実家を相続したら税金はどう計算する? 地価公示と路線価の違いは?

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土地の値段は、その時の需給など、さまざまな出来事の影響を受けて毎年変化していきます。相続税や固定資産税の額にも大きく関わりますが、それぞれ計算の基準になる金額は異なります。

この記事では、土地の価格を示す3種類の公的指標、また土地取引の相場を知る方法について紹介します。

地価公示:国土交通省が公表、土地売買の目安に

公的な地価基準のうちのひとつは、国土交通省が公表している「地価公示」です。毎年1月1日時点での土地価格を算定して公表するもので、土地取引価格の目安になっています。全国2万6000地点で調査が行われています。

地価公示を動かすもの

地価公示で示される土地の価格は毎年変化しますが、大きな要因になるものとして、下記が挙げられます。

  • 景気の動向
  • 再開発による価格上昇
  • 近隣への大企業、大規模商店等の進出による価格上昇
  • 近隣との競合による価格上昇もしくは下落

もちろん、需要と供給のバランスも関係しています。2021年は、東京オリンピック・パラリンピック開催の年となりました。それにともなって地価が動いている地域もあります。たとえば、選手村近辺の公示地価の変化を見ていきましょう。

国土交通省「不動産取引価格情報検索」より(スクリーンショット)

測定ポイントである「中央-10」は選手村として機能したのち、分譲マンションとして一般に売り出される予定の土地です。国土交通省が管理するウェブサイト「不動産取引価格情報検索」によると、この「中央-10」の公示地価は五輪開催に向けて少しずつ上昇している様子が見られます(各年1月1日時点)。

  • 平成29年:985,000円/㎡
  • 平成30年:995,000円/㎡
  • 平成31年:1,030,000円/㎡
  • 令和2年;1,060,000円/㎡
  • 令和3年:1,050,000円/㎡

五輪開催が危ぶまれる局面もありましたが、その後も住宅地としての用途が決まっていることもあって、大きな値崩れなく推移してきたと言えるでしょう。

なお、東京の湾岸エリアのマンション・土地価格はこれまで「横ばいもしくはやや上昇」という状況でした。ちょうど筆者が湾岸エリアのマンションを売却しようかと検討しはじめたとき、どの不動産会社からも「売るならオリンピックが始まる前が良い」と勧められたものです。
というのは、選手村の建物はそのまま分譲マンションになりますが、近隣の相場よりも安い価格で販売されていたからです。すると、筆者が保有していた部屋の価値は相対的に下がりますので、不動産会社は早期の売却を勧めたというわけです。ひとつのイベントが、近隣の土地価格に大きな影響を与える事例のひとつです。

ここまでの大規模再開発とまでいかなくても、地域単位ではインフラ整備や交通の利便性向上を背景に人口が増えると公示地価が上がる例もあります。

「住所」と「地番」

なお、地価では「住所」ではなく「地番」で価格が表示されます。「住所」は建物の所在位置をわかりやすく表示したものですが、「地番」は人工的に土地を区切って番号をつけたもの。法務局などで住所から地番を調べることができます。
建物がない=住所がない土地にも「地番」は割り振られています。登記簿などには地番が記されています。

路線価:相続税・贈与税の算出基準

土地価格の2つ目の公的指標は「路線価」です。こちらは、税を扱う国税庁が毎年発表しているもので、相続税・贈与税の評価基準となります。
なお、地価公示と路線価は必ずしも一致しません。それぞれで公表されている「日本でもっとも高い土地」は、いずれも銀座のど真ん中ではありますが、地価公示によると「山野楽器銀座本店」、路線価によると「鳩居堂前」となっています。
両者は徒歩1~2分程度ですが離れています。これは、地価公示と路線価では調査地点が少し異なるためです。いずれにせよ、銀座4丁目交差点付近が売買するにも相続するにも日本でもっとも高い土地であるということになります。

固定資産税路線価:固定資産税の基準

3つ目の公的指標は、各都道府県が公表する「固定資産税路線価」です。名前のとおり、固定資産税の計算基準となる価格です。

ここで気をつけたいのは、相続税の算出基準と固定資産税の算出基準が異なるということです。
たとえば、親が亡くなってその自宅をどうするかと考えたとき、相続税を支払い早期に売却するのが良いのか、ある程度固定資産税を支払いつつ財産として維持するのが良いのか迷ったときは、慎重に考察したほうがよいでしょう。地価上昇が見込める土地であればもう少し保有しておくのもひとつの方法ですし、地価下落が目に見えている土地では、固定資産税カットのために早めに「損切り」をするのか、それとも価格の回復を待つのかなど、さまざまな選択肢が出てきます。

新型コロナと土地価格の動き

コロナ禍は日本の土地価格にどのような影響を与えたのでしょうか。
2021年の地価公示では、全国の商業地の変動率はこのようになっています。

国土交通省資料「令和3年地価公示の概要|P3 都道府県別地価変動率(住宅地)」より転載

三大都市を抱える東京・大阪・愛知を見てみると、2020年1月1日段階では前年よりも地価は上昇していましたが、2021年には下落に転じています。全国的にも地価が下落に転じた、あるいは上昇率が低くなった都道府県がほとんどです。

土地取引を考えるために

個別の理由がある地点は異なる値動きをすることがありますが、全体的には景気と土地価格は連動しやすい傾向があります。コロナ禍での全国的な公示地価下落はそれを反映した形と言えるでしょう。また、自宅の近隣であれば広告などを見て土地や建物など相場を把握できます。しかし、たとえば違う土地に移住を考える際、移住先の土地はどのくらいの値段なのかを推察するために地価公示データを利用することもできます。

国土交通省が管理しているウェブサイト「不動産取引価格情報検索」では、全国の公示地価や地元の広告、実際の取引相場のデータがプロットされた土地取引価格の情報をオンラインで検索できます。地点によっては過去数年分の価格も掲載されています。
自宅の近隣も含めて、一度土地価格の推移をのぞいてみるのも、現在お持ちの不動産の活用や、今後の購入にあたって良い材料になるものと思います。