【建築士が解説】住まいのリフォーム 設計士選びのポイントは? 何を判断すればいい?

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設計はリフォームの要でもあるため、担当者の実力や人柄、相性などの不安も大きいものです。リフォームの設計は新築とは違い、既設の状態やリフォームの範囲など、工事やプランニングにさまざまな制限がかかります。移設ができない給排水管、狭いスペースなど難しい条件下でどのようなプランを打ち出せるのかは、リフォームの大きなポイントのひとつです。そのため、部分リフォームであっても設計者の善し悪しはとても重要でしょう。

今回は、現役の建築士がおすすめする設計者選びのポイントをご紹介します。

リフォーム会社で選ぶべきか、設計士で選ぶべきか

住宅リフォーム推進協議会「住宅リフォーム潜在需要者の意識と行動に関する調査 第 11 回 調査報告書|P73 2-6-1 リフォーム工事の依頼業者(3つ以内で回答)」を基に作図

住宅リフォーム推進協議会の調査によると、リフォームの依頼先で多いのは、「大工・工務店」「住宅・建設会社」です。工務店やリフォームメーカーでは、多くの場合がプランニングから工事までを一括で請け負います。

建築工事では各工程に担当者がつくため、相談や手続きは営業担当者、プランニングは設計者、工事は施工担当者、というように複数人の担当者が関わるものです。これらの担当者は、リフォームの規模や内容に合わせてリフォーム会社が適任者を選任するため、基本的には設計者を自由に選ぶことはできません。相見積もりなど、他社とプランを比較する中で、どの設計者のプランが良いかを比較し、最終的に一番良いプランを出してくれたリフォーム会社を選ぶことになります。つまり、『設計者を選ぶ=リフォーム会社を選ぶ』ということになるでしょう。もし、設計者を指名してリフォームを依頼したい場合は、紹介を受けたり、過去の施工事例から担当設計士を指名したりすることが考えられます。最初の相談時に、希望する設計者に依頼できるかを相談してみましょう。

設計者のどんなところをチェックすべきか

(引用)リフォーム住まい博 リフォーム住まい博の様子  住友林業のリフォーム

設計者選びではどんなところに注目したらよいのでしょうか。一般的なチェックポイントと、建築士目線でのチェックポイントをご紹介します。

一般的なチェックポイント 

「プランニングが上手か」「センスがいいか」などは設計者個人の得意分野や依頼者の好みによっても異なります。そのため、複数のリフォーム会社のプランや対応を比較して、どのプランが自分たちに合うのかを選ぶと良いでしょう。
リフォームでは、リフォーム前の構造や配管が大いに影響することや、限られた面積に収めなくてはならないなどのハードルがあるため、すべての要望を実現できないことも多々あります。そうした場合にも、専門家としてさまざまな提案をしてくれる設計者であれば、打ち合わせはスムーズに進みます。
なお、要望はプランニングするうえでとても大切な情報です。要望のひとつひとつの扱い方や、質問への対応などからも、信頼できる相手かどうかを判断しましょう。

建築士がおすすめするチェックポイント

リフォーム工事で設計者が担当するのは主にプランニングであり、これはリフォームの工程の、あくまでも一部でしかありません。事務手続きや施工で各担当者への引継ぎ漏れや伝達ミスがあると、大きな失敗につながってしまいます。そのため、工事担当者や施工業者との連携も非常に重要なチェックポイントです。担当者同士でちゃんと情報が共有できているかどうか、チームや社内の人たちへの対応や雰囲気なども、さりげなく見てみましょう。プランに行き詰まったり、分からない項目があったりした場合には、他の設計者や施工担当者にアドバイスを求めることができるような設計者の柔軟性も大切です。
また、打ち合わせでは設計図面を見ながら確認することも多くなりますが、専門的な知識がない限り、図面が正しいかどうかの判断はしにくいものです。設計図面は、実は作成する設計者によってかなり個性が出るもので、ゴチャゴチャしていて見にくい図面や、シンプルすぎて情報が少ない図面など、人によってさまざまあります。作図が上手な設計士は、情報の不足がなく、それでいて見やすい図面が描ける人です。見やすい図面は工事業者にとっても見やすいため、工事現場での見落としや見間違いを防ぎ、スムーズな施工にもつながります。

建築士選びの失敗例

(引用)フリー画像  写真AC

リフォームでは、悪徳業者による被害も残念ながら後を絶ちません。しかし、サービスや実績が確かな会社だからといって失敗がないとは限りません。設計者との相性など、人付き合いの難しさで上手くいかないこともあるでしょう。

ここでは、具体的にどんな失敗があるのか、筆者がよく耳にする設計者選びの失敗例をご紹介します。

設計者のこだわりが強い

最新設備や最新のデザイン、流行や個人的な好みなどを重視したプランニングに偏ってしまう設計者もいます。限られた面積や建築基準法などの制限の中で、こだわりの詰まったプランニングを完成させること自体は、優秀な設計者にしかできないことです。しかし、設計者のこだわりや主観がメインになってしまい、実際の家族の生活には合わない不便な間取りになってしまった、ということは実際起こりうるものです。

設計者からの提案が少なかった

ただ要望どおりにプランニングするだけでは、想定以上の仕上がりにはなりません。設計士は、要望以上のプランを提案できることが理想といえるでしょう。しかし、リフォームの失敗例では「設計士側からの提案がないので、ほとんど自分たちがプランを考えるはめになった」というケースもよく耳にします。たしかに実際に生活する家族がメインとなってプランニングをするのは大切ですが、提案が多い設計者のほうが、よりプランニングがスムーズで選択肢も広がるでしょう。

プランのバリエーションが少ない

プランニングでは、設計者のセンスも影響します。しかし、提案できるバリエーションが少ない原因は、設計者の知識不足というケースが考えられます。これは、過去の実例や実績などがプランニングに活きることが理由として挙げられます。
反対に、過去の施工事例や建築材料、構造などの知識が豊富で、さまざまなデザインやプランにも精通している設計士ならば、バリエーション豊かな提案が可能です。

結局どこで判断するのがよいのか

要望に合ったプランを提案するのは設計者として最低条件であるともいえるため、要望として伝えてないことや、見えない問題点にまで配慮された提案など、プラスαの提案をできるかどうかがポイントとなるでしょう。家族でさえ自覚していなかった問題点に気づいてくれたり、住まいの不便の解消方法を提案してくれたりと、プロとしての役割をしっかり果たしてくれているかどうかを比較してみてください。

工務店では、設計者は同席せず、営業担当者をメインに打ち合わせをすることも実はよくあります。その場合、設計者個人と打ち合わせや話をする機会があまりないため、設計者との相性や、設計者の人柄などはあまり関係がない、ということもあるのです。こうした場合では、設計者を見るのではなく、設計者が作ったプランや図面で判断するしかありません。打ち合わせで伝えたことがきちんと図面に反映されているかどうかや、家族のことをしっかり考えてプランニングしてくれているかなどで判断しましょう。

まとめ

ネットでの評判や口コミは、誤った情報や不確かなことが含まれていることが十分考えられるため、参考にするには信憑性に欠ける部分もあります。口コミを調べたい場合は、身内や近隣で実際にリフォームを行った人に直接聞くことがおすすめです。しかし、口コミもまた、あくまでも参考情報ですので、実際にいくつかのリフォーム会社に相談してみて、自分で確かめてみることが、もっとも確かな判断につながります。リフォームメーカーなどでは、無料相談会やリフォームセミナーを行っているところもあるので、そういった場所に足を運んでみるのも良いでしょう。打ち合わせを進めていくうえでプランに納得できなかった場合や、設計者を別の人に変えて欲しいと感じてしまった場合にどういった対応をしてもらえるのかも、相談会などで質問できます。こうした事前の備えもまた、リフォーム会社選び、設計者選びに役立ってくれることでしょう。