草刈り・剪定不要の庭へ~手入れいらずの庭リフォームの考え方とは~

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庭とは、住宅の一番外側であり、敷地の外と接する部分になります。住宅の顔であり、境界でもある庭は、手入れやメンテナンスが意外と行き届きにくい場所である一方、人目につきやすいところです。

庭の手入れといえば、草むしりや樹木の剪定がメインとなりますが、これらの手入れは高齢者にとって非常に身体に負担を与える作業となります。
草むしりは長時間しゃがんでいなくてはならず、腰や膝などの関節にダメージが、高木の剪定は肩や首の痛みの原因になります。身体の機能が低下し、体力が衰えてくる年齢になると、こうした作業はいずれ自分たちの手では出来なくなってしまうでしょう。しかし、庭の手入れができないことを気に病み、大きなストレスになるケースも少なくありません。
また、庭木の剪定が行き届いてない住宅では、密集しすぎた庭木が目隠しとなったり、それ自体が経路に使われてしまったりと住居侵入の危険もあります。さらには、雑草が密集することで水はけが悪く湿った場所には虫がわきやすくなり、そうした場所を好むネズミなどの害獣もすみ着きやすくなってしまいます。
近年、毎年のように発生する大型台風などもあり、倒木や折れ枝などによる建物や人への被害も心配されます。

メンテナンスされていない庭は、見た目にも住宅にも、人にもよい影響を与えません。今回は、高齢者が住む住宅において、どのような庭をつくれば良いのかをご紹介します。

(引用)リフォーム・リノベーション事例  住友林業のリフォーム

思い切って整備し、手入れをする部分を限定する

総務省統計局「高齢者の暮らし|趣味・娯楽の種類別、男女別行動者率(65歳以上)」の情報を基に作図

1度荒れてしまった庭は、雑草処理や手入れに途方も無い苦労が必要なため、整備する気力が沸きにくいでしょう。しかし、上記グラフのとおり、「ガーデニング」は高齢者の趣味として特に人気が高いカテゴリです。庭をいったん整備して手入れしやすい環境を作ることで、新たな趣味としてガーデニングを楽しむことができるようになるかもしれません。

「もともとガーデニングが好きだったけれど、鉢植えが増え、樹木も大きくなり、手に負えなくなってしまった......」というご家庭も少なくないでしょう。
高齢者の場合、「もったいない」という気持ちから、庭にある物や植物を整理したくないというケースも多く見られます。物が溢れていることも、庭が手入れできない大きな要因となっている場合も考えられます。

不要なものは撤去し、大きくなりすぎた木や手入れできない樹木は思い切って伐採するなど、じゃまなもの、手間の掛かるものを取り除くことが、庭リフォームの第一の方法です。特に大きな古い樹木は、倒木や折れ枝による人的被害も懸念されます。こうした危険をまず取り除き、庭の大半を手入れしなくていいように整備してしまいましょう。そして、ガーデニングをする場所を庭の一部だけにおくことで、苦労なく庭いじりを楽しむことができます。

とにかく手入れが少ない庭をつくるには

庭木は数を減らすことで手間を減少できますが、雑草はどうしても勝手に生えてきてしまいます。
雑草処理の手間を省くための1番のポイントは「雑草が生えない環境をつくる」こと。つまり土の面が露出しないように、庭材で地面を覆ってしまうのです。庭材は種類によって雰囲気もガラッと変わるので見た目も重要ですが、選ぶ際にはそれぞれの特徴にも注目しましょう。

庭材の特徴とメリットデメリット

この章では、庭材としてよく用いられる素材を紹介します。

芝生

庭に芝生を敷くと、地面が露出している部分に比べて雑草は生えにくくなります。ただし、きれいな状態や芝の密度を保つには、芝刈りや散水、肥料入れなど定期的なメンテナンスが必要になります。
近年は、見た目が美しく、かつ手入れが楽な庭材として、人工芝も人気です。人工芝は化学繊維でできており、耐久年数は10年ほど。成長しないので刈り込みや散水は不要です。
地面に防草シートを敷いた上に施工するので雑草の問題もクリアされます。ただし、費用は天然芝よりも高額です。

(引用)リフォーム・リノベーション事例  住友林業のリフォーム

砂利

密度を高く敷き込めば雑草が生えにくく、生えてしまった草も比較的容易に抜くことができます。ただし、掃き掃除がしにくいため、落葉処理などに少し手間がかかります。

レンガ、石、タイル張り

色や質感がさまざまあるので、土などが無くても暖かな雰囲気にしてくれます。掃除もしやすく、雑草も生えないので手入れは簡単です。ただし、日当たりが悪い箇所では藻やコケが付いてしまう場合があります。
車が乗り入れる場所では、ひび割れや破損などが起こる場合もあるので注意が必要です。

(引用)リフォーム・リノベーション事例  住友林業のリフォーム

コンクリート

手入れはかなり楽になりますが、日陰では藻が発生する場合があります。見た目がかなり無機質な雰囲気になってしまうことも。しかし、耐久性は数ある庭材のなかでは最も高いので駐車場などには最適です。

 

その他、あれば便利なガーデニングの設備

散水装置

スプリンクラーや散水チューブなどを設置しておくと、植物の手入れの手間が少なくなります。夏場のガーデニング作業による熱中症対策にも一定の効果を見込まれます。
旅行などで長期間留守にする場合などには、タイマー式の自動散水装置もおすすめです。

夜間照明

夜間の出入りの安全や雰囲気なども向上しますが、照明は防犯上も大きな役割を果たします。ソーラー充電式の夜間照明なら、電気代などのランニングコストや配線の心配もありません。

除草剤の意外な欠点

雑草処理として、除草剤などの薬剤散布があります。育てている植物に影響の無い範囲での雑草処理には手っ取り早いのですが、副作用として「コケが発生する」という問題があります。
コケには見た目が美しい「良いコケ」と、見た目が悪く繁殖力の強い「悪いコケ」の2種類があり、勝手に生えてくるコケのほとんどは悪いコケです。
コケは抜きにくく、広範囲にびっしり発生するので、雑草よりも厄介な存在と言えます。除草剤を多用しないためにも、まずはなるべく雑草を発生させない環境をつくることが、重要でしょう。特にコケは日当たりの悪い場所を好むので、そうした場所には除草剤散布を行わないなどの使い分けも大事です。

まとめ

(引用)リフォーム・リノベーション事例  住友林業のリフォーム

雑草はどこにでも生えてしまうのですが、花壇や植物は日当たりがとても大切です。また、日避けとしての役割を持つ庭木なども、植える場所や太陽との位置関係が重要となります。こうした点からも、庭造りには太陽の当たり方、方角が大きなポイントとなります。

日本建築では古来より「鬼門(北東)」「裏鬼門(南西)」などの方角を重要視しており、近代の住宅の間取りにおいても反映されています。これらの方角に水場や玄関を設けることを避けており、もし庭に水場を設ける場合は注意してみてください。鬼門・裏鬼門の方角は、日当たりが悪く空気がよどみやすいことからも、コケ類の発生も起こりやすいといえます。
また、日本では縁起の良い木・悪い木などもあり、こちらも植える方角によって良し悪しがある場合もあります。

庭を整備した際に新しい植物や樹木を植える場合は、こうした点にも注目してみるとおもしろいかもしれません。