単板ガラスはやっぱり寒い! 窓から考える断熱リフォーム

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住まいの中でも窓は最も熱の出入りが大きい部分であり、近年では断熱性能を高めたさまざまなものが開発されています。しかし、古い住まいは単板ガラスの窓も多く、冬に結露を経験した方も多いのではないでしょうか。
今回は、断熱リフォームの中でも特に大切な窓について解説します。

窓は住まいの中で最も熱が逃げやすい場所

熱は温度の高いほうから低いほうに移動する性質を持っているため、冬期には暖房をしている室内から室外へ熱が逃げていきます。断熱リフォームによって住まいの断熱性能を高めることで、室外へ逃げる熱の量を抑えられ、室内の温度低下を防ぐことができます。逆に夏期は室外から冷房中の室内に熱が入ってきます。断熱性能を高めると、室内に入る熱が小さくなり、冷房の使用を抑えることができます。
断熱リフォームでは壁や屋根、床といった外気に触れる部位に性能の高い断熱材を入れ、断熱性能を高めます。

繰り返しになりますが、住まいのなかで最も熱の移動が大きいのが窓です。壁や屋根に比べて薄い窓は熱の出入りが大きいことは想像がつくかと思います。住まい全体の断熱性能にもよりますが、冬期には住まい全体から室外に逃げる熱の約48%が窓から逃げており、夏期には室内に入る熱の約70%が窓から侵入しています。
この数字を見ても、断熱を考えるうえで窓の重要性がお分かりになるかと思います。

住友林業「持続可能な社会の実現に貢献する住宅づくり 住宅・建築事業」の情報を基に作図

室温・表面温度と体感温度の関係

冷暖房を使用する際に温度設定を行いますが、ここで設定しているのは「室温」であり、部屋の空気温度です。私たちは、この「室温」だけで快適さを考えがちですが、人は部屋の空気温度だけでなく、住まいの外側(壁、窓、屋根、床)の温度からも影響を受けています。この外側の温度を「表面温度」と呼びますが、人が実際に感じる「体感温度」は、この「表面温度」と「室温」の中間温度となるのです。

たとえば、室温が同じ20℃でも、表面温度が10℃の場合の体感温度は15℃、表面温度が18℃の場合の体感温度は19℃となります。このように、冬に窓の近くにいると寒く感じるのは窓の表面温度が低いことによります。

断熱性能の低い窓を使った住まいは外気の影響を受けやすいため「表面温度」が低くなり、「室温」との差が生まれます。「体感温度」が低くなるため、室温を高くしても寒く感じてしまうのです。
また、窓の「表面温度」と部屋の「室温」の大きな温度差は結露の要因にもなります。窓の断熱性能を高めれば温度差が小さくなり結露が起きにくくなるため、カビやダニといったアレルギーの要因の発生を抑制することができます。

国土交通省国土技術政策総合研究所・国立研究開発法人建築研究所監修 一般財団法人建築環境・省エネルギー機構発行「改修版 自立循環型住宅への設計ガイドライン|図2 断熱性能の違いによる室温・表面温度と体感温度」を基に作図

サッシ種類別の断熱性能

窓はガラスとそれを固定するための窓枠、いわゆるサッシによって構成されています。断熱性能を高めるためにはガラスの性能だけでなく、サッシの断熱性能も重要な要素となります。
ここでは、主なサッシの種類を紹介しながら、それぞれの断熱性能やメリット・デメリットについて解説します。

アルミサッシ

現在、多くの住まいで使用されているのが金属のアルミサッシです。アルミサッシはコストが低く、軽くて耐候性が高いことから広く流通しています。
既製品のなかでは最もコストが低く、そこがメリットですが、アルミは熱伝導率(熱の伝えやすさ)が高いため、断熱性能は他の素材に比べて低いことがデメリットです。

樹脂サッシ

プラスチックでつくられたサッシです。アルミに比べると熱伝導率が低く、断熱性能の高いサッシとして徐々に普及しています。アルミサッシに比べるとコストが高くなることがデメリットとして挙げられます。

アルミ樹脂複合サッシ

アルミサッシのコスト性の良さと強度の高さ、樹脂の断熱性能の高さを組み合わせたのがアルミ樹脂複合サッシです。アルミ枠を使いながら、室内側が樹脂でカバーされることで断熱性能を向上させています。断熱性能、コストともにアルミサッシと樹脂サッシの中間となる製品です。

木製サッシ

樹脂と同じく木も熱伝導率が低い素材です。古くから日本では木製の窓が使われてきましたが、アルミのような複雑な加工が難しく、素材自体の断熱性は高いものの気密性の確保が難しいことが難点とされてきました。しかし、現在では気密性を確保した木製サッシが製品化されています。断熱性能の高さに加え、アルミや樹脂にはない独特の温かさを持ちインテリアにも調和しやすいのが木製サッシの特徴です。一方で、メンテナンスが必要であること、コストが高いことがデメリットとして挙げられます。

ガラス種類別の断熱性能

古い住まいの多くは単板ガラス(1枚のガラス)の窓ですが、近年の住宅では複層ガラスが一般的となっています。最近では、より高性能のガラスも製品化されています。
ここでは、種類別に解説します。

複層ガラス

2枚のガラスの間に空気層を設け、断熱性を持たせたガラスです。新築の住宅に使われるガラスとしては一般的になっています。空気層を厚くするほど断熱性能を高くすることができます。断熱リフォームとして窓のリフォームを行う場合は最低でも複層ガラスの使用が必須と言えます。

Low-E複層ガラス

室外または室内のどちらか1枚のガラスに、「Low-E膜」と呼ばれる金属膜をコーティングした複層ガラスです。従来の複層ガラスの性能をさらに向上させた製品です。
コーティングする面によって、その効果が変わってきます。室内側にした場合、断熱効果を高めることができます。日射熱を取り入れる反面、室内の熱を室外に逃がさず閉じ込めることができ、冬型の断熱仕様となります。ガラスの室内側の表面温度が低下しづらいため、結露もしにくくなります。
室外側ガラスにした場合は、遮熱効果が期待できます。コーティングによって太陽光が反射され、日射熱が室内へ侵入することを抑えることができます。
また、空気層にアルゴンガスを用いることでより断熱性能を高めることができます。

Low-Eトリプルガラス

断熱性能をさらに向上させたのが、ガラスを3枚用いることで2つの中空層を設けたトリプルガラスです。Low-E膜を2枚のガラスに用いた製品、1枚のみ用いた製品があります。コストは高いものの、非常に高性能なガラスです。

コストと性能のバランスを見て窓の仕様を考える

サッシとガラスの種類ごとの断熱性能について見てきましたが、高性能の製品になるほど、コストも高くなります。大切なのはコストと求める断熱性能のバランスを考えながら窓の仕様を決めていくことです。
熱の伝わりやすさを表す「熱貫流率」という指標がありますが、これは、数値が低いほど断熱性能が高いことを意味します。各サッシとガラスの組み合わせによる熱貫流率を比較すると、古い住まいに多い単板ガラスほど断熱性能が低いことが分かっています。

マンションでもできる内窓による断熱リフォーム

分譲マンションの場合、窓はアルミサッシが大半です。単板ガラスを用いた物件も多く、サッシは共有部扱いとするマンションも多いことから窓の交換が難しいケースがよく見られます。そのような場合の断熱リフォームの方法として内窓の設置が考えられます。
内窓とは、既存の窓の内側に窓を設置して二重にし、断熱性能を確保することです。既存の窓と新しく取り付ける窓との間の空間が空気層となって断熱効果を発揮します。最近ではアルミや樹脂など、内窓用の既製品も販売されています。

ガラスの部分だけでも交換できるリフォーム手法もあり

サッシ自体を入れ替えるリフォームは、周囲の壁にも影響が生じるため大掛かりになります。そのため戸建ての場合は外壁塗装と一緒に、マンションでも内装リフォームと合わせて行われるケースが多いものです。
ガラス部分だけを交換するリフォーム手法も存在していますので、お近くのリフォーム業者に問い合わせてみるとよいでしょう。

まとめ

断熱リフォームは壁や天井に新たに断熱材を入れるために一度その部位を解体する必要があり、コストの観点からリフォームを諦める方も多く見受けられます。しかし、そうしたなかでも、コストを抑えながら断熱性能を向上させられるのが窓の断熱リフォームです。大きく熱が逃げてしまう窓を見直し、部分的に改善するだけでも快適性は大きく向上します。

現在は、断熱性能を考慮したさまざまな種類があります。自身の住まいや求める性能に合った製品を正しく選択することが、窓の断熱リフォームにおいては大切です。