これからのライフステージのための一軒家リフォームのポイント

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住宅の取得は、家庭を持って家族が増える30代に需要が増えるといわれています。そして、50代になると、子どもが成長して独立。夫婦二人だけの生活になる世帯が多くなるというのが一つの傾向と言えるでしょう。

また、この頃には住宅の損傷や経年劣化が目立つようになり、リフォームが必要な時期となります。

リフォームを実施する際は、これからのライフステージに合った間取りの変更と共に、夫婦の将来にも配慮したプランを検討することが大切です。

50代は一軒家のリフォーム実施に最適な時期

50代でリタイヤ後の生活のことを考えるのはいくらなんでもまだ早い、とお考えの人も多いのではないでしょうか。確かに、現在の50代は体力・気力ともにまだまだみなぎる働き盛りの世代です。しかし、体力や気力が充実している50代だからこそ、早めに将来を視野に入れたリフォームが得策です。

一軒家をリフォームするには、リフォームプランの立案、施工業者の選定・打ち合わせ、リフォームの準備や後片付けなど、相当な体力と気力が必要になります。先延ばしにするほど、心身への負担も大きくなっていくため、50代はリフォームを実施する最適な時期と言えるでしょう。

――と、ここまでお読みになった方のなかには、「いまの住環境が気に入っているから、リフォームなんて必要ない」と考える方もいるかもしれません。しかし、高齢者の事故は、外出先よりも家庭内で多く起きています。

内閣府が発表した「平成30年版高齢社会白書」によると、65歳以上の家庭内の事故は全事故の77%以上を占めています。事故は家庭内で起きているケースが圧倒的に多いのです。

内閣府「平成30年版高齢社会白書(https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2018/html/zenbun/s1_2_4.html)」図1-2-4-2を基に作図

「転ばぬ先の杖」という言葉のとおり、事前の備えに早過ぎるということはありません。
住宅の構造や設備が老朽化している場合は、家庭内事故につながる可能性はさらに高まる心配があります。早めの対策で安心と安全を手に入れましょう。

50代からのリフォームで注意したいポイント

50代からのリフォームは、以下3つのポイントに注意してプランニングすると良いでしょう。

生活動線やスペースの見直し

最初に考えたいのは、子どもの独立にともない不要になった部屋やスペース、生活動線などを見直すこと。

使わなくなった部屋を夫婦二人がそれぞれの趣味を楽しめる部屋にしたり、ウォークインクローゼットや納戸として活用したり、隣り合う部屋同士の壁を除いて1つの大きなスペースにしたりすることが考えられます。これからのライフプランに合わせた間取りの変更と共に、できるだけシンプルで無駄のない生活動線を確保し、暮らしやすい住まいをつくりましょう。

安全性

年齢を重ねるにつれ、視機能や下肢機能の低下が目立つようになります。
わずかな段差につまずいて転倒することも多くなり、転倒によって寝たきり生活につながるケースも多く見られます。

リタイヤ後を視野に入れた安全・安心な生活空間をつくるには、段差の解消が不可欠です。また、視機能の低下を補うために照明器具の見直しも検討材料に入ってくるでしょう。

さらに、入浴中の事故の発生要因に挙げられているヒートショックの防止対策も重要です。
消費者庁によると、入浴中の溺死者は75歳以降の割合が非常に多く、10年前と比べて増加傾向にあることが分かります。

消費者庁「News Release 平成30年11月21日(https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_009/pdf/caution_009_181121_0001.pdf)図3を基に作製

ヒートショックは、家の中の温度差が引き起こすといわれており、特にトイレや脱衣所・浴室などに対策が必要です。

快適性と省エネ性

内閣府の調査によると、「高齢者の8割は現在の住居に満足しており体が弱っても自宅に留まりたい人が多い」という結果が出ています。その一方、6割以上が「住宅の老朽化や傷み」を、3割以上が「住宅の構造や設備が使いにくい」を住宅への不満として挙げています。

内閣府「平成30年版高齢社会白書(https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2016/html/zenbun/s1_2_6.html」図1-2-6-1を基に作図

以上のことから、将来をより快適な住まいで過ごすためにも、リフォームの際は使いやすい設備や構造に交換・変更していくことが必要になります。

さらに、家で過ごすことが多くなるリタイヤ後は居室などの断熱性能を向上させ、夏の暑さ対策、冬の寒さ対策も重要です。断熱性能を向上させることで、必然的に省エネにもつながります。

スペース別リフォームの具体例

ここでは、リフォームする際の具体例をスペース別に解説します。

居室

下図のとおり、家庭内事故の発生場所で最も多くなっているのが居室です。夜中トイレに行くときなどに転倒するケースが多いことが一因になっていると思われます。将来的には、ベッド周辺に手すりの設置が必要になるケースも考えられますので、予め検討しておきましょう。
また、滑りにくい床材への交換や軽い動作で開閉が可能な建具への交換(ドアから引き戸へなど)も検討する必要があります。
さらに夜中に移動しやすいように、フットライト(足元灯)の設置も必要です。

内閣府「平成30年版高齢社会白書(https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2018/html/zenbun/s1_2_4.html図1-2-4-2を基に作図

LDK

キッチン設備の老朽化にともない、新しい設備に交換する必要が生じてきます。

キッチン設備を選ぶポイントは、IH調理器など安全性が高い機能(汚れにくくお手入れがしやすい、操作がシンプルで簡単、ワークトップの高さが自分の体に合っている)を目安にして選びましょう。また、高い位置にある吊り戸棚は踏み台などが必要になり、転倒の危険があるため、昇降式吊り戸棚がおすすめです。
さらに、食品などの買い置きなどが多くなるキッチンは乱雑になりがちです。片付けがしやすくなるパントリーの設置なども検討してみましょう。

リビング空間は生活の中心となるスペースですが、リタイヤ後はさらに長い時間を過ごすことになります。より快適性を向上させるリフォームを検討しましょう。
例えば、床暖房設備の導入やインナーテラスやデッキを設置してリビングと庭とをつなげる第二のくつろぎ空間をつくるプランは、より一層快適な空間が広がるきっかけになります。

 

脱衣所・風呂

家屋の北側に配置されることの多い風呂や脱衣所などは、家の中の温度差が非常に大きくなる場所です。ヒートショック防止対策として、暖房器具の設置や風呂場に窓がある場合は断熱窓・断熱サッシに取り替えるなどが有効です。また、近年はヒートショックを防止するために断熱仕様のユニットバスなども登場しています。お住まいの地域や家の条件に合わせて検討してみましょう。

トイレ

トイレは夜中に利用することも多いため、寝室に近い場所が理想です。寝室から遠い場合は寝室の押入れやクローゼットをトイレにリフォームすることも可能です。

トイレも段差の解消は不可欠ですが、注意したいのが内開きのドア。万が一トイレで倒れた場合、内開きのドアは外から助けることが難しくなります。開閉のしやすい引き戸に交換しましょう。
また、室内との温度差が大きい場合は暖房器具の設置も必要です。暖房機能の付いたシャワートイレなども登場しているので、この際検討してみてはいかがでしょうか。

玄関・廊下

玄関の仕様は家庭によってさまざまですが、玄関土間と上がり框との段差が大きい場合は、手すりや、段差を分割するための式台を設置すると負担が軽減されます。また、廊下が狭い場合は、可能ならば万が一に備えて幅員を広げておくとよいでしょう。

まとめ

50代からのリフォームは、加齢と共に増加する家庭内事故を防ぐことを念頭に検討するとよいでしょう。
リタイヤ後の生活なんて現在は想像もつかないと思いますが、元気なうちからの備えは、将来の安心・安全で快適な住まいづくりにつながります。

将来の暮らしをイメージしながら、ご自身やご家族に合った住まいづくりを今からじっくり計画してみてはいかがでしょうか。