高齢者の転倒を防止しよう! 家庭で見直したいポイントを紹介

身体のこれから

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親が高齢になってくると、心配ごとが増えてきます。中でも気になるのが、転倒ではないでしょうか。年を重ねると、人はどうしても転倒しやすくなります。
そこでこの記事では、高齢者はなぜ転倒してしまうのかを解説し、ちょっとした工夫で転倒によるケガを防止できる方法について説明します。
転倒予防のためにできることから始めてみましょう。

高齢者はなぜ転倒しやすい?

消費者庁資料『御注意ください!日常生活での高齢者の転倒・転落!』のグラフを基に作図

上記のグラフは転倒・転落事故による救急搬送数を年代別に示したものです。
75歳を超えた頃からその数は急激に増え、またケガの程度も重くなっていくことが読み取れます。人間は年を重ねると、さまざまな要因から転倒しやすくなるのです。
ではなぜ、高齢者は転倒をしてしまうのでしょうか。その要因は、大きく分けて「内的要因」と「外的要因」の2種類に分けられます。

内的要因

内的要因とは、本人のからだの状態による原因です。
筋力や視力、運動能力やバランス能力の低下といったからだの衰え、服用している薬の副作用によるふらつきや眠気などによるものが例として挙げられます。また、そのからだの状態を正しく把握せずに油断していると、転倒のリスクはさらに高まります。

外的要因

外的要因とは、環境による原因です。
たとえば、階段や段差といったつまずきやすい場所や濡れたフロア、道路などの滑りやすい場所が挙げられます。ほかにも、靴が合わなかったり歩行器のブレーキが故障していたりなど、分かりにくい場所にも外的要因は潜んでいます。

転倒は、内的要因と外的要因が重なることでリスクが高まっていきます。そのため、転倒を予防するためには、内的要因と外的要因の両方を把握しておくことが大切です。

転倒を予防するための対策をとろう

消費者庁資料『御注意ください!日常生活での高齢者の転倒・転落!』のグラフを基に作図

上記円グラフによると、高齢者の介護が必要となった原因のうち、12.5%が「骨折・転倒」によるものとされています。ここには、一度の転倒でそれまで元気だった両親が、ある日突然、要介護の状態になることも十分にあり得ることを示唆しています。
両親の健康を守り、快適な暮らしを少しでも長く続けてもらうために、転倒の要因となるものはできる限り無くさなければなりません。
まずは、本人とその家族が、本人の体調や服用している薬のことを日頃から十分に把握するように心掛けましょう。体調や薬のことをある程度把握しておけば、対策はとりやすくなります。

そして、家庭の環境を整えることで安全性を高めることができます。大きなリフォームをしなければいけないというわけではありません。ちょっとした対策をするだけで、安全性を大きく向上させることができるのです。ここでは、その対策をいくつか紹介します。

手すりを取り付ける

段差がある場所や長い廊下、立ち座りする場所などに手すりを付けることで、安全性を高めることができます。転倒しにくくするだけでなく、膝の負担も軽減できるので、健康状態を保ちやすくなるのもメリットです。さらに、「転んでしまうかもしれない」という精神的な負担も減らすことができます。
強度が低い壁、そもそも壁がない場所には、据え置き型の手すりを取り付けることができます。

据え置き型であれば、場所を選ばずに設置できます。画像は玄関の上がり框(かまち)用の手すりで、ネジを使って固定しています。据え置き型の手すりはほかにもさまざまな形状があります。ソファに寄せて設置したり、部屋の出入り口に設置したりと、自由に設置することが可能です。
なお、手すりの取付工事は、介護保険を適用できます。ただし、据え置き型はレンタルの場合に適用、購入は不適用などさまざまな条件があるので、詳細は自治体に相談してみるとよいでしょう。

スロープを取り付ける

段差にスロープを設置することで、つまずくリスクを軽減できます。工事で取り付ける方法や画像のような据え置き型を使う方法があります。
スロープを設置するメリットはつまずきにくくするだけではありません。シルバーカーを快適に使えるようになる点も魅力です。シルバーカーの車輪は小さいので、段差の高さによっては車輪が引っかかり、乗り越えることができません。そのため、段差を越えるたびにシルバーカーを持ち上げる必要がでてきてしまい大変危険です。
スロープを設置することで、これらの問題を解決できます。
なお、スロープの取り付けは、工事の場合は介護保険を適用できます。据え置き型は、レンタルの場合は適用、購入の場合は不適用となっています。

浴室の環境を整える

浴室は転倒のリスクが高い場所です。濡れているので滑りやすく、また立ち座りや浴槽のまたぎといった動作が必要になるからです。浴室の転倒防止対策は入念に行うことをおすすめします。

出入口や浴槽の近くに手すりを設置すればからだの支えとなり、滑りにくくなります。また、立ち座りやまたぎの動作が必要になる場所には縦、導線となる場所には横に設置するとうまく力が入るので、からだの負担を軽減することができます。
手すりのほかにも、以下のような対策も有効です。

シャワーチェア、滑りにくい床

高齢者向けのシャワーチェアは非常におすすめです。一般的に浴室で使われている小さなイスは、立ち座りの際に脚に負担がかかりますが、シャワーチェアであれば立ち座りがしやすい高さに座面を調整できるため、脚にかかる負担が少なくなります。さらに肘掛けもついているので、立ち座りの補助となり、移動する際の支えにもなります。
また、床を画像のような滑りにくい素材に変更するのもよいでしょう。工事ができない場合は、滑り止めマットを敷くのも方法のひとつです。滑り止めマットは床だけでなく浴槽内にも設置することができます。

バスボードの利用

浴槽の両縁に渡すように載せて使う「バスボード」もおすすめです。浴室に入る際には、一旦バスボードに腰を掛け、からだが安定した状態で浴槽に入ることができるため、浴槽をまたぐことで発生する、転倒リスクや不安感を軽減できます。座面が回転するバスボードは、より楽に浴槽に入ることができるので、からだへの負担を考え、選ぶとよいでしょう。

なお、手すりの取り付けをはじめ、シャワーチェア、バスボードの購入、滑りにくい床への変更は、介護保険が適用されます。ただし、滑り止めマットの購入は、不適用です。

トイレの扉を開き戸から引き戸に変更する

トイレの扉が開き戸であれば、引き戸に変更するのもよいでしょう。
開き戸は開閉の際にからだを前後に移動する必要があるため、転倒のリスクが高まります。また、シルバーカーや歩行器を使っている場合は身動きが取りづらくなります。
引き戸に変更することで、そういったリスクや不自由さを軽減できます。ドアノブを掴んで回すという動作もないので、握力が弱っていても負担なく開け閉めできます。
なお、開き戸から引き戸への変更は、介護保険が適用されます。

滑りにくい床材に変更する

滑りやすい床は転倒の原因になります。浴室だけでなく、リビングや廊下などの床も滑りやすいようなら、床材の変更は検討対象になるでしょう。
カーペットを敷く方法もありますが、毛足が長いものやズレやすいものはかえって転倒のリスクを高めてしまうことがあります。カーペットを敷く場合はたるみのないように敷き、ズレないように固定することを心掛けましょう。また、床とカーペットの段差につまずくことのないように、できれば床の面積にぴったりと合うように形を調整しましょう。
なお滑りにくい床材への変更は、介護保険が適用されます。ただし、カーペットを敷くだけでは適用になりませんが、金具などで固定することで適用可能となることがあります。
いずれも詳細は、自治体などに問い合わせてみるとよいでしょう。

できることから始めましょう

転倒のリスクはできる限り早期に減らすことを心掛けましょう。一気に環境を整えることが難しい場合でも、できることから始めてみてはいかがでしょうか。
また、杖やシルバーカー、介護シューズといった福祉用具を利用するのもおすすめです。介護用品専門店にはアドバイザーがいるので、からだの状態に合う福祉用具を選んでもらいましょう。

最初からすべてを完璧にしようとすると、本人だけでなく一緒に住んでいる家族も負担になるものです。介護保険制度などを上手く活用し、ひとりで抱え込まないようにしましょう。
「このくらいのことで相談してもいいのかな?」と気にする必要はありません。少しでも悩みごとや困りごとが生まれたら、まずは行政の窓口に気軽に足を運んでみてはいかがでしょうか。