戸建てをフルリフォーム 費用は? メリットは? 事例を交え解説します
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「長年住み続けている家の傷みや不具合が気になる」「子どもの独立で家族構成が変わった」「中古で購入した家を自分のライフスタイルに合わせた空間にしたい」など、住まいのリフォームに踏み切る理由は人それぞれです。しかし、新しい住まいにどのような機能を求めるのか、理想の暮らしをどう実現するのかイメージがわきづらかったり、現実的にどのくらいの費用がかかるのか気になったりする人も多いことでしょう。
この記事は、戸建てをフルリフォームする場合の費用や事例、注意点について解説します。
目次
戸建てのフルリフォームとは
フルリフォームとは、柱や梁などの構造体だけを残したうえで間仕切りや外壁、サッシなどを全面撤去して行うリフォームのことであり、「スケルトンリフォーム」とも呼ばれています。
木造住宅の場合、基礎・柱・梁・筋交いなどが基本的な骨組みです。これらは建物を支えるのに必要な部材であり、リフォームで撤去したり移動させたりすることはできません。つまり、建物の形状や階数を変えることはできません。
フルリフォームは新築や建て替えと比べると、間取りなどに多少の制限がありますが、建て替えが出来ない土地では有効な方法です。
建築基準法では「接道義務」というものが定められており、土地に面している道路の幅員が規定に満たない場合は「再建築不可物件」となります。これは緊急車両が通る道を必ず設けるための法律であり、「安全が確保できない土地に住宅を建てることはできない」という考えに基づいています。しかし、再建築不可物件の場合でも、リフォームは再建築に当てはまらないため、新築に近い住まいを実現できるのです。
戸建てのフルリフォームの種類
フルリフォーム(スケルトンリフォーム)では、主に内部フルリフォーム、外部フルリフォーム、そして、内外フルリフォームの3種類があります。
以下は、築年数でセグメントした戸建てのリフォームの理由をまとめたグラフです。動機はさまざまですが、たとえば「建築後10年未満」の住宅では「同居家族の人数の変化・子の成長にともなって」がもっとも多く、この場合は、内部のみのフルリフォームで理想とする住まいを十分実現できるでしょう。しかし、築20年以上になると、設備や外装材など多くの部材が老朽化や寿命を迎えているため、内外両方のフルリフォームが必要になります。実際にグラフでも「設備や機器が老朽・劣化したから、またはグレードアップしたいから」が「建築後20~29年」「建築後30年以上」でリフォームを行う一番の理由となっています。
戸建てフルリフォームでできること
ここでは、戸建てをフルリフォームすることで、どのような住まいを実現できるのか、その具体的なメリットをお伝えします。
耐震補強ができる
1981年の建築基準法改正以前に建築された住宅においては、そのほとんどが現在の耐震基準を満たしていません。国土交通省によると、耐震性不足とされる戸建て住宅は平成30年現在、約560万戸あると推計されています。
お住まいを建てた年が1981年以前の場合は、耐震補強を必ず行いましょう。この耐震補強とは柱や梁など、壁の内部に耐震材を施工するものです。骨組み以外のすべてを解体するため構造材の状態を確認しやすく、施工もスムーズに行えます。
大地震に備えた耐震性がこれからの木造住宅には求められています。
大がかりな間取りの変更ができる
部分的リフォームでは既存の間取りの制限を大きく受け、思ったとおりに間取りが取れないことが考えられます。しかし、フルリフォームであれば間取りの自由度は高く、生活動線や日当たりなども考慮したものに一新することが可能です。
水まわりのリフォームをまとめて行える
浴槽やトイレ、洗面台などの水まわりの設備は、寿命が約20年と言われています。これらは部分リフォームを行うケースが多いものの、フルリフォームを機会にまとめて行うほうが、個別にリフォームするより工費が安くなります。
断熱リフォームができる
部分リフォームの場合、壁の一部を撤去して断熱材を入れ、壁を補修するという流れになりますが、フルリフォームでは断熱材の施工を壁の新設と同時に行うことが可能です。
外壁、屋根、内装、設備を一新できる
外壁や屋根材など、外装材の寿命は30年ほどです。お住まいが築30年以上経つ場合は、多くの設備や部材が寿命を迎えていることになります。フルリフォームを機会に、これらの部分にもぜひ手を加えていただきたいものです。
建て替えと比べたときのデメリット
フルリフォームと建て替えとの大きな違いは、部分リフォームほどではないものの、間取りの変更に制限ができてしまう点です。しかし、柱や基礎といった構造材の状態が良好であり、間取り自体も「可能な範囲で変更する」と割り切れるのであれば、建て替えよりも予算を抑えられるメリットが生まれます。
戸建てのフルリフォームの手順
ここでは、フルリフォームの手順を紹介します。
1.相談、現地調査
リフォーム業者はなるべく実績の多い会社を選びましょう。独自の技術を有することをはじめ、エコ住宅、耐震住宅、バリアフリーなど、プラスαの性能を目指しているメーカーも多くあります。
選定にあたっては、希望するプランはもちろん、お住まいの地域や家族構成などに合わせたプランを提案してくれるかどうかが大切です。
なお、現地調査時においては、築30年以上の物件は耐震診断を受けるようにしましょう。
2.設計図、見積書の作成
大まかなプランができた時点で概算の見積もりを行います。その後、予算に合わせてプランを詰めていきますが、ここまでは複数のリフォーム会社で相見積もりを取っても大丈夫です。満足のいくプランを提案してくれる会社を選びましょう。
3.各種申請、契約手続き
リフォームの内容によっては、国や自治体から補助金が支給されるものがあります。具体的には、バリアフリー化やエコ住宅化、耐震改修や三世帯住宅化などが挙げられます。
支給を受けるには着工前の申請が原則です。詳細は施工会社に確認するとよいでしょう。
住宅ローンの申請、審査、契約が終われば、いよいよリフォーム工事の契約となります。
4.工事
骨組み以外の解体工事からスタートします。新築や建て替えに比べて工事期間が短いのがフルリフォームのメリットです。しかし、部分リフォームとは違い、工事期間中は入居できません。事前に仮住まいを確保しておきましょう。
5.立合い検査、引き渡し
3~5カ月程度の工期を終え、引き渡し時にはほぼ新築と同様の仕上がりとなります。立合いの場では、各設備の使い方の説明なども行われます。
戸建てフルリフォームの費用感
ここでは、フルリフォームにおける工事費用を項目ごとにご紹介します。
解体費用:50万円
構造部を残すための繊細な作業も必要になるため、全面解体と比べて工期がかかりますが、廃材処分費などは抑えられます。
キッチン:80~120万円
設備のグレードにより金額は上下します。中程度であれば100万円以下で施工できます。
洗面浴室トイレ:150~250万円
浴室は、断熱性や施工費用、バリアフリーの観点からユニットバスへの取り換えがおすすめです。
間取り変更(内装含む):300~400万円
階段や壁などの大工工事を行うほか、サッシ、配管、配線もすべて新設します。既存の配管などを活かす場合には、それに合わせた間取りにする必要がある一方、配管移設にかかる費用の削減につながります。
外壁屋根:300~500万円
外装材のグレードにより金額が上下します。張替えを行わず、再塗装や補修のみの場合は費用が抑えられます。
耐震補強:150万円
築年数が古くなるほど耐震補強の金額も高くなります。築30年で平均150万円前後を見ておくとよいでしょう。
以上のリフォームをすべて行った場合に、かかる費用は1,030~1,470万円です。この金額のほかに税金や登記費用など諸費用がかかりますが、補助金や減税により費用を抑えられる部分もあります。
エコ住宅やバリアフリー住宅など、高性能住宅化を行う場合は、相場よりも施工材料や設備費などの価格が上がるため、2,000万円以上の施工事例も多くあります。
戸建てフルリフォームの事例を解説
フルリフォームの具体的な内容や費用感が分かったところで気になるのが、「我が家ならどのような住まいにするか」という仕上がりのイメージではないでしょうか。
ここからは、フルリフォームの事例をご紹介します。
1.内部フルリフォーム(築28年/鉄筋コンクリート造/費用3,000万円)
【行ったリフォーム】
- 内装、内壁解体
- 補強・断熱工事
- 内装・内壁工事
- 電気工事・設備工事
- 検査・引き渡し
鉄筋コンクリート造は、木造と比べて柱などの躯体が太いため、柱間の距離が広く取れるのが特徴です。そのためリビングなどに広い空間を取ることができます。しかし、窓の位置は変えられないため、既設の開口部に合わせた間取りにする必要があります。
床板や壁の内側の板などを撤去した際に、基礎補強や耐震補強、断熱材の施工が可能なため、リフォームと同時に住まいを強く、より快適にできます。
2.外部フルリフォーム(築29年/在来工法/費用500~1,500万円)
【行ったリフォーム】
- 外壁、屋根の解体
- 足場の設置
- 防水工事・外壁、屋根工事・断熱工事・建具取付け
- 検査・引き渡し
外部リフォームでは、サッシや玄関の取り替えや移動、外断熱の施工が可能であり、住宅の省エネ化を見込めます。
外壁や屋根のリフォームも検討している場合は、足場費用(15~20万円程度)分を削減できるため、同じタイミングで行うのがおすすめです。
3.内外フルリフォーム(築100年/伝統構法(旧家古民家)/費用7,300万円)
【行ったリフォーム】
- 外壁、内壁、屋根の解体
- 耐震補強・防水工事
- 外壁、屋根工事、断熱工事、建具取り付け
- 内壁、内装工事
- 電気、設備工事
- 検査、引き渡し
古民家のフルリフォームでは、設備の取り換えや断熱材の施工など、リフォーム箇所も多くなりがちであり、一般住宅より広い面積のある場合が多いためリフォーム費用は高額です。
古い部材や木建具などを再利用することで、歴史的建造物の保存はもちろん、廃材費用や木工事費用を抑えられます。
戸建てのフルリフォームの注意点
フルリフォームの判断時
建て替えや新築と比べて予算が抑えられるフルリフォームですが、現地調査により基礎や木造部位の腐食や深刻な劣化が見つかる場合があります。構造体の状態によっては補修や補強の費用が高額になり、建て替えと同等の金額、もしくは高額になる場合もあるでしょう。
予算は大きな判断基準です。予算の内容をしっかり確認したうえでフルリフォームで良いのかどうかを判断しましょう。
固定資産税の増額について
リフォームでは基本的には固定資産税の増額はありません。しかし、中古物件のリノベーションや改修で床面積が増える場合は、住宅の価値が上がるため固定資産税が増加します。フルリフォームの場合、床面積や主要構造部は変化しないものの間取りや性能が大きく変わるため、やはり固定資産税が増額する場合があります。
判断基準となるのは「建築確認申請」です。小規模リフォームでは申請を行う必要はありませんが、改修内容や改修規模が大きく、改修後の住宅の性能が大幅に変わる場合は建築確認申請が必要です。建築確認申請が必要な工事は、固定資産税が上がる可能性が高いと判断しましょう。
相談時
リフォーム工事は悪徳業者による被害も少なくありません。必ず複数のリフォーム会社に相談しましょう。不審に思う点がある場合は、その個所を他のリフォーム会社にも相談してみましょう。キャンペーン期間が終わると金額が高くなるなど、契約を焦らせる業者は要注意です。あなたの目線に立ってじっくりプランを考えてくれるリフォーム会社を見つけましょう。
見積り
予算はプランを立てるうえで重要な情報です。施工会社には、最初に金額を伝えることがベストです。
キッチンや浴室のリフォーム、断熱工事のグレードを上げると工事費や設備費は高くなりますが、光熱費のランニングコストは抑えられます。
住宅のエコ化は補助金対象でもあるため、予算とうまく組み合わせながら考えてみるとよいでしょう。
補助金・助成金制度について
リフォームに関する補助金制度には、「エコ住宅・省エネ化」「住宅性能向上(バリアフリー化・耐震含む)」の2つの項目に関わる内容が対象となり、具体的な内容は下記のとおりです。関心のある内容については、ご自身でも調べておくとよいでしょう。
- 高性能建材による住宅の断熱リフォーム支援事業 最大120万円
(エコ住宅・省エネ化) - 次世代省エネ建材支援事業 最大200万円
(断熱パネルまたは潜熱蓄熱建材施工を含む省エネ化) - 長期優良住宅化リフォーム推進事業 100万円~300万円
(性能向上、三世代同居、子育てに適した環境化のいずれかを含むリフォーム) - ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)支援事業 60万円~
(太陽光など高効率な設備システムを導入し、住宅内エネルギー消費量の収支をゼロとすることを目指した住宅) - 地域型住宅グリーン化事業 50~140万円
(省エネルギー性能や耐久性等に優れた木造住宅) - 家庭用燃料電池システム導入支援事業補助金 最大4万円+α
(エネファーム設置)
まとめ
現在、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量は世界的な問題となっており、住まいに対しても省エネに関するさまざまな補助が国によって用意されています。
フルリフォームは、廃材を減らせるためゴミの削減につながるほか、構造材を再利用することで木材などの天然資源の節約にもつながります。このように、中古物件をリフォームすることは、予算面だけでなく地球環境にもさまざまなメリットがあります。
フルリフォームにすることで建て替えよりも費用を抑えられたぶん、キッチンなどこだわりのある一部のグレードを高くするなど、リフォームだからこそこだわれる部分もあるのではないでしょうか。
建て替えか、リフォームか。その判断基準はさまざまですが、じっくり比較検討し、納得のいく住まいが実現できるとよいですね。