「誰が相続人になるのか?」その範囲を知っておこう

お金・資産

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後々の揉め事や相続人が困ることがないようにあらゆるケースを想定しながら、資産の整理をしたり、親族間で相続について話し合ったりしましょう

この記事の監修

續 恵美子

生命保険会社で15年働いた後、FPとしての独立を夢みて退職。その矢先に縁あり南フランスに住むことに――。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。生きるうえで大切な夢とお金のことを伝えることをミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談などで活動中。

「相続が"争族"になる」というフレーズを聞いたことがある人は多いと思いますが、遺産相続にまつわるトラブルは決してTVドラマや小説の世界だけでなく、現実世界でも起こりうることです。親族間で誰かが死亡することや、資産の行方について話し合うのは気が引けるものですが、後々"争族"にならないように予防策を立てておくことも大切なことです。

そのための第一歩は誰が相続人になるのか、法定相続人の範囲や優先順位、また各人の法定相続分について知っておく必要があります。

法定相続人とは

法定相続人とは民法で定められた相続人のことをいいます。民法では「誰がどれだけ相続するか」ということが決められており、「誰が」という部分が法定相続人で、「どれだけ」という部分が法定相続分です。

そもそも遺産相続の方法には「遺言による相続」「法定相続」「分割協議による相続」がありますが、遺言がある場合には遺言の内容が優先されます。遺言がなければ前述したような、民法で定められた「誰がどれだけ相続するか」というルールに基づき遺産分割されるのが通常です。

ここで、誰が法定相続人になるのか、下の家系図を用いてその範囲を見ていきましょう。

上の家系図を見ると、第1順位、第2順位......と順位づけされていますが、民法では、配偶者(夫あるいは妻)は常に相続人になることが定められています。つまり、配偶者がいれば、配偶者とその親族が相続人になり、その他の相続人は定められている順位で決まっていくことになります。

たとえば、A氏(男性)が死亡した際に妻と子ども2人、A氏の父母、A氏の妹がいるとしましょう。この場合の相続人は妻と2人の子どもになります。A氏の父母とA氏の妹は相続人にはなりません。しかし、仮にAさん夫婦に子どもがいなければ、法定相続人はA氏の妻とA氏の父母が相続人になります。A氏の妹は相続人にはなりません。Aさん夫婦に子どもがおらず、A氏の父母もすでに他界している場合は、相続人はA氏の妻とA氏の妹になります。

このように、死亡した時に被相続人(死亡した人)の親族として誰がいるかによりますが、民法では決められた先順位の人がひとりでもいる場合は、後順位の人は相続人になれません。

次に法定相続分について見ていきましょう。

相続人

相続する割合

配偶者のみ

配偶者100%

配偶者と子

配偶者1/2、子(全員で)1/2

配偶者と父母

配偶者2/3、父母(全員で)1/3

配偶者と兄弟姉妹

配偶者3/4、兄弟姉妹(全員で)1/4

先の例でいうと、妻と2人の子どもが相続人になる場合、妻の相続分は1/2で、残り1/2を2人の子どもが相続することになります。同順位の相続人が複数人いるときは、原則として均等に分割することになっているため、子どもひとり当たりの相続分は、全体の1/4(1/2×1/2)になります。

法定相続人がいない場合はどうなる?

年を重ねるにつれ、結婚、子どもの誕生、子どもの結婚、孫の誕生、ひ孫の誕生......と親族の輪が広がっていくものですが、長生きするほど配偶者や子どもに先立たれていたり、子どもが離婚して疎遠にはなっているけれど孫がいたりなど、親族関係が変化していくことはよくあります。

このような場合には「代襲相続(だいしゅうそうぞく)」が行われます。

代襲相続とは、相続人となるはずであった子、父母または兄弟姉妹が、被相続人より先に死亡した場合に、その人に代わって相続することで、その人のことを「代襲相続人」といいます。

上の家系図をよく見ると、第1順位には子以外に孫・ひ孫などとなっています。これは、子はすでに他界しているけれどもその子(孫)がいる場合には、孫が第1順位の相続人になることを示しています。もしも孫も他界していてひ孫がいる場合には、ひ孫が第1順位の相続人になります。

いくつかのケースで、民法上のルールにしたがい、誰が相続人になるか見ていきましょう。

ケース1

被相続人A氏(75歳・男性)、相続財産は6,000万円
妻に先立たれ、子どもは長男(他界)、長女、次男の3人。孫は長男(他界)の息子と娘、長女の息子、次男の娘の合計4人。長男(他界)の嫁および孫2人と同居。

このケースではA氏の妻はすでに他界していますから、第1順位はA氏の子どもが相続人になります。子どものうち息子はすでに他界していますから、息子の子ども2人(A氏の孫)が息子に変わって相続人(代襲相続人)になります。つまり相続人は4人です。
4人の法定相続分ですが、本来は長男(他界)、長女、次男の3人がそれぞれ1/3ずつ均等に分割するようになるところ、長男(他界)の1/3分を孫2人が受け取りますから、1/3を半分ずつ均等に分割するようになります。
各人の法定相続分は、孫(息子の息子)1,000万円(6,000万円×1/3×1/2)、孫(息子の娘)1,000万円(6,000万円×1/3×1/2)、長女2,000万円(6,000万円×1/3)、次男2,000万円(6,000万円×1/3)となります。

ケース2

被相続人B氏(68歳・男性)、相続財産は1億円
妻と2人暮らしで子どもなし。父母ともに他界。姉がひとりと弟(他界)がひとり。姉には息子ひとりと娘2人(B氏の甥・姪)。弟(他界)には娘ひとり(B氏の姪)。

このケースでは相続人はB氏の妻とB氏の兄弟姉妹です。しかし弟はすでに他界していますから、弟の娘(B氏の姪)が弟に変わって相続人(代襲相続人)になります。つまり相続人は3人です。 各人の法定相続分は、妻7,500万円(10,000万円×3/4)、姉1,250万円(10,000万円×1/4×1/2)、姪(弟の娘)1,250万円(10,000万円×1/4×1/2)となります。

改めて、相続順位と法定相続分を整理してみましょう。

相続人

第1順位

第2順位

第3順位

配偶者

子および
孫・ひ孫

親および
祖父母

兄弟姉妹および
甥・姪

配偶者のみ

1

配偶者と子

1/2

1/2

配偶者と親

2/3

1/3

配偶者と兄弟姉妹

3/4

1/4

遺言と法定相続分が違う場合はどうなる?

遺言がある場合には遺言の内容が優先するのは前述したとおりですが、資産の状況によっては、現実的には遺言で指定された遺産分割内容と法定相続分が大きく異なる場合もあり得ます。
たとえば、資産が持ち家(評価額6,000万円)と少しの預貯金(500万円)というケースが考えられます。このケースで、相続人が子ども2人(長男・長女)だとしましょう。法定相続分で分割すれば長男と長女で1/2ずつになりますが、自宅を分割するのは簡単な話ではありません。遺言で長男に自宅(6,000万円)、長女に預貯金(500万円)としてもいいのでしょうか。
実はこのようなケースでも、相続人全員の意見が一致していれば、遺言と法定相続分が異なっていても構いません。ただし、相続人間のあいだで不満が生じることも考えられます。

そこで知っておきたいのが「遺留分」です。遺留分とは民法によって兄弟姉妹(甥・姪)以外の法定相続人に保障された相続財産の最低限度の割合のことで、相続財産の1/2(相続人が親あるいは祖父母のみの場合は1/3です)に、各法定相続人の法定相続分を乗じて計算します。

各遺留分権者の遺留分を表にまとめました。

相続人

遺留分

各遺留分権者の遺留分の割合

配偶者のみ

1/2

配偶者1/2

配偶者と子

配偶者1/4、子(全員で)1/4

配偶者と親

配偶者2/6、父母(全員で)1/6

配偶者と兄弟姉妹

配偶者1/2、兄弟姉妹なし

子のみ

子(全員で)1/2

親のみ

1/3

父母(全員で)1/3

兄弟姉妹のみ

なし

先の例では、相続財産は全体で6,500万円ですから、遺留分は1/2の3,250万円。そのうち長女の遺留分はその1/2の1,625万円になります。遺言で500万円とされていれば1,125万円を遺留分侵害として請求できる権利があります。ただし、遺留分はあくまで権利。長女が権利を主張するためには遺留分の減殺請求をすることが必要で、遺言自体が無効になるわけではありません。

検討しておきたい。争続にならないための対策

法定相続人の範囲を知り、誰にどれだけ相続させるかを検討しておくことは、大切な争続予防策です。とはいえ現実問題として、先に挙げた持ち家と預貯金の例のように、資産の状況によっては分割が難しいケースはあり得ます。

できるだけトラブルを防止するためには、相続財産を分割しやすくしておくことです。生命保険に加入する、預貯金や有価証券を保有しておくなど、現金化しやすい資産を準備しておくことも対策のひとつとして検討してみましょう。

なお、2019年には相続法の大きな改正が行われ、その中には被相続人(死亡した人)の介護や看病に貢献した親族は相続人(資産を受け継ぐ人)に対して金銭請求ができるようになりました。たとえば、上で見たケースなら、他界した長男の妻が被相続人A氏の介護をしていたような場合が考えられるでしょう。長男の妻はA氏の介護に貢献したにもかかわらず、法定相続人になれません。このような不公平感を低減させることが目的で、相続人である長女や次男に対して金銭請求をすることができるようになったのです。

これは、法定相続とはまた異なる方向に遺産が動いていく可能性を生じますから、相続人が後々困ることがないように、やはり現金化しやすい財産を遺(のこ)せるようにしておくことも大切でしょう。

民法で相続に関するルールがあっても相続は個々のケースで異なるものです。後々の揉め事や相続人が困ることがないように、というのは誰もが願うことのはずです。あらゆるケースを想定しながら、資産の整理をしたり、親族間で相続について話し合ったりしておくなど、早め早めに争続を避けるための対策に取り組んでいきたいですね。