転倒事故を防止しよう! 高齢者が安全に暮らせる自宅リフォームの考え方

暮らし・住まい

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高齢者が転倒事故を起こす場所は意外なことに、住み慣れているはずの「自宅」が一番多くなっています。住宅内事故を防ぐために、安全対策を講じておきましょう。

この記事の監修

矢口ミカ

複数のメディアで執筆中です。宅建の資格を活かし、家族が所有する投資用不動産の入居者管理もしています。住まいに関する資格である整理収納アドバイザー1級、福祉住環境コーディネーター2級も取得済みです。趣味は整理収納と料理。

消費者庁によると、「65歳以上の高齢者が自宅で転倒した」という事故情報は、令和2年までの5年間で275件寄せられているそうです。また、後期高齢者と呼ばれる75歳以上では、65歳~74歳までの前期高齢者と比べて2.2倍も多く事故にあい、そのうち通院や入院をするほどの大きなケガを負った人は8割以上にのぼっています。(※1)

今回は、高齢者にありがちな住宅内事故について解説します。家庭内の思わぬ場所が危険な場所になっているかもしれません。これを機会に、いま一度確認しておきましょう。

転倒事故の約半数が住み慣れた自宅で発生

消費者庁のデータによると、高齢者が転倒事故を起こす場所は意外なことに、住み慣れているはずの「自宅」が一番多くなっています。その数はなんと48%。次に多い「一般道路」(23%)の2倍も多く発生しています。

消費者庁ニュースリリース「10(てん)月10(とう)日は「転倒予防の日」、高齢者の転倒事故に注意しましょう!(令和2年10月8日)

住み慣れた自宅であっても安全対策には気を配らなければなければならないことがうかがえるデータです。ここでは、「家の中で特に気を付けたい場所」「ケガの原因」について解説をします。

1.「浴室・脱衣所」での事故が一番多い

下図は、自宅内における「場所別事故件数」を表したグラフです。

消費者庁「10(てん)月10(とう)日は「転倒予防の日」、高齢者の転倒事故に注意しましょう!

もっとも多いのは「浴室・脱衣所」(27件)での事故です。「浴室・脱衣所」は冬場におけるヒートショックで倒れるケースがよく見られます。急激な温度差による身体への悪影響だけでなく、転倒事故による大ケガにも気を付けたい場所です。

2.事故の原因は?

事故は、「滑る」「つまずく」など足元を起因とする事故が多いようです。

消費者庁News Release 令和2年10月8日「10(てん)月10(とう)日は「転倒予防の日」、高齢者の転倒事故に注意しましょう!

消費者庁は、高齢者の事故の具体例として、以下のようなものを挙げています。

「自宅にて、入浴中に足を滑らせて転倒した。バスタブで左脇腹を打撲し、痛みが強いために受診。」
「夜間、自宅のベッドからポータブルトイレに移動の際に誤って転倒した。足の痛みで動けなくなり、朝になっても改善しないため救急外来を受診。診察の結果、大腿骨骨折で入院。」
「階段を降りている際に左足首をひねり、そのまま2、3段降りたところ、バランスを崩して左側の手すりに頭部を打撲。出血が多く、救急搬送された。」

引用:消費者庁News Release 令和2年10月8日「10(てん)月10(とう)日は「転倒予防の日」、高齢者の転倒事故に注意しましょう!

これらは特別な場所で起きたものではありません。普段の生活動線のなか、ふとしたはずみでからだのバランスを崩し、思いがけない大事故へとつながるケースが後を絶ちません。

高齢者の住宅内事故を防ぐには

高齢者が住み慣れた自宅で安全に暮らすには家族の注意に加え、転倒を回避するための配慮が必要となります。また、事故はいつ発生するかわかりません。万が一、転倒・転落事故が発生した場合には、どのように対処をすればよいのか確認しておくようにしましょう。

高齢者を守るには、普段から「生活環境」「身体の状態」の2点に注意を払う必要があります。

生活環境を確認

まずは、高齢者の生活環境を確認しましょう。段差やつまずきの原因となるものなど、高齢者にとって危険な場所を減らすようにします。
転倒しても大ケガに至らない対策として、下記が挙げられます。

  • 浴室や脱衣所には、滑り止めマットを敷く
  • 電気製品は、電源コードが通り道にこない場所に設置する

そもそも家の中の構造に問題がある場合は、バリアフリーなどのリフォームで対応することも必要です。段差のあるところや階段、玄関に手すりや滑り止めを設置しておくと、事故の発生を防げます。

身体の状態を確認

身体機能が衰えてくると、ささいなことでも事故が起きやすくなります。たとえば、視力の低下によって薄暗がりのなか、階段を踏み外してしまうことも考えられます。転倒につながりやすい特定の疾患を持っている場合は特に注意しましょう。
そのためには、日頃から高齢者の身体の状態について知っておくことが必要です。身体機能を維持するためにも、無理のない範囲で適度な運動を続けることもおすすめします。バランスの良い食生活も重要です。また、持病の薬を服用している方は副作用にも気を付けましょう。睡眠薬、高血圧薬、糖尿病薬などを服用した後に、副作用でふらつきや立ちくらみを起こし転倒する場合もあります。ベッドから起き上がるときや体勢を変えるときは、慎重にすることを心がけてください。

高齢者向けのリフォームに利用できる補助金・減税制度

住み慣れた自宅で安全に暮らすためには家のバリアフリー化を行うことも大きな手立てとなり、QOL(生活の質)の向上につながります。
ここでは、高齢者向けのリフォームをする際に利用できる補助金制度や減税制度について解説します。

1.介護保険からの補助金

要介護認定を受けている場合は、介護保険制度の補助金を利用できます。たとえば、自宅に手すりを取付ける場合の工事費などが対象です。実際にかかったリフォームの9割相当額が償還払いで支給されます。

支給限度基準額はひとりにつき生涯20万円までが基本です。ただし、「要介護状態区分が重くなる」「転居した」などの場合は、再度20万円までの支給限度基準額が設定されます。したがって、ケースによっては複数回利用できるのがメリットです。

なお、利用できる住宅改修の種類には以下のものがあります。(※)

  1. 手すりの取付け
  2. 段差の解消
  3. 滑りの防止、移動の円滑化等のための床材または通路面の材料の変更
  4. 引き戸等への扉の取替え
  5. 洋式便器等への便器の取替え
  6. その他1~5の住宅改修に付帯して必要となる住宅改修

2.自治体からの助成金

自治体が主体となって、高齢者向けのリフォーム助成金を支給する制度もあります。条件は市町村によって異なります。介護保険と合わせて使える場合もあります。

3.バリアフリーリフォーム減税制度

高齢者向けのリフォームを行うと、所得税や固定資産税などが減税される制度があります。

所得税の特別控除

一定のバリアフリー改修工事を行うと、一定額をその年分の所得税額から控除できる制度です。要件に該当する工事で、補助金等の額を引いた後の工事費用で50万円を超えるものが対象となります。
適用期限は令和3年12月31日です。所得税の控除措置は「投資型減税」と「ローン型減税」の2種類です。償還期間が一定期間以上の住宅ローンを借りた場合は「ローン型減税」が利用できます。

固定資産税の減額

一定のバリアフリー改修工事を行うと、工事が完了した年の翌年度分の住宅に課税される固定資産税が減額される制度です。申請する際には居住する市区町村に問い合わせ、必要書類を用意します。
減額されるのは、住宅の100㎡相当分にかかる固定資産税額の3分の1です。工事完了後から3カ月以内に申告する必要があります。対象となるのは新築から10年以上経過しており、改修工事完了期間が令和4年3月31日までの住宅です。

一般社団法人 住宅リフォーム推進協議会「バリアフリーリフォーム編|1 - 1. バリアフリーリフォームの減税制度」の情報を基に作表

まとめ

自宅で転倒・転落をする高齢者の事故は年々増加しており、救急搬送者数も死亡者数も少なくありません。また、骨折や頭部損傷などの重大なケガを引き起こし、そのまま寝たきりになるなど介護状態に陥ることもあります。
高齢者の住宅内事故を防ぐために、安全対策を講じておきましょう。