築300年の古民家リフォーム|偉人と文豪にゆかりのある旧家を再生

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熊本県熊本市にお住まいのY様は現在築300年の住宅に、ご家族4人で暮らしています。
Y家は明治の文豪の小説のモデルとなった由緒ある旧家です。

今回は「旧家の伝統を守りながら快適に暮らせる家」のリフォームに成功した事例として、ご紹介をさせていただきます。ぜひ参考にしてください。

1.リフォームのきっかけ

ここではY様が築300年のご自宅を、リフォームすることになったきっかけについてご紹介します。

(1)雨漏りなど建物が老朽化

Y様宅は築300年ということもあり、建物が沈下し全体的に傾いていました。
雨漏りもひどく、老朽化していたため、1日も早い修復が必要な状態だったのです。今回のリフォームでは建物の沈下を防ぐために、耐圧盤として全面にべた基礎を施工しました。

また、古い時代に建てられたので耐震性にも不安がありました。したがって、建物をきれいに修復するだけでなく安全に暮らせるように、制震ダンパーによる耐震補強工事も同時進行で行っております。

(2)先祖から受け継いだ家を後世に残したい

Y家のご先祖様は、幕末から明治にかけて活躍した偉人を援助した人物が存在する名門の家柄です。
1700年代に地元の沼山津が困窮した際には、8~9代目の当主が私財を投げ出して人々を救ったとされています。

「人を助ける」という尊い精神をお持ちであったご先祖様が残された伝統ある旧家を、Y様は大切に思われていました。
「先祖から受け継いだ家を後世に残したい」という、強い使命感をお持ちだったのです。ただ、古い建物として残すのではなく、しっかりと修復して、後の後継者であるお孫さんの負担にならないようにしています。

2.リフォームでのこだわりポイント

Y様がリフォームする際に、特にこだわりたいポイントであげられたのは以下の2点です。

  • できるだけ現存のままで残す
  • 安全に住める家にしたい

順を追ってご紹介しましょう。

(1)できるだけ現存のままで残す

現在の当主であるY様は、ご先祖様が大切に住まわれてきた建物を、できるだけ現存のままで残したいと強く思われていました。

しかし、元禄9年に建築された建造物ということもあり、歴史ある風格を残しながら修復できる建築会社は簡単に見つからず、なかなかリフォーム工事に着手できなかったそうです。
今回、当社がこの歴史ある建造物の修復工事をお任せいただくことになり、できるだけ以前の家のイメージを壊さずに、現代でも快適に暮らせる仕様に造り変えています。

(2)安全に住める家にしたい

築300年という年数を経過したY様宅は老朽化が進み、大きな地震が発生したら倒壊の危険性もある建物でした。
近年の日本では大きな地震がたびたび発生することから、耐震性を高めるのも重要なポイントです。

今回のリフォームでは、木造在来工法のスペシャリストである当社が、本社技術開発部と筑波研究所の協力のもと、最新の制震工法を採用しております。
床や壁、天井には断熱材を補充し、外気との温度差が少なく快適に暮らせる安全な住まいを実現しました。

3.【部位別】リフォームの内容

ここでは築300年のご自宅が、どのように快適な住宅に仕上がったのかについてご紹介します。

(1)旧家の趣が漂う落ち着いた外観

伝統的な旧家の趣が感じられる、落ち着いた外観の建物です。
現代に生まれ変わった邸宅は、2本の松の木がそびえ立つ、美しい日本庭園の中に佇んでいます。

断熱性能を上げるため外壁は大壁造りとし、漆喰や杉板張りを使用して「和」のイメージに仕上げました。屋根は全部葺き替えて、重厚な雰囲気を醸し出しています。

(2)堂々とした土間造りの玄関ホール

太くて立派な梁が天井にある玄関ホールは、以前は土間であったスペースです。
茶の間から中の間、次の間、主座敷と続く景観は壮大なスケールを感じさせます。柱や梁、ふすまなどは既存の古材を使用することで、伝統的な雰囲気を醸し出しています。

上り口は石材と木材を組み合わせて、上がりやすい仕様にしました。年配の方でも体に負担をかけず、安全に出入りできます。

(3)古材を活かした重厚な和室

こちらの和室は元禄時代に建築された主座敷です。
主座敷からは次の間、中の間、茶の間が続いており、合計49畳の壮大な景観となっています。昔の武家屋敷を思わせる豪壮な眺めです。

主座敷と次の間を隔てる欄間も元禄時代のもので、流麗なデザインが魅力となります。天井や障子の格子戸も既存の古材が使用され、当時の面影を残しました。歴史の息吹を感じられる和の空間です。

(4)最新設備を取り入れた機能的なキッチン

二方を土間に囲まれていたキッチンは、全面フローリングにしてLDKと一体化しました。
22畳ほどある広々とした空間で、家族で団らんを楽しめるスペースとなっています。ゆとりがあるので動きやすいのもメリットです。

カウンターの上部には既存の梁をダイナミックに見せることで、アンティークな雰囲気を演出しています。最新のシステムキッチンを設置したキッチンは対面式なので、リビングにいる家族とコミュニケーションを取りながら家事を楽しめます。

(5)白を基調とした清潔なバスルームと洗面所

バスルームと洗面所は白を基調にした清潔な空間へと生まれ変わりました。
洗面台や洗濯機、バスルームのイスもすべて白で統一し、カラーコーディネートをしています。木目調の床材を使用することで温かみのある雰囲気です。

バスルームのドアは引き戸なので、入浴の際に介助の手が必要になったときでも、介助者が出入りしやすいでしょう。バスルームと洗面所の敷居もバリアフリーなので、年配の方でも安全に入浴できます。

4.リフォーム後の暮らしの変化

Y様にリフォーム後の暮らしの変化について尋ねてみましたところ、以下のようなご回答をいただきましたのでご紹介します。

  • 安全に住めるようになった

Y様宅は築300年で老朽化が進んでいたということもあり、使えなくなっていた部屋も数多くありました。今回のリフォームでは、歴史的建造物ということで、「保存区域」と「居住区域」を分けています。快適に暮らせる部屋を「居住区域」に設けたので、安全に暮らせるようになりました。

5.住友林業のリフォームについて

Y様が当社にリフォームをご依頼されたきっかけなどについてお伺いいたしました。

(1)住友林業ホームテックを選んだ理由

Y様の息子さんが、住友林業でご自宅を新築されたところ大変ご満足をいただき、Y様に当社をすすめてくださったそうです。

また、築300年の旧家再生ということで、一般のリフォームと同じわけにはいきませんが、当社は木造住宅に定評があり、古民家リフォームでも豊富な実績をあげています。

Y様には「表面的なきれいさ」だけではなく、後の世代にも受け継がれていく建物にするために必要な改修計画を、理論的にプランニングさせていただきました。具体的に内容を示せたことで、最終的に当社を選んでいただいております。

(2)住友林業ホームテックの対応

Y様からは、「事前調査がしっかりしている」とお褒めの言葉を頂きました。

今回のリフォームは一般住宅を「保存区域」と「居住区域」に分けるなど、従来のリフォームとは異なる点が多数あります。また、効率性や利便さばかりを追求し過ぎると、旧家ならではの伝統的な意匠が損なわれる恐れがあります。

ただ、住まいの基本は「生命と財産を守る」ことです。住む人が安全に暮らせるよう耐震性を高め、老朽化している部分は修復をしました。
工事をする際には、徹底的に事前調査をして最新の技術を導入しています。
すべての面において、最善の選択をY様がお選びくださったことに深く感謝をしております。

6.まとめ

今回は築300年の旧家を、既存の面影を残しながら「後世へと残していく歴史的建造物」
へと生まれ変わらせた、熊本県のY様のリフォーム事例についてご紹介させていただきました。

「世のため、人のため」に尽力された多くのご先祖様が大切に住まわれた旧家を、現在の17代目当主であるY様が、後世に残る伝統的住宅として再生させました。
これからも脈々とつながるY家の子孫の方が、大切に後世へと継承していくことでしょう。