、新たにコンクリートを打ってべた基礎にしてしまうことです。これにより、シロアリ侵入のリスクを減らすことができます。ただし、シロアリはわずか1mm弱の隙間であっても侵入してくるため、べた基礎にしたからといって対策は万全とは言えません。
耐震補強を考えている場合は、基礎の補強を兼ねてべた基礎とすることで、耐震補強と劣化対策の両方を行うことができます。
なお、床下にひび割れや、排水・給水管とコンクリート部とのあいだに隙間が見られる場合は、リフォーム時に補修することが大切です。

土壌や木材に薬剤処理を行う

新たにコンクリートを打設することが難しい場合は、床下の土壌や土台などの木材に薬剤処理を行うことで、シロアリの侵入を防ぐことができます。ただし、薬剤の効果は永続的ではありません。薬剤処理による対策を行う場合、保証期間を確認し、定期的に処理を行う必要があります。

引用)住友林業のリフォーム 暮らしのこれから 「木造住宅の<床下>のメンテナンス

ベイト工法による対策

床下への薬剤処理とは別の方法として、「ベイト工法」と呼ばれるシロアリ駆除の工法もあります。これはシロアリの餌となるベイト剤という薬剤を入れた容器を建物の周りに設置し、それを巣に持ち帰らせることで巣ごと駆除する工法です。
こちらも薬剤の有効期間がありますので、定期的な交換が必要になります。

定期的な点検を継続しましょう

リフォーム時に劣化対策を行った場合であっても、定期的な点検は非常に大切です。

薬剤処理によるシロアリ対策を行った場合は、薬剤の効果が切れると蟻害が再発するリスクもありますので、定期的に床下を確認し、新たな劣化がないか、湿気が高くなっていないか、シロアリの侵入跡がないかを確認する必要があります。
そのためにも、リフォーム時には床下点検口の設置、人が入って床下を確認できる十分な寸法を確保しておくことが大切です。

引用)住友林業のリフォーム 暮らしのこれから「木造住宅の<床下>のメンテナンス

まとめ

床下や屋根裏、壁内の木材の劣化は普段気付くことが難しいものです。リフォーム時に解体を行うと劣化が進行していて部材の取り替えをせざるを得ないケースも多く見られます。水漏れがよく起こる場所は、付近の木材に水分が侵入しているおそれもあります。

住まいの寿命を長く維持するためには、定期的に点検を行い、劣化対策をしっかり行う必要があります。
リフォームを行う場合は、普段見ることのできない構造材を確認できるいい機会ですので、専門家に確認してもらい、適切に処理を行っていくことが大切です。