「健康寿命」を延ばすためのリフォームとは

暮らしの豆知識

老後の暮らしに配慮し、健康寿命を延ばすリフォームについて考えましょう。

日本における平均寿命は延び続け、今では人生90年に手が届こうとしています。

誰もが願っているのは、年をとってからも長い間、元気に活き活きと過ごせること。そのために必要なのは、自立して暮らせる「健康寿命」を延ばすことです。

年齢を重ね体力が落ちてきたとき、今の住まいで身の回りのことや家事は問題なく行えるでしょうか。50代をすぎたら、老後の暮らしに配慮し、健康寿命を延ばすリフォームについて考えましょう。

日本人の「平均寿命」と「健康寿命」

「健康寿命」とは、介護や支援などを必要とせず、自立して生活できる期間の平均値です。 内閣府の資料(※1)から日本人の平成28年度の平均寿命と健康寿命を紹介します。

内閣府「平成30年版高齢社会白書(全体版)」図1-2-2-4のデータを基に作図

平均寿命と健康寿命の差は、男性で約8.84年、女性で約12.35年。
つまり介護や支援が必要な期間が、平均で約8〜12年あるということです。

健康寿命を延ばすリフォームのポイントは4つ

健康寿命を延ばし、いつまでも元気に過ごすためには、今からどのようなことができるのでしょうか。

もちろん食事や運動などに気をつけることも大切ですが、体力や気力がある今のうちにぜひ取り組んでいただきたいのが「住宅環境を整える」ことです。

50代を過ぎると、子どもの独立や定年退職、親世代の介護や同居など、ライフスタイルにも大きな変化があります。それと同時に長年暮らしてきた住まいも傷みが目立ちはじめ、リフォームが必要な状態になっていることに気づきはじめます。

50代以降のリフォームでは、健康寿命を延ばすためのポイントを押さえ、年を重ねても元気で自立して暮らせる住まいにしていきましょう。

ポイント1「温熱環境の改善」でヒートショックを防ぐ

最近、耳にすることが多くなった「ヒートショック」。
温度差によって血圧が急激に上下することで、心臓や脳の血管にダメージを与える現象です。心筋梗塞や脳卒中など、命に関わる病を引き起こすこともあります。

・入浴中のヒートショックに注意

特に気をつけたいのが、冬場の入浴中の事故です。「暖かい部屋から寒い脱衣所へ、そして服を脱いで寒い浴室へ行き、湯船で熱いお湯につかる」といったように、大変温度変化が激しくなります。急激な血圧の変化で失神して転倒したり、浴槽で溺れてしまったりと、大きなケガや事故につながることも。

消費者庁の資料(*2)によると、家庭の浴槽での溺死者数は年々増え、2014年は4,866人に。これは10年前の2004年と比べ、約1.7倍にも上ります。事故は冬季に多く、12月から2月にかけて全体の約5割が発生しています。55歳以上が占める割合は、なんと96%。 高齢者になると、日頃いくら元気でも血圧の変化を来しやすいため、注意が必要です。

・温熱環境改善リフォームで室温のムラをなくす

冬場は、廊下や浴室などが寒いと感じることはないでしょうか。 ヒートショックを防いで健康を守るためには、家の中の温度を均一に保つことが大切です。

国土交通省の資料(※3)によると、室内のヒートショック防止策として要求される環境性能は、部屋同士であれば、冬季の温度差は3℃以内に収めること、洗面所、浴室、トイレであれば、常時20℃以上に保つこととされています。

温熱環境改善リフォームで家の断熱性能をアップさせると、冬の寒さだけでなく、夏の暑さからも家を守ってくれるため、夏は涼しく冬は暖かい住まいとなります。

ポイント2「ユニバーサルデザイン」で安心して暮らせる住まいに

高齢者が要介護となる大きなきっかけの1つが、骨折や転倒です。

内閣府の調査(※1)によると、65歳以上の要介護者の「介護が必要となった主な原因」の4位に「骨折・転倒」(12.5%)が挙がっています。

若いうちは段差につまずいても、バランスを立て直して転倒を防ぐことができます。しかし、高齢になると反射神経やからだの動き、視力などが衰えてきます。つまずいたりすべったりしたとき、とっさに反応することができなくなってくるのです。骨がもろくなり、ちょっとした転倒でも骨折しやすくなる方も多く見られます。

まずは1日の大半を過ごす家を安全なつくりにし、転倒や骨折を防ぎましょう。

安全な住まいづくりの基本となるのが、年齢・障害・体格・性別などに関わらず、多くの人が利用しやすい「ユニバーサルデザイン」の考え方です。
誰もが使いやすい住宅にしておくことで、年齢を重ねても安全で快適に暮らすことができます。

・小さな段差をなくす

室内や入り口などの大きな段差をなくすのは一般的になってきましたが、これと合わせて改善しておきたいのが、つまずきの原因となる「小さな段差」です。

年をとると目も見えにくくなるため、小さな段差は見落としがちです。
浴室と脱衣所の間、畳とフローリングの境目、入り口や引き戸のレールなど、気づきにくい小さな段差ほどフラットにしましょう。

・開き戸から引き戸へ

開き戸はドアを開けるときに一歩後ろに下がる必要があるため、引き戸の方が動作が安定しやすいでしょう。
レール不要の吊り戸にすると、つまずき防止にもなります。

・手すりの下地補強

階段や玄関の段差、廊下などに手すりがあると、足腰が弱くなったときの移動をサポートしてくれます。
手すりを設置するには、壁の裏の下地補強が必要です。今すぐ手すりが不要な場合も、リフォームを機に下地補強だけでも行っておくと、将来すぐに手すりを取り付けることができます。

ポイント3「空気環境改善リフォーム」で健康に

人は毎日たくさんの空気をからだに取り込んでいます。1日のうち家で過ごす時間が長くなるシニア世代は特に、住宅内の空気環境が大切となります。

・シックハウス症候群を防ぐ体に優しい建材の使用

シックハウス症候群は、新築やリフォームなどをきっかけに、目がチカチカする・せき・鼻水・めまい等の症状に悩まされる健康被害です。

この原因となるのが「ホルムアルデヒド」という化学物質で、壁や天井、フローリングなどの建材・内装材に含まれることがあります。

ホルムアルデヒドを抑えたからだに優しい建材や内装材を使うことで、健康被害を防ぐことができます。

・空気循環を良くしてきれいな空気を取り込む

空気中に含まれるほこり・ダニ・カビ・花粉などの物質も、アレルギーや気管支喘息といった健康被害を引き起こすことがあります。

特に最近の住宅は気密性が高いため、空気の循環を良くして、汚れた空気が室内に滞らないようにすることも必要です。

窓を開けて換気する以外に、常時換気システムなどの設備を導入する方法もあります。換気することで、結露対策やカビ防止にもなります。

ポイント4「安全・快適な間取り」で長い間自立した生活を

今の住宅は、体力が衰えてからも、風呂やトイレ、家事などの日常生活を問題なく送ることができるでしょうか。自立した生活を送っていくため、体力が衰えたときのことを想定した間取りにしておきましょう。

・生活動線や家事動線を短く

年をとってからは、広々とした家よりも、コンパクトな動線で生活できる間取りのほうが暮らしやすくなります。階段の上り下りは足腰が弱くなると一気に辛くなるため、ワンフロアで暮らせる間取りや、ホームエレベーターの設置等を検討すると良いでしょう。

キッチンや洗面所、風呂などの水回りを一カ所にまとめると家事が行いやすくなります。一戸建てでは、1階で洗った洗濯物を2階の干し場まで運ぶような動線も見られますが、今後はなるべくなら移動の少ない間取りプランを立てましょう。また、寝室とトイレを近くにしておくと、夜中のトイレも安心です。

・体力低下を助けてくれる便利な住宅設備

最近は、家事を手助けしてくれる便利な住宅設備も多く出ています。例えば、汚れがつきにくいトイレや、自動で洗浄してくれるバスタブ、ゴミが勝手に流れるシンクなどが挙げられます。
地震時や消し忘れ時に自動でオフしてくれるブレーカーやコンロなども事故を防いでくれて安心です。
このほか、乾燥まで一気に行えるドラム式洗濯乾燥機や、自動で掃除をしてくれるロボット、食器洗い機など、最新家電の使い方を今から覚えておくのも良いでしょう。

・出し入れしやすい収納計画でスッキリ暮らす

スッキリとした住まいにするには、簡単に物を出し入れできる、たっぷりとした収納を設けておくと良いでしょう。
年を重ねると高い場所の収納は台に上るのが危険で、低い場所の収納も膝や腰に負担がかかります。よく使うものは腰から顔の前くらいの手が届く範囲にしまうのがおすすめです。

タンスや棚などの家具は「でっぱり」ができるため、つまずき防止の点からいってもたっぷりとした作り付けの収納は有効です。

まとめ

まだまだ元気な50代や60代のうちは、「体力の衰え」や「高齢者」といった言葉はリアリティがなく、先のことだと思うかもしれません。
しかし、ちょっとした段差につまずいたり、家事が辛くなったりする日は、誰にでもくるものです。

ぜひ体力のある今のうちに、10年、20年、30年後のことを考えて、いつまでも健康に暮らせる家づくりをしておきましょう。

出典

(※1)内閣府 平成30年版高齢社会白書(全体版)
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2018/html/zenbun/s1_2_2.html

(※2)消費者庁
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/release/pdf/160120kouhyou_2.pdf

(※3)国土交通省
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/torikumi/kenkozoushin/H23/120316_shiryou06.pdf

※ 一般社団法人 環境共創イニシアチブ 長期優良住宅化リフォーム推進事業
http://www.mlit.go.jp/common/001180895.pdf