手を洗う以外の役割も リフォームによる玄関手洗い場の設置を考える

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新型コロナウイルスをはじめ、インフルエンザや花粉などの対策として、まず大切になるのは「家庭内に汚れや菌を持ち込まないこと」です。

帰宅後は、手洗い~使用済みマスクの処分~コートなどの消毒~シャワー(入浴)の対策により、菌の持ち込みを予防したいものです。しかし、帰宅後、手洗いをするまでのあいだにドアの開閉や移動がともなう場合、玄関で手指の消毒を済ませることが理想です。

病院などの医療現場では、感染症対策として「汚染区域」「清潔区域」を区分けする「ゾーニング」を行っています。家庭でもこうしたゾーニングの考えをもとに衛生対策を行うことがおすすめです。「汚染区域」は可能な限り少ない範囲に収める必要がありますが、手洗い場を玄関に設けることで、その区域を小さく留めることができ、廊下を含む住宅の広い範囲を「清潔区域」とすることができます。

この記事では、玄関に手洗い場を設けるにあたって具体的にどのようなリフォームが考えられるのか、順にみていきましょう。

玄関手洗い場が必要な理由は

ウイルスを家庭内に持ち込まないためには、帰宅後のスムーズな手洗いが必要ですが、すでに玄関の近くに洗面所があったり、手洗い場が複数あったりする場合は、増設は考えなくてもよいでしょう。玄関に手洗い場の設置を検討したいのは、以下の状況に当てはまるときです。

  • 手洗い場に行くまでにリビングやダイニングを通過しなくてはならない
  • 手洗い場に行くまでにドアの開閉がある
  • トイレや脱衣場などと同一のスペースに手洗い場があり、家族の使用時は使えない
  • 手洗い場が玄関から遠い

これらに当てはまる場合、手洗い前に家族に接触してしまう、汚れた手でドアノブに触れてしまう、手洗いがすぐに行えないなどの問題が発生します。また手洗い場までの距離が遠い場合も、汚染区域を広げる原因になります。このようなケースには、玄関に手洗い場を増設するリフォームをおすすめします。

玄関の手洗い場計画

それでは、具体的にどのような手洗い場を設ければよいのでしょうか。ここではその一例と、設置にあたってのメリットとデメリットを紹介します。

オシャレに見せる手洗いカウンター

(引用)リフォーム事例 大分県 K邸  住友林業のリフォーム

玄関は人目につきやすい場所でもあるので、手洗い場を設置するからにはインテリアや雰囲気を壊さない、見た目の良さも大切にしたいところです。

デザインにこだわりたい場合は、カウンタータイプがおすすめです。木製や石製のカウンターにデザイン性の高い洗面器を置くだけのシンプルなしつらえですが、組み合わせの自由度が高く、洗面台独特の生活感も出にくくなります。
ただし、木製のカウンターは水濡れに弱く、水はねを放置しておくとシミや腐食の原因になるため、こまめな拭き取りが必要です。また、洗面器は深さのあるデザインも多く、カウンターとの高低差が大きいと子どもやお年寄りが使いづらい場合もあるため、高さ設計には十分注意する必要があります。

限られたスペースに置けるコンパクトタイプ

(引用)おすすめリフォーム設備 トイレ小物・手洗いカウンター  住友林業のリフォーム

現状の玄関が狭くて手洗い場を置くスペースに余裕のないご家庭も多いでしょう。そこでおすすめしたいのが、コンパクト手洗いカウンターです。通常であれば、トイレなど狭小スペース向けの製品ですが、手洗いカウンターだけを単独で施工することが可能です。
ただし、洗面器や蛇口もコンパクトであるため、手洗いの際に蛇口や洗面器に手が当たってしまうなど使い勝手の悪い面があります。壁埋め込み式の製品では、壁に穴をあける工事も行います。

実用性重視の手洗い場は目隠しタイプが有効

(引用)おすすめリフォーム設備 トイレ小物・手洗いカウンター  住友林業のリフォーム

使いやすく、手洗いしやすく、手入れしやすいスペースにしようとすると、選べる製品も限られてしまうため、見た目のオシャレ度が下がってしまう場合も。それでも衛生面や実用性を重視したい場合は、スタンダードな洗面台を選んだうえで、外から見えないよう壁やディアウォールなどで簡易的な目隠しを設けるとよいでしょう。目隠しがあれば、鏡などを設置して出かける前の身支度用にも使えるため、用途も広がります。また、生活感が出てしまうことを気にすることなく、消毒スプレーや掃除用品の収納棚を置くことも可能です。

玄関スペースで幅広く使える大型シンク

(引用)玄関リフォームの費用相場や事例を詳しく解説 玄関のタイプ  住友林業のリフォーム

玄関スペースの余裕があるなら、幅広い用途に使える大きなシンクを設けるのもよいでしょう。手洗いだけでなく、お子さんが外で遊ぶためのおもちゃ類や靴を洗ったり、またペットの足洗いに活用したりもできます。ただし、湿気が溜まりやすいため、お湯を多く使う場合は換気にも注意しましょう。

屋外に幅広い用途のシンク

ガーデニングや家庭菜園などを行う家庭では屋外に水栓やシンクを設置しているケースもあるでしょう。屋外のシンクは水はねや泥汚れを気にしなくてもいいので、幅広い用途に使用できます。
外で手洗いができると、家に入る前に手洗いや除菌作業ができます。ただし、玄関のドアノブは来客や配送業者など、不特定多数の人が触っている場合があるため、室内に入ってからも消毒が必要になります。屋外の水栓は冬季の凍結にも注意が必要です。

リフォームで手洗い場を設ける場合のポイント

リフォームによって新たに手洗い場を設けるうえで、いくつか知っておきたいことがあります。

コストがかかる

キッチンや浴室、トイレなど他の水まわり設備と離れている場合、配管工事のコストが高くなりがちです。特に玄関は、キッチンなどの水まわりと離れて設計されることが多いため、給湯の配管距離が長くなる場合が考えられます。コストを下げるためには、水のみの単水栓とするのもひとつです。

玄関が狭くなってしまう

手洗いを設置したぶん、玄関や収納のスペースが削られてしまうことも知っておきたいところです。玄関スペースに余裕がない場合は、さらに狭くなることが考えられ、コートや靴の着脱がしにくくなるかもしれません。また、掃除のしにくさ、衛生管理の難しさがともなう場合もあります。手洗い以外の動作への影響も十分に考慮したいところです。

ハンガースペースの設置も一緒に検討する

手洗い場以外に、コートやカバンがかけられるハンガースペースの設置もおすすめです。上着類など毎日洗濯ができないものほど、居室に持ち込まない、もしくは玄関で消毒を済ませる、を意識したいものです。そのために上着をかけたり、カバンを置いたりできるスペースがあると便利です。

消毒・除菌グッズ置き場も考えておく

手洗い用のせっけんのほか、手拭きや消毒、衣類用の除菌スプレーなど、玄関での衛生管理に必要なグッズはいくつもあります。必要な時にすぐ使えるよう、取り出しやすい位置にあることはもちろん、なるべくなら見えないように収納したいところです。

ゴミ箱も必ず設置

家庭内にウイルスを持ち込まないために、外で使用したマスクを玄関で廃棄することも大切な感染症対策です。ゴミ箱は蓋つきタイプが望ましく、なかでもペダル付きなど、手による操作を必要としないものを用意しましょう。また、タオルの使いまわしによる感染を防ぐため、手拭きは使い捨てのペーパータオルが適しています。その点、タオルハンガーは必要ないものの、ペーパータオルを置く場所や引っかけられるフックがあると便利です。

まとめ

ウイルスの持ち込みや、家族間クラスターを防ぐためには、玄関での行動がとても重要です。手からの感染は特に多いといわれていることもあり、効率的でスピーディな手洗いは、住宅内の安全性に直結します。とはいえ、余裕のないスペースに手洗い場を無理に設置すればかえって使いづらくなり、玄関を衛生的に保てない要因となることが考えられます。これらのメリットとデメリット、注意点を考慮したうえで、本当に玄関に手洗いが必要かどうかをしっかり検討しましょう。

また、手だけでなく、玄関と手洗い場を清潔に保つことも大切です。洗面所がクラスターの感染経路になった例もあるため、使い終わった後にキレイに掃除するなどの衛生行動も、家族みんなで習慣づけられるとよいですね。