【建築士が指南】おしゃれな照明器具で簡単&快適リフォーム!

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2000年代に入り、住宅照明用のLED電球が市販されるようになったことは、住宅の照明計画に大きな影響をもたらしました。LEDライトの持つ多くの利点によって、照明にできることの幅が大きく広がったのです。

LEDライトが長寿命であること、消費電力が少ないことはよく知られています。その他にも、熱を持たない、調光・調色が可能になるなどの特徴があり、設置場所を選ばず、豊かな表現ができるようになりました。

このように、LEDライトが広く普及したことによって、単調だった住宅の照明環境にさまざまな演出を加えることができるようになり、多くの人が居心地の良い空間を楽しみはじめています。

今回は、このLEDライトの特性を上手に活かしたリフォームの考え方をご紹介します。

LEDライトの特徴と強み

LEDが普及するよりも前、従来の住宅ではひとつの部屋に1個の照明器具を用いて空間を照らすというのが定番でした。これを「一室一灯照明」と呼びます。天井に直接設置するシーリングライトや、天井からぶら下げるペンダントライトなどがよく使われています。

一室一灯照明の場合、照明器具は部屋の中央に設置されています。光は器具を中心に四方に広がりますが、器具から離れるほど明るさは減っていきます。また、器具の多くは下を向いているので、天井面や壁の上の辺りまでは光が充分に届きません。そのため、ひとつの空間に明るい場所と暗い場所ができてしまいます。
明るさにバラつきがあると、眩しさや暗さを感じる原因となったり、それによって目が疲れてしまったりすることもあります。部屋の明るさを均一に保つことは快適な環境作りに欠かせません。

このような弱点を解消するため、一室の中に複数の照明を設置する方式があります。これを「一室多灯照明」と呼びます。部屋の中央にメインとなる照明器具を設置し、明るさの足りない場所に補足する方法や、ダウンライトのような小型の照明を部屋全体にバランスよく配置する方法など、その手法はさまざまです。
一室の中でも場所によってさまざまな生活行動が取られているので、その場所ごとにどのような明るさが必要になるのかを考えて灯りを分配すると、快適な環境を得ることができます。

一室一灯照明(左)と一室多灯照明(右)のモデル例 筆者作成

しかし、照明器具の数を増やすということは、それだけ消費する電力の量が増えることになります。また、電球が切れた際に取り替える手間も電球の数だけ増えてしまいます。従来の電球や蛍光灯のままではコストも手間も増えるので、これまで一室多灯照明は現実的な選択肢ではなかったかもしれません。しかし、そのような問題が、LEDライトの普及により解決されました。

まずは消費電力ですが、蛍光灯シーリングライトで一室一灯照明をしていた時の消費電力おおよそ68wが、現在は消費電力34w程度のLEDシーリングライトで代用できるようになりました。一灯では暗いと感じている場合、たとえば消費電力7.5wの電球型LEDライトを4つ追加しても一室の消費電力の合計は64wとなり、当初の68wより少なくすることができます。
LEDライトの登場によって一灯あたりの消費電力が少なくなり、今まで使用していた照明の消費電力を超えることなく一室多灯照明を実現することができるようになったのです。

筆者作成

この例では一室にひとつだった照明器具が5つに増え、従来ならそのメンテナンスの手間も問題になるところでした。しかし、長寿命のLEDライトでは、その手間も各段に減ることになります。というのも、電球型LEDランプは一般電球の40倍、電球型蛍光灯ランプと比べても6.7倍長く使えます。取替えの頻度が格段に減ったことで多灯照明にチャレンジするハードルは低くなりました。

社団法人 日本照明工業会「住まいの照明BOOK|P.20」の情報を基に作図

LEDでできるリフォームの楽しみ方

部屋でくつろいでいるとき、私たちは部屋のどこを見ているでしょうか。会話をしている相手のときもあれば、誰かと並んでテレビを観ているかもしれませんし、ベッドに寝転がって考えごとをしながら天井を眺めているのかもしれません。会話をしている相手やテレビの奥には背景となる壁があり、見上げた先に天井が広がっています。普段はあまり意識しませんが、人が壁や天井を眺めている時間は意外と長いのです。
ところが、多くの照明は下を向いていて床や机上に向けて光を放っています。せっかくの照明の光が視線の先を照らさず、誰も見ていない床や机上だけを照らしているとしたら、それはとてももったいないことです。そこでリフォームのときには、思い切って壁や天井など、視線の先にある物を照らしてみるのも良いでしょう。煌々と照らし出す必要はありません。眺める先をほんのりと照らすだけで、明るさや奥行き感を演出でき、部屋の雰囲気はやわらかく温かみのある明るさに包まれます。

大規模なリフォームは必要ないケースも

画像引用

リフォームの規模は計画によってさまざまです。壁を取り払って間取りを変えたり内装をガラリと刷新したりするような大掛かりな計画の場合は、一室一灯照明から一室多灯照明への移行も容易にできるかもしれません。
一方、大掛かりなリフォームの計画はないものの、一室多灯照明を叶えたい場合には、簡易取付型のダクトレール(ライティングレール)の設置がおすすめです。ダクトレールとは、天井や壁面に設置するライン状の照明部品のことです。レールにスポットライトやペンダントライトなどの照明器具を複数取り付けることができ、レール内であれば器具を自由に移動させることができます。ペンダントライトやスポットライトは、高さの調整や方向の調整ができるものが多く、照らしたい場所に的確に光を当てることができます。
簡易取付型のダクトレールは、天井の照明器具を取付けている引掛シーリングローゼットに取付けて使うため、電気工事や大工工事も必要ありません。

ダイニングテーブルなど机の上を照らすときには、お気に入りのペンダント照明をいくつか吊り下げてみるのも良いでしょう。ライン状に並んだ姿はそれだけで部屋のアクセントになります。また、照明の向きを自在に変えられるスポットライトを設置すれば、好みの場所を照らすことができます。スポットライトには部分的に照らしたい挟角のものや光が全体に広がる広角のもの、アームが長く天井より低い位置から光を当てられるロングアームのものなど目的に合わせてさまざまな種類があります。壁や天井を均一に照らしたり、壁に飾った絵やテキスタイルを照らし出したりと、さまざまな演出が可能です。

まとめ

近年は共働き世帯や、学校や習い事で忙しいお子さんが増え、日中家に人がいる頻度が少ない家庭も増えてきました。そのため、日当たりなど日中の環境に重きを置きつつ、夜間の室内環境にも目を向ける機会が増えてきたのではないでしょうか。

照明は空間の印象を大きく変えることができるアイテムです。器具を変えるだけ、照らす先を変えるだけなど、少しの工夫から始めることができます。
居心地の良い空間、お気に入りの空間づくりを、まずは照明計画から始めてみてはいかがでしょうか。