絶対に避けたいシロアリ被害 対策方法を詳しく解説します

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住む人に温もりや癒しを与え、木材を利用することによって地球温暖化防止にも役立つ木の家は、人と環境にやさしいことから、わが国で大変人気がある住宅工法です。
そんな木の家が劣化してしまう主な原因は、木材を腐らせる腐朽菌とシロアリによる蟻害などの生物劣化です。

今回は、木の家に長く住み続けるために必要なシロアリ対策について、詳しく解説します。大切なマイホームを守り、心地よく暮らしていくためにも、ぜひ本記事を参考になさってください。

シロアリは木造住宅の天敵

木の家にとって耐久性を脅かす要因のひとつはシロアリによる被害です。ここでは、日本で建築物に被害を与える代表的なシロアリについて、詳しく解説します。

1.代表的なシロアリはヤマトシロアリとイエシロアリ

木の家に多大なダメージを与える代表的なシロアリは、ヤマトシロアリとイエシロアリです。近年ではアメリカカンザイシロアリ等の被害もあります。

全体としては、ヤマトシロアリによる被害が圧倒的に多く発生しており、全シロアリ被害の92%にのぼっています。

日本長期住宅メンテナンス有限責任事業組合「シロアリ被害実態調査報告書|P36. 4.9.白蟻種類別の被害発生割合(全調査棟数に対する各白蟻別の発生割合)

ヤマトシロアリは北海道を含む日本全国に生息しており、広範囲にわたって木造建物に被害を与えています。一方、イエシロアリは神奈川県より西の海岸地帯周辺に生息していることもあり、8%程度に過ぎません。近年、深刻な被害が報告されているカンザイシロアリは、わずか0.3%です。

下記は、代表的なシロアリの種類と特徴です。

ヤマトシロアリ

頭部が円筒形で、体長の約半分を占めます。からだは乳白色をしています。体長は4~6mm程度です。

イエシロアリ

頭部はぷっくりと丸く、体長の3分の1程度を占めます。鋭いあごが特徴です。体長は5~7mm程度です。

アメリカカンザイシロアリ

頭部はヤマトシロアリに似ているものの、体長は約2倍の大きさがあります。頭部は、体長の3分の1ほどです。

ダイコクシロアリ

体長は5~6mm。頭部は体長の4分の1程度です。背中は黄褐色で、腹に向かうにつれ淡い色をしています。

2.シロアリの被害に遭いやすい場所

日本で一番多いヤマトシロアリが好むのは「日当たりが悪く、湿気の多い、暖かい場所」です。被害は台所や洗面所、トイレ、風呂場などの水まわりに多く、換気の悪い床下では、土台や床束にもおよびます。
一方、イエシロアリは水分を含みながら害を与えていくので、建物全体に被害が拡大していくことも起こり得ます。土台や床束、柱などの下部が食害されると柱が浮いたり傾いたりするため、地震や台風のときに大きな被害につながることもあり大変危険です。

3.シロアリによる住宅の主な被害例

シロアリによる住宅の主な被害として挙げられるのは、「土台と柱の被害」「天井の被害」「畳の被害」の三つです。
シロアリが建物へ侵入する際に基礎や束石につくる蟻道(ぎどう)の存在によって被害の発生が予測できます。

シロアリに弱い木材と発生要因

シロアリに弱い木材で木の家を建ててしまうと、常にシロアリの猛威を心配しなくてはなりません。ここではシロアリに弱い木材と、シロアリ被害が発生する要因を解説します。

1.ホワイトウッドはシロアリに弱い

一般的にホワイトウッドはシロアリに弱い木材とされています。シロアリの巣にスギとホワイトウッドを置いて、どの程度喰われてしまうのかの実験では、1カ月後、スギはほとんど変化がありませんが、ホワイトウッドはシロアリに激しく喰われて小さくなっています。
シロアリに弱い木材であっても、適切な防蟻処理を行うことによりリスクを減らすことはできるものの、なるべくならシロアリに対する耐久性の強い木材を使用することが大切です。

2.シロアリの発生要因と発生しやすい環境

シロアリが発生する要因には、生育環境や地域、木材の種類、建物の部位などがあります。
日本で一番多いヤマトシロアリは、温度が12~30℃で湿気の多い環境を好み、土台などの地面から低い場所で発生します。

▼シロアリの発生要因と発生しやすい環境

シロアリの種類

生育条件

発生しやすい地域

発生しやすい
部材・部位

ヤマトシロアリ

  • 温度(12~30℃)
  • 水分の滞留(雨水、生活用水、それらの漏水、結露、湿気)

北海道北部を除く日本全土

  • 耐蟻性の低い樹種
    (アカマツなど)
  • 土台
  • 地面から1m以内の湿った部材

イエシロアリ

温度(30~35℃)

※水分は自ら運ぶので必須条件ではない

千葉以西本州南岸、

西日本の沿岸・低地、四国、九州、沖縄、小笠原

  • 耐蟻性の低い樹種
    (アカマツなど)
  • 乾材と湿った部材
  • 建物全体

ダイコクシロアリ

気乾状態以上の木材の中

奄美大島以南、小笠原

  • 主に乾材
  • 建物全体、家具類などを含む全ての木製品

カンザイシロアリ

同上

宮城から沖縄まで 24都府県(拡大中)

同上

国土交通省「施設の性能に影響を与える木材の経年変化|P31. 2.蟻害 (2)発生要因、発生しやすい環境」から引用

木の家をシロアリ被害から守るために

木の家に長く住み続けるためには、シロアリの被害に遭わないようにしなければなりません。ここでは、大切なマイホームを守るための方法をご紹介します。

1.新築時に防蟻施工をしておく

シロアリの被害を防ぐために新築時に防蟻施工を行い、被害と腐朽を予防することは欠かせません。木部処理は通常、地面から1mまでの部材、浴室まわり部材、洗面所や台所等の水まわり部分に対し、行います。木口や切り欠き、ボルト穴、コンクリート接触面などの接合部は特に入念に行うことが必要です。

2.定期的な調査とメンテナンス

既存建築物の処理は、建築物を食害しているシロアリを駆除して今後の被害を予防する場合と、いまは被害がなくても予防措置として行う場合があります。
木部処理は、木材表面に噴霧器で薬剤を吹き付ける、刷毛等で塗布する、木材や壁体に穴をあけて薬液を注入する――という3つの方法があります。このほか、土壌表面に薬剤を散布し防蟻層を形成する方法もあり、近年では、防蟻効果のほかに土壌からの水分蒸散防止を目的とした土壌被膜形成工法やシート工法も採用されています。
なお、新築時に防蟻施工をしておいたとしても、定期的にメンテナンスを行うことが必要です。

3.防蟻施工は「土壌処理」と「木部処理」の2種類

先述したとおり、処理には「土壌処理」と「木部処理」があり、基本的にその両方を行うことになります。防除処理が実施されているかどうかは、登録施工業者会員が発行した施工保証書等で確認ができます。
防除施工標準仕様書で推奨しているのは、5年を目安としたメンテナンスです。
施工業者の公的な登録制度はないものの、公益社団法人日本木材保存協会に登録している施工業者会員数は730業者(平成25年12月末)となっています。

まとめ

今回は、木の家の天敵である「シロアリ被害」について詳しく解説してきました。
シロアリは木を主食とする虫なので、木の家に住む人にとっては非常に厄介な存在といえます。しかし、あらかじめ防蟻施工をしたり、定期的にメンテナンスを行ったりすることで、その被害を食い止めることができます。

人と環境にやさしい「木」の香りに満ちた家は、住む人に癒しと安らぎを与えてくれます。
大切なマイホームを守るためにシロアリ対策をしっかりと行い、年月とともに味わい深くなる木の家に、ぜひとも長く住み続けたいものです。