伝統美を受け継ぎながら最新技術で再生した長屋門|後世に伝わる建築物をご紹介

暮らし・住まい

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東日本大震災で崩れてしまった長屋門を伝統美を受け継ぎながら現代の技術を活かして再生しました。これから長屋門の修復を検討されている方は、ご参考にしてください。

この記事の監修

矢口美加子

宅建・整理収納アドバイザー1級、福祉住環境コーディネーター2級の資格を取得済みです。不動産・リフォーム・不動産投資・転職・整理収納関連の記事を複数のメディアで執筆しています。ライター業の他に、主人が経営する不動産会社所有の投資用物件の入居者管理もこなすパラレルワーカーです。

地方の旧家では堂々とした長屋門を構えている邸宅がよく見られ、その家の伝統と格式を思わせるものです。

もともとは、江戸時代に諸大名の武家屋敷門として派生した門形式の一つであり、明治以降は裕福な農家が農作業で雇っている人の住居、農作業場を兼ねた倉庫として建築するようになりました。*1

今回は「長屋門の再現」を実行された、茨城県つくば市にお住まいのI様の工事例をご紹介します。伝統美を受け継ぎながら現代の技術を活かして再生しました。
これから長屋門の修復を検討されている方は、ご参考にしてください。

1.リフォームのきっかけ

ここではI様が築100年以上の長屋門を、リフォームすることになったきっかけについてご紹介します。

(1)東日本大震災で崩れてしまったので修復することに

I様宅の長屋門は先祖代々、大切に受け継がれてきました。しかし、2011年に発生した東日本大震災で被災したため、基礎がゆがみ建物が波打つ状態になってしまったのです。お父様がご存命中のときに修復を検討されていましたが、その後、ご体調を崩されてしまい、修復すると言う話は立ち消えとなっていました。

そこで跡取りであるI様は、亡くなったお父様のご遺志を実現させるべく、この度、長屋門の修復を行うことを決意されています。

(2)威風堂々とした贅沢な造り

お父様は生前、母屋の増築を検討されていました。そのため、住宅展示場に足を運ばれた際に住友林業の家を知り、気に入られていたそうです。ご見学をきっかけにしてご縁をいただき、今回の案件はリフォームということで住友林業が当社(住友林業ホームテック)にI様を紹介しています。「長屋門」は歴史的な建造物のため、実例が少ないこともあり、和風住宅で実績が豊富な当社にお任せいただくことになりました。

今回のリフォームでは門扉、太い柱、梁など、既存の貴重な古材を活かして風合いある建物を再現することに成功しています。基礎をやり直して耐震性も高めたので、大きな地震が発生しても心配ありません。使用する建材も今風の安い材料ではなく、品質の高いしっかりとしたものを使ったため威風堂々とした贅沢な造りとなり、I様にも大変ご満足いただいております。

2.リフォームでのこだわりポイント

I様がリフォームする際に、特にこだわりたいポイントであげられたのは以下の点です。

  • なるべく元の姿を残しつつ後世に引き継ぐ
  • 耐震性を高める

順を追ってご紹介しましょう。

(1)なるべく元の姿を残しつつ後世に引き継ぐ

I様宅の長屋門は築100年以上という由緒ある建造物です。
ご先祖様が代々、大切に維持されてきた建物なので、既存の部材を残しながら伝統美を再現できる材料を使い、かつての姿を再現したいというご要望がありました。

門扉、柱、梁などは使える部材をそのまま活かし、I様の記憶の中にある長屋門の風格ある佇まいが再現できました。美しく生まれ変わり、ご近所の方からも素晴らしい景観になったと褒めていただいています。

(2)耐震性を高める

伝統美あふれる外観だけでなく、長く後世に残していくためにも耐震性を高めることが必要でした。

老朽化していたところ東日本大震災で被災したので、基礎から補強をしています。建物をそのまま移動する「曳家」という建築工法を用い、建物をしっかりと支えるためにRC基礎を導入し柱の土台も入れ替えました。

歴史的建造物の中に、現代の最新技術を取り入れて耐震性を高めています。

3.【部位別】リフォームの内容

築100年以上の長屋門が、どのようにすばらしい建築物に仕上がったのかについてご紹介します。

(1)昔からの名家を思わせる格式の高い外観

昔からの名家であることを思わせる格式の高い門構えです。
正面の木の門扉を見ると、I様宅が由緒ある旧家であることが分かります。

堂々とした風格の寄棟造りの和風の屋根には、銀黒の日本瓦を葺いて、重厚な日本美を再現しました。明るい木の外壁に白く塗られた壁が際立つ、美しい長屋門が完成しています。
日本古来の伝統美あふれる格調高い建物です。

(2)武家屋敷風の風格ある板塀

自宅の敷地をぐるりと囲む板塀も、和風建築の粋な雰囲気を醸し出しています。
板塀の上にも長屋門と同じ銀黒の瓦を葺くことにより、統一された仕上がりとなりました。

板で隙間なく覆っているため屋敷の中は見えず、プライバシーを守れます。
道行く人が思わず眺めてしまう和モダンな板塀です。

(3)歴史を感じさせる重厚な雰囲気の屋根裏

長屋門の屋根裏は以前の建物で使われていた古材をそのまま利用し、旧家であるI家の歴史を思わせます。門扉や柱も既存のものを利用し、重厚な雰囲気を漂わせています。
I家のシンボルともいえる門扉は、これまでに多くのご先祖様たちが日常生活で大切に使われていたことでしょう。

RC基礎で土台をしっかりと修復したので日本瓦を葺いた重みのある屋根でも、地震の際に崩れる心配は少なくなり安心してご利用できます。

(4)長屋門の一部はガレージとして有効活用

道路に向かった長屋門の左手には倉庫、右手はガレージへとリフォームしました。
I様が居住されている場所は風光明媚な場所にありますが、風が強い日には土埃が舞って車に付着してしまうこともあります。

しかし、建物内のガレージに保管されるため、土埃は入らず車が汚れません。板塀に囲まれた敷地内にあるということもあり、盗難防止の役目も担っています。ご近所の方からは、「贅沢な造りの立派な車庫ですね」と褒めていただいているとのことです。

(5)倉庫内は暮らしに役立てる空間に

立派な梁が特徴的な倉庫は、内壁に木材を使用して自然な風合いを演出しています。
中はあえて細かい仕切りを設けなかったので、大きな家具などを収納する場合にも活用できるでしょう。スチールラックを設置して収納棚としています。

倉庫の使い方は特定の用途として使うというより、必要に応じて多目的に利用されるそうです。母屋のリフォームも考えているそうですが、工事中は家具の保管場所として利用することを検討されています。

4.リフォーム後の暮らしの変化

I様にリフォーム後の暮らしの変化について尋ねてみましたところ、以下のようなご回答をいただきましたのでご紹介します。

  • 地震に対する不安が少なくなった
  • 倉庫として活用できるようになった

東日本大震災で茨城県は被災した地域が多くあり、I様宅の長屋門も古い建造物であるがゆえに基礎がゆがむなど甚大な被害を受けました。今回のリフォーム工事では土台からRC基礎で修復しているので耐震性を高めています。

また、長屋門の一部を倉庫としてリフォームしたので、普段は使用しない家具や備品などを保管できるようになりました。家の中には必要なものだけを置けばよいので、スッキリとした空間を保てます。

5.住友林業のリフォームについて

I様が当社にリフォームをご依頼された理由や、当社の対応についてお伺いいたしました。

(1)住友林業ホームテックを選んだ理由

I様が住友林業ホームテックを選んだのは、先述したようにお父様が以前に住宅展示場で住友林業の家を気に入られていたからです。

当社以外の別の1社にも見積りを依頼されており、金額的には当社の方が高めでしたが、修復内容が違っていたため、単純に金額だけでは比較できなかったそうです。検討した結果、住友林業の方が「和の建築」という点でブランド力が高かったためお選びいただきました。

(2)住友林業ホームテックの対応

リフォーム工事に際しての当社の対応についてお伺いをしたところ、以下のようなご回答をいただきました。

  • 先祖代々の長屋門をきちんと再現してくれた
  • コミュニケーションが上手く取れないことがあった

今回の長屋門リフォーム工事は、基礎から修復し直したり、曳家工法で建物全体を移動したりと大がかりな工事となりました。I様は一軒家が建てられるほどの高額な費用で「門・車庫・倉庫」という、家に比べれば重要度が低い部分の工事を実行したのです。

新しい門を造ったほうが割安なことは、もちろんI様もご存知でした。しかし、古い長屋門にこだわられ高額な費用をかけてでも修復したのは、ひとえに「先祖代々の長屋門を後世に残していきたい」という旧家の跡取りならではの使命感だったのです。当社の技術で昔の面影を残しながら現代の建造物として再現した長屋門の完成度に、大変ご満足していただいております。

ただ、工事中に当社と職人さんとの連絡が上手く通じていなかったこともあり、I様にお手間をかけさせてしまった点も残念ながらございました。今後はI様のご教示を活用させていただき、お客様にさらなるご満足をお届けしたいと思っております。

6.まとめ

今回は築100年以上の長屋門を、伝統美あふれる建造物として生まれ変わらせた、茨城県のI様のリフォーム事例についてご紹介させていただきました。

I家のご先祖様たちが日常生活で毎日利用して大切に維持されてきた長屋門は、以前の面影を残しながら現代でも利用価値の高い建造物へと美しく再現されています。

I様の「家」を大切に思われる旧家の当主としての思いは、これから後世へと長く残されていく長屋門にいつまでも伝えられていくでしょう。

【参考資料】

*1 栗原市観光物産協会「農家型長屋門ってなに?