木造住宅の<床下>のメンテナンス

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床下というのは住宅の土台となる部分です。気づかぬうちに劣化が進行しまっていれば大規模な修繕が必要になるだけでなく、住宅の寿命を大きく縮めてしまいかねません。今回は、そんなリスクを軽減するため、住友林業ホームテック株式会社の一級建築士さんに床下のメンテナンス方法や劣化事例について聞いてきました。

床下に潜む重大な劣化

床下は普段見えにくい分、多くの劣化が潜んでいる場合があります。中でも気をつけたいのが、害虫や湿気などによる被害です。

害虫による被害

築10年が経過すると防蟻剤の効き目が切れることで、シロアリの被害にあうリスクが高まります。また、床下がゴキブリやダンゴムシの死骸だらけになっているなど、害虫による被害は少なくありません。

見逃せない土台の劣化

立地条件にもよりますが、床下は非常に湿気がこもりやすい部分です。床下の換気がうまくできていない場合、湿気が溜まり土台を腐らせてしまうことがあります。土台がたわんでしまった住宅があるそうです。

事例から見る床下の劣化症状

実際に対応したお客様の事例を元に床下の具体的な劣化について詳しく見ていきましょう。今回は一級建築士さんに虫害、腐朽、たわみなどの症状について伺ってきました。

床下の漏水トラブル

―― 床下の被害で多いのはどんなものですか?

一級建築士さん:やはり一番多いのはシロアリの被害ですね。築15年の住宅で、洗面所の床下をシロアリに食い荒らされて床が抜けてしまったケースがありました。シロアリは多湿を好むので防蟻工事を怠ってしまうと、特に浴室やトイレなどの水まわりの床下で被害が起きることがあります。今ではシロアリは全国どこでも発生すると言われているので、寒い地域でも気をつけてください。

―― その他どんな事例がありましたか?

一級建築士さん:水漏れ繋がりで言うと、配管が外れてしまい家の基礎換気口から水が溢れてくるという問い合わせがありました。伺ったところユニットバスの配水管が外れ床下が水浸しになっていました。水漏れをそのままにしておくと、床下の土台が腐ってしまう原因となります。実際に洗面所の漏水があり土台が腐ってしまったという住宅もありました。

―― なかなかご自身では気づきにくい箇所なのでしょうか?

一級建築士さん:そうですね。お客様でできる対策としては、実際に水を流してみて、キッチンなどの配管が見えるところなどで水漏れをチェックする方法があります。ただ、パッキンが10〜15年で劣化し漏水するパターンなど、気づきにくいケースもあるのでリフォーム会社や専門業者による定期的な点検を受けた方が良いと思います。

荷重や衝撃による影響

―― お客様からは他にどんなお悩みがありますか?

一級建築士さん:お客様からお問い合わせがあるものとしては、床がふかふかするなどの症状です。床下の根太がたわんでしまうことが原因の1つです。根太とは太い土台から土台に渡されている角材のことです。太さが45mm×90mmと細いため、重度の荷重で折れてしまうことがあります。根太が変形することで床板との間に隙間ができ、床がふわふわと沈むような症状が生じます。他にも床鳴りという症状があります。歩いた時に床板が軋み、音が鳴る現象です。床板と下地をとめている釘の変動や、接着剤の剥がれが原因となり、床板同士または釘と床板が擦れて床鳴りが起こります。床鳴りに気づいたら早めにリフォーム会社や専門業者に相談しましょう。

―― 荷重は床に大きな影響があるんですね。

一級建築士さん:荷重だけでなく衝撃にも気を付けたいですね。衝撃で床下の断熱材が外れてしまう場合もあります。床下の断熱材を支える金物が外れてしまうことで、断熱材が落下してしまうのです。断熱材がない場所は寒いと感じるお客様もいます。実際に、床下に断熱材を入れた住宅では、お客様から冬場は2度くらい体感温度が違うと言われました。築年数の古い住宅だとそもそも断熱材が施工されていない場合もあるので、気になる方はリフォーム会社に相談してみましょう。床下から断熱材を貼り付けていくという施工方法もあります。

床下のメンテナンス時期の目安

床下の劣化による被害を未然に防ぐためにも、適切なタイミングでの点検は欠かせません。ここでは点検時期や修繕のタイミングをまとめてみました。あくまで目安のため、床下の劣化に気づいたらすぐにリフォーム会社や専門業者に問い合わせてみましょう。

 

点検すべき時期

断熱材補強時期

床下除湿時期

防蟻処理時期

床下

築10年・後5年ごと

必要に応じて

必要に応じて

築10年・後5年ごと

築10年以降の防蟻処理の重要性

防蟻処理は築10年頃から徐々に効き目が弱まってきます。新築時は土台全体や土壌に薬剤をまんべんなく散布できるものの、建築後は部分的にしか防蟻処理ができません。築10年以降は5年ごとの定期的な防蟻処理が望ましいです。

土壌処理

木部処理

床下の点検の方法や費用

床下の点検は自身で行うのは難しいので、なるべくリフォーム会社や専門業者に頼みたいものです。気になる点検方法や費用について聞いてみました。

―― 点検はどのように行われますか?

一級建築士さん:専門の担当者が実際に床下にもぐり、シロアリ被害の有無がわかる蟻道の確認、漏水や基礎の劣化などをチェックしていきます。カメラなどで床下を撮影し、問題のあった部分をご説明させていただきます。

―― そこまで丁寧に見ていただけるならリフォーム会社や専門業者に頼んだ方が断然よいですね。

一級建築士さん:そうですね。一般的に無料で点検をしてくれるところが多いのでぜひ頼んでみてください。床下はお客様自身が入るのは非常に危険です。住宅によっては床下の深さが一定でないところもあるので、プロに任せていただいた方がいいと思います。

―― 点検時間はどのくらいですか?

一級建築士さん:平均して30分〜1時間ほどで点検は完了できるので、5年に一度は相談してみてはいかがでしょうか。

プロによる点検が最善

床下は自身での点検が難しい上に、被害に気付きにくいことから、大きな劣化に発展しやすい部分です。住宅の土台となる床下を長持ちさせるためにも、リフォーム会社や専門業者による定期的なメンテナンスを行うのが最適と言えるでしょう。