スケルトンリフォームの定義とは? 費用や事例を専門家が解説

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ご自宅のリフォーム(リノベーション)をしようと考えた際、「スケルトンリフォーム」という言葉を知る機会があるかもしれません。このスケルトンリフォームの意味や費用の目安を知ると、リフォームに対する具体的なイメージがわくようになります。

この記事では、スケルトンリフォームを、戸建てのケース、マンションのケース、それぞれについて、基本的な定義から施工事例、費用の目安、注意点まで解説します。
スケルトンリフォームに興味がある方やイメージがわきにくい際の知識としてお役立てください。

スケルトンリフォーム(フルリフォーム)とは

スケルトンリフォームとは、住宅の「骨組」だけを残して、それ以外の全てを解体して行うリフォームのことです。一般的には、「フルリフォーム」「全面リフォーム」と呼ばれる工事と同じ意味で使われています。

スケルトンとは、建築用語で「骨組み」や「構造躯体」のことです。建物の構造を形成し、強度を保つために重要な部分のことを言います。

また、スケルトンリフォームには、全面リフォームの意味もありますが、外装のみ、または内装のみリフォームを行う場合もあります。外装のみの場合には、外壁塗装や屋根塗装では直しきれない傷みや損傷を発見し、根本的に解決できるよさがあります。
内装のみの場合、傷みが気になる場所の工事のほか、間取りを大きく変更したい、水まわりを一新したいという場合に行われます。予算や求める内容に応じて、リフォームの規模を検討しましょう。

スケルトンリフォームでできること、できないこと

ここでは、スケルトンリフォームでできること、できないことについて確認しましょう。

1.スケルトンリフォームでできること

間取りの変更

下地材まで取り除き、配管の位置を変更できるため、水まわりの位置を変えるような大がかりな間取り変更を行うことができます。

配線、配管の取り替え

給排水管やガス管、電気配線などの配管があらわになるため、必要に応じて取り替えることができます。

構造体の補修、耐震補強

住まいの骨組み(軸組)があらわになるため、普段見えない柱や梁、土台や基礎などの構造体の入れ替えといった補修や耐震補強を行うことができます。

断熱工事

壁の内部まで改修できるため、新しい断熱材の充填を行えます。これによって、住まいの環境改善と省エネ性が高められます。

残したいところを残すことができる

子どもの成長を刻んだ柱など、家族の思い入れがある部分はそのままに住まい全体をきれいな状態にできます。

現況の広さのまま建物を美しくできる

建築基準法や条例の改正によって建て替えができない土地や、建て替えを行うと現況より家が狭くなってしまうケースがあります。そのような場合にも、現況の広さのまま、新築のように美しく生まれ変わらせることができます。

2.スケルトンリフォームでできないこと

根本的なデザイン変更

基本的な構造体の位置の変更や、建物の根本的な形状を変えることはできません。また、敷地内で建物の位置をずらすこともできません。

構造の変更

木造住宅を鉄筋コンクリート構造にするなど、建物の構造は変更できません。

工事の流れ

スケルトンリフォーム工事を行う際の流れは、下記のとおりです。

工事の流れ

内容

期間

業者選び

リフォームの設計、施工会社を探します。

設計施工を行う建設会社に依頼する方法と、設計を設計事務所に依頼し、施工を工務店に依頼する方法があります。

業者へ問い合わせを行い、「現地調査」ののち見積書とプランを作成してもらいます。

~1ヶ月

プランや見積の検討

プランと見積書が提案されたら要望や予算に合っているかを確認し、内容を検討しましょう。プランが固まったら、サンプルを確認したり、ショールームを見学したりし、内装の基調色の検討などを行います。

1~3ヶ月

契約

工事契約を結びます。工事費の支払い方法の決定もこのタイミングになります。ローンを利用する場合、ローンの申し込みも行います。

工事前準備

仮住まいの契約、引っ越し、工事現場の近隣あいさつ、マンションの場合は管理組合へ届け出、ローン契約など、着工に向けた準備を行います。

~1ヶ月

着工~工事

工事が始まったら、1週間に1回は進捗確認に足を運びましょう。なお、スケルトンリフォームでは、内外装の工事が同時進行で行われます。

1~3ヶ月

手直し~竣工

工事完了後には、要望と異なる箇所や気になる部分に対する手直しが行われます。最終検査を終えたら、設備の取り扱い説明などを受け、引き渡しとなります。

事例紹介

スケルトンリフォームで、どこまでリフォームできるのか、気になる方も多いと思います。ここでは、4つの施工事例を予算とともにご紹介します(画像はいずれもイメージです)。

1.内外装のリフォームでまるで新築のような住まいに

長くこの家で暮らすご年配夫婦のリフォームです。建物の耐震性と実用性を考え、使わなくなった2階を撤去し、減築という方法を取りました。
骨組みだけを残し、内外装の全て改修したため、お住まいが新築のように生まれ変わりました。内装の段差も解消し、ご夫婦2人でも無理なく安全に暮らせるようになりました。

築30年/木造2階建て住宅/予算2,000万円
【工事内容】

  • 既存住宅の軸組以外全て撤去
  • 構造材腐食部分取り替え
  • 2階部分解体
  • 布基礎の土面に湿気防止フィルム施工
  • 断熱材充填
  • 外装サイディング張り
  • 屋根コロニアル葺き
  • 床フローリング、壁・天井ビニールクロス
  • ユニットバス1坪
  • トイレ1ヶ所
  • キッチン240cm
  • 洗面化粧台90cm 1台
  • 照明設備設置
  • アルミサッシ設置
  • アルミ製玄関扉設置

2.外装リフォームで雨漏りを根本的に解決

長らく貸し出していた住まいで、新しい暮らしを始めるためのご夫婦のリフォームです。
新築から20年間、一度もメンテナンスしておらず、外装が傷んだ状態でした。そこで、外装のみをすべて解体し、傷んだ部分は補修し、新しい材料を施工しました。
玄関扉は、カバー工法で既存の枠を残したまま施工したため、内装は手を加えず、予算を抑えて新築のように美しく生まれ変わりました。

築20年/木造2階建て/予算500万円
【工事内容】

  • 既存外壁材、下地まで解体
  • 既存玄関扉撤去
  • 腐食部分取り替え
  • 断熱材充填
  • 外装構造用合板、胴縁、防水紙、サイディング施工
  • 屋根野地板、アスファルトルーフィング、ガルバリウム鋼板葺き
  • アルミ製玄関扉設置(カバー工法)

3.中古マンションをファミリー向けに

中古マンションを購入された20代ご夫婦のリフォームです。2人のお子さんのために、既存の間取りに4畳の子ども部屋を新設したほか、キッチンからリビング全体に目が行き届く間取りに変更し、キッチンや浴室などの設備も一新しました。中古のマンションが、子育て世帯に優しい住まいに生まれ変わっています。

築15年/分譲マンション/予算800万円
【工事内容】

  • 既存間仕切り壁、床・壁・天井の下地まで撤去
  • 新規間仕切り壁設置
  • 内装下地材工事
  • 床フローリング、壁・天井ビニールクロス
  • 浴室ユニットバス1坪
  • トイレ1カ所
  • キッチン250cm
  • 洗面化粧台75cm 1台
  • 照明設備設置

4.築40年でも新築のような空間に

40代男性が新生活を始めるために購入した、中古マンションのリフォームです。全体的に古く、配管も傷んでいたため、一度スケルトンにして内装と設備を一新しました。ファミリー向けマンションが、大人の男性のための癒しの空間になりました。

築40年/分譲マンション/予算1,100万円
【工事内容】

  • 既存間仕切り壁、床・壁・天井の下地まで撤去
  • 新規間仕切り壁設置
  • 内装下地材工事
  • 床フローリング、壁・天井漆喰施工
  • 浴室ユニットバス1坪
  • トイレ1カ所
  • キッチン250cm
  • 洗面化粧台90cm 1台
  • 照明設備設置

費用相場

スケルトンリフォームの費用相場はどのくらいを見ておくとよいのでしょう。ここでは、その目安を紹介します。なお、費用は規模や内容によって大きく異なります。

▼木造2階建て住宅(35坪)を想定した場合の目安

内容

概要

費用相場

仮設工事

養生、足場、ゴミ処分費など

20万円

解体工事

既存内装、外装、設備機器

50万円

基礎工事

べた基礎工事、補強

50万円

木工事

間仕切り工事、内外装下地材施工、断熱材施工、

250万円

建具工事

扉、窓枠新設

20万円

住宅設備機器

キッチン、浴室、トイレ、洗面化粧台、給湯器

300万円

内装工事

壁、天井クロス張替え

50万円

屋根工事

屋根葺き替え

30万円

外壁工事

外壁サイディング張り

150万円

給排水設備工事

配管交換、水まわり設備配管新設

30万円

電気工事

照明器具設置、配線工事

30万円

ガス工事

配管交換、水廻り設備配管新設

20万円

合計

1000万円

▼マンション(20坪、RC造)を想定した場合の目安

内容

概要

費用相場

仮設工事

養生、足場、ゴミ処分費など

15万円

解体工事

既存内装、外装、設備機器

50万円

木工事

間仕切り工事、内外装下地材施工

100万円

建具工事

扉、窓枠新設

20万円

住宅設備機器

キッチン、浴室、トイレ、洗面化粧台、給湯器

300万円

内装工事

壁、天井クロス張替え

50万円

給排水設備工事

配管交換、水まわり設備配管新設

30万円

電気工事

照明器具設置、配線工事

20万円

ガス工事

配管交換、水廻り設備配管新設

15万円

合計

600万円

スケルトンリフォームを行うタイミングは?

スケルトンリフォームを実施するのはどのようなときなのでしょうか。おすすめのタイミングを確認しましょう。

築20年が経過したころ

家族形態が変化して間取り変更の必要性を感じ、内外装や各設備が全体的に古くなるのが築20年目辺りです。構造体もそこまで老朽化しておらず、構造体の補修が必要ないぶん費用も抑えられます。スケルトンリフォームで内外装をきれいにするにはちょうど良い時期と言えます。

間取り変更をしたい

「親の介護をする」「子ども部屋が足りない」「水まわりの位置を変更したい」など、間取り変更にともなって、住まいの広い範囲に手を入れる必要がある場合は、スケルトンリフォームで行ったほうが住みやすい間取りを考えられます。

建て替えをするにはもったいない

中古物件の購入にあたり、全体的にきれいにしたいものの、建て替えるには築年数が浅く、構造体も健全でもったいなく感じる場合は、スケルトンリフォームが適しています。

リフォームの注意点

リフォームを進めるうえで知っておきたい注意点をご紹介します。

1.スケルトンリフォームを行うか判断する時の注意点

住宅の構造によって間取り変更ができない場合がある

壁式構造など、壁で構造体を支えている場合、間取りを変更できないこともあります。それでも間取り変更を希望する場合には、現地調査の際に確認するようにしましょう。

建物の傷み具合によって建て替えよりも割高になる場合がある

構造体の傷みが激しく、柱や土台などの交換が多く必要になる場合、耐震補強工事が広範囲に及ぶ場合は、建て替えよりも費用が割高になる場合があります。

2.業者に相談する時の注意点

耐震診断士や建築士が在籍している業者に相談

間取りを変更し、構造体を補強する必要があるスケルトンリフォームの設計は、耐震性について正しい判断ができる建築士や耐震診断士が在籍する業社に依頼すると安心です。

相見積を取って適正価格や内容を確認

スケルトンリフォームは、施工業者によって見積もり金額が異なります。そのため、2~3社に見積もりを依頼し工事方法や価格を比較することがおすすめです。

3.工事中の注意点

追加工事も都度契約

追加工事を依頼する際も「追加工事分」や「変更工事分」として必ず金額を確認し、都度契約を結んだうえで工事を進めるようにしましょう。この作業を怠ると、工事完了後にまとめて追加工事費用を請求されることになります。想定していたよりも高額になると、トラブルに発展することもあるため、十分注意しましょう。

最後に

スケルトンリフォームの基本的な定義から施工事例、費用目安、注意点までお伝えしました。スケルトンリフォームがどのようなものかを知ると、ご自宅に合った工事方法の選択に役立ちます。予算や土地の状況、求めるリフォームの内容などを考慮して、リフォームの範囲や建て替えの判断などができるといいですね。