築200年の古民家をリフォーム 懐かしい茅葺屋根の実家が快適な長期優良住宅に

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地方在住の旧家で育った方は、「先祖から受け継いだ大切な家を継承していきたい」というお考えの方が少なくありません。また近所との寄合や、本家筋であるため親戚が泊まることもよくあり、2間続きの和室は欠かせないなど、地方の旧家ならではの間取りも必要とされています。今回は「先祖代々受け継がれてゆく古民家を現代風に蘇らせる」ことを望まれた、茨城県にお住まいのH様の事例についてご紹介をします。

1.新築ではなくリフォームをした理由

築200年という歴史のある茅葺屋根の古民家を快適に住めるようにするには、新築並みの大がかりな建築工事が必要です。それでも「解体+新築」ではなく、現存する古民家を現代風にリフォームすることを選ばれたH様は、当社にご相談をしてくださり、古民家を長期優良住宅へと新しく生まれ変わらせました。ここでは、H様が新築ではなくリフォームをした理由についてご紹介をします。

(1)先祖から受け継いだ大切な家を維持したい

茨城県にお住いのH様のご自宅は建物の裏手に欅の大木があり、緑豊かな自然の中に囲まれています。このご自宅はH様ご自身が生まれ育った生家でもあり、高校生の頃まで生活をされていました。

2005年に一人暮らしをされていた御祖母様が他界されてからは空き家となり、「この家をどうするか?」ということになったとのことです。
H様は「先祖から受け継いだ大切な家を維持したい」とお考えになり、築20年の古民家を長期優良住宅へリフォームすることを決意されました。旧家のご子息としてお育ちになったH様は、ご先祖が代々住まわれてきた家を大切にしたいというお気持ちが強かったそうです。

また、築200年という由緒ある藁葺き屋根の古民家であり、「これだけの家は壊してしまったら二度と建てられない」という事情もありました。
柱や梁、木製の引き戸など、使われている建材も磨かれた格式を備えており、現代では入手できないものでもあります。

筑波大の先生に見ていただいたところ家の状態の評価はとてもよく、柱や梁などは十分活かせると判断されました。このようなことからも、先祖から受け継いできた大切な家を、その良さを活かしながら現代風に快適に住める住宅にして、自宅として活用することを選ばれたのです。

(2)自然豊かな環境で子育てをしたい

もうひとつの理由としては、ご自宅の周辺が緑豊かな自然の中にあり空気もきれいで、3歳のお子様(男の子)の子育てに適した環境でもありました。実際にH様のお子様は、毎日広い庭で元気に走り回っているそうです。ご自宅の裏側には大きな欅の木があり、まるで別荘地にいるかのような心癒される風景を、ご家族で日常的に楽しめます。

また、茨城県といっても、H様が住まわれている地域は東京への通勤にも便が良く、特に問題はありませんでした。将来、お子様が進学されたときにも不便はなさそうです。

2.リフォームでのこだわりポイント

H様のリフォームテーマはズバリ、「築200年の古民家を長期優良住宅として再生する」ということです。ここでは、H様がこだわったポイントについてご紹介をします。

(1)耐震性の確保

築年数が200年と古いため、耐震性や耐久性にはかなり不安があるとのことでした。そのため、柱の強度確認も丁寧に行い、ジャッキアップして基礎も巧みに新設しました。40代の腕のいい大工が梁の自然な曲線に合わせて取り合いを微妙に調整するなど、「巧の技」を披露させて頂いたことも、大いに喜んで頂けました。

(2)使える材料、建具などは最大限に使う

H様のご自宅で使われている建具や柱、梁は今ではもう手に入らない貴重なものばかりです。格式ある風情を出せる代替品はないため、現存している材料で使えるものは建具も含め、最大限に活用することを希望されました。
また、前の建物で使われていた柱や梁など建材の一部をどこかに使うと、家族で過ごした思い出を新しい建物に残しておけます。

なお、H様のご自宅では、手元に置いてあった荒く製材していたスギ材も利用し、「古材を活かした新築」という住宅プランを実現しています。

(3)新たに使う材料は自然素材

新たに使う材料も自然素材にこだわり、床は無垢のスギ材を使うことを当初から決めておられました。理由としてはスギ材はキズが付きやすい面はあるものの、温かみのあるやわらかな素材だからということです。このように、住む人の体に負担をかけない健康住宅であることも大切なポイントでした。

(4)2間続きの和室を残存

2間続きの和室ということも、H様にとっては外せないポイントでした。茨城県だけに限りませんが、地方で旧家が多い集落は何かと寄合が多く、葬式が出ると近所の人30人くらいが、全員でお線香あげに行くことなどはよく見られる光景です。孫が生まれると座敷にひな壇を飾りお客様を招待することも多く、2間はないと伝統行事はこなせません。

コロナの影響により、近年ではだいぶ簡素化されてきてはいますが本家が多いため、お盆やお正月などは親戚が泊まることもよくあるのです。したがって、たくさんの人を同時に自宅内に招くことが多いため、2間続きの和室は旧家には「必須の間取り」となります。

(5)LDKは明るい雰囲気に

リフォームする前のキッチンが北側ということもあり、採光を明るくする工夫が必要です。家族が長く過ごすLDKを明るい雰囲気に仕上げることは、こだわりたいポイントとされていました。

3.【部位別】リフォームの内容

ここでは築200年の古民家が、どのように快適な住宅に仕上がったのかをご紹介します。

(1)やさしい色の塗り壁に仕上げたLDK

H様の理想のLDKは、家族が自然に触れ合える空間にすることでした。キッチンはワインレッドのカラーがスタイリッシュな動線の良いキッチンです。窓を3つ連続させ、光を取り込むことにも成功しました。

LDKの壁はやさしいクリーム色の珪藻土で塗り上げられ、憩い空間を演出しています。天井にある力強い小屋組に守られたLDKは梁がむき出しになっており、温かい木のぬくもりを感じられる空間です。

(2)明るくなった2間続きの和室

来客の対応などに必要なため、2間続きの和室はそのまま残しました。建具や床の間の銘木なども再利用し、新たに張り直した床や天井は、すべて無垢材を使用しています。再利用したダークブラウンの木の引き戸が歴史を感じさせる、格式ある日本間が完成しました。

(3)式台のある広い玄関

地方の旧家では冠婚葬祭などの度に、たくさんのお客様を招きます。このようなことからもH様のご自宅では、大勢の来客にも対応できる広々とした玄関を実現しました。一度にたくさんの方が上がっても靴が外にあふれることはありません。

式台のある格式ある広い玄関に入ると、正面には既存の格子戸が目に入り、その先にはビューポイントとなる大きな窓が庭の美しい緑の風景を映し出しています。

(4)茅葺屋根は元の風格ある趣を再現

茅葺屋根の趣を残すために屋根には厚みを持たせています。そのことにより、元の風格を再現することに成功し、煙出しもデザインの一部として残しました。この煙出しは、お母様のたっての要望でもあり、今まで過ごした実家の思い出のシンボルでもあります。

(5)南側にくつろぎの場所として濡れ縁を設置

緑豊かな日本庭園を眺められるくつろぎの場所として、南側の廊下の外に濡れ縁を設置しました。休日には、家族で日向ぼっこをしながらのんびりおしゃべりを楽しめます。近所の人が立ち寄ったときも、天気が良ければそのまま中に入らずに、外で会話ができるので便利です。

4.リフォーム後の暮らしの変化

H様にリフォーム後の暮らしの変化について尋ねてみましたところ、以下のようなご回答をいただきました。

  • 自然の中での暮らしは快適で、子供も走り回っている
  • 周囲の伸び伸びとした環境が想像以上に気持ちが良い
  • 南の和室の濡れ縁が大のお気に入り
  • 回遊できるキッチンなど生活動線も良好
  • 和室や玄関の漆喰は白、リビングがクリーム色にしたので柔らかい印象を与えている

自然の豊かな環境の中で、お子様もすくすくご成長されており、ご夫婦でも田舎での生活を大変楽しまれています。H様のお気に入りは何と言っても、南の和室の濡れ縁とのことです。奥様にもキッチンの動線などを気に入っていただき、皆様にはリビングでは居心地の良さを満足されています。

5.住友林業のリフォームについて

H様が当社にリフォームをご依頼されたきっかけなどについてお伺いいたしました。

(1)住友林業ホームテックを選んだ理由

H様に当社を選んでくださった理由をお聞きしたところ、以下のようなご回答をいただきました。

  • きっかけはテレビ番組「百年名家」で当社を知ったこと
  • アフター、大手の対応力、旧家再生の実績から依頼

H様は「建築家+工務店」に依頼するということも考えられたそうですが、最終的には当社の対応力やアフターサービス、多数の旧家再生の実績などからお選びくださったとのことです。先祖から受け継いだ大切な家をリフォームするということで、テレビにも取り上げられたことのある、古民家を優良住宅に蘇らせる当社の高い技術力を信頼していただきました。

(2)住友林業ホームテックの対応

当社の対応についてもお伺いをしてみましたところ、以下のようなご回答を頂きました。

  • 古民家再生のノウハウがあり熱意がある
  • 柱の強度の確認なども丁寧
  • 基礎の新設も巧み
  • 長期優良住宅の煩雑な手続きもしっかりやってくれた
  • 40代の大工さんが腕もよく非常に熱心にやってくれた
  • 耐震性にも安心できる

古民家再生に定評がある当社の技術力や、耐震性の確保にもご満足していただけました。

6.まとめ

今回は茅葺屋根の古民家を現代風の住宅へと生まれ変わらせた、茨城県のH様のリフォーム事例についてご紹介させていただきました。

築200年の古民家でも最新の建材を使い、確かな技術で施工すれば、耐震性や断熱性にも優れた長期優良住宅として再生することができます。柱や梁、建具など使えるものは再利用したことにより格式ある趣をつくり上げ、ご家族との思い出も残した温かみのあるやさしい住まいが完成しました。生まれ変わった住まいで幸せに暮らすH様ご家族の姿を、ご先祖様も感謝の念と共に温かく見守ってくださるでしょう。