リフォーム時に考えたい「採光」 窓の取り方と光の活かし方を考えてみよう

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住まいを計画するとき、多くの人は「日当たり」をとても大切に考えます。朝の目覚めを快適にする朝日、寒い冬でもぬくぬくと温めてくれる日差し、一日の終わりに眺めたくなる夕日等々。日の光は生活を豊かにしてくれる自然からの恵みです。

しかし、この自然光は時に私たちの暮らしに影をもたらすことがあります。「明るい部屋で暮らしたくて、南向きに大きな窓を設けたものの、なぜか部屋が暗く感じる」「夕方の西日が眩しく暑い」など、思い当たる方もいるのではないでしょうか。
自然が与えてくれる「日の光」という贈り物と上手に付き合うために、人は壁に窓を設け、そこにカーテンを下げたり、庇を付けたりと、工夫を加えて暮らしてきました。

今回はこの「自然光」との上手な付き合い方にフォーカスし、リフォームを見ていきましょう。
リフォームという絶好の機会に、窓のこと、窓の周りのことに目を向け、自然光との良い関係を築きましょう。

南に大きな窓があると暗く感じる?

「南向きに大きな窓」というのは、住まいに対する要望の中の、王道のひとつと言っても過言ではありません。そして、その真意は「明るい空間」を獲得することです。しかし、ふんだんに太陽の光が入る理想的な部屋にいるとき、ふと暗いと感じることがあります。
外はよく晴れていて明るいのに、日の光は室内までしっかり届いているのに、なぜでしょう。

それは、人の目の仕組みに原因があります。人の目はものを見るときにその明るさによって調整を行っています。明るいところでものを見るときは光の量を減らすために瞳孔を小さくします。暗いところではその逆で、多くの光を必要とするために瞳孔を大きくします。では、南向きに大きな窓を設置した部屋では、どのように見えているのでしょう。

人の目は窓の外の明るい景色や、窓から入った日の光に照らされた床の刺激を認識します。そして、その明るい状況に合わせて瞳孔を小さくして目に入る光の量を減らします。しかし、部屋全体が日の光を浴びて明るくなっているわけではありません。東西面の壁や天井など大きな面積には光が当たらず暗いままです。目に入る光の量を少なく調整している状態で部屋を見渡すと、暗い部分をより暗く感じてしまいます。部屋全体で見ると暗い面積のほうが大きいので、総じて「部屋が暗い」という印象を持つのです。

この暗さを解決するには、取り入れた光を部屋全体に届け、明るさのムラをなくすことが重要です。窓から入った光を天井や東西の壁にも拡散させ、太陽からの贈り物を部屋中に拡げましょう。

窓まわりのアイテムで光を調整する

光を取り入れる窓の周りには、光を調整するためのさまざまな装置があります。屋外は庇、簾やオーニングなどが、屋内はカーテン、障子、ブラインド、ロールスクリーンなどが挙げられます。その特徴を簡単にご説明しましょう。

庇(ひさし)

庇は、窓の直上に付けることが多く、上からの日射を遮ることができます。朝日や西日など太陽が低く昇っているときの効果は少なく、夏場の日中など太陽が高く昇っているときには日射を十分に遮ってくれます。
v 窓の直上にあるので、外を眺める際に眺望を妨げることもありません。光を拡散する効果はないため、拡散させるためには別の物と組み合わせる必要があります。

簾(すだれ)

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日本の住まいに古くから馴染みのある、竹を編んで作られた日除けです。目隠しとしても使われます。その歴史は古く、『万葉集』にも簾について詠まれた句があるのだとか。日本の暮らしの重要なアイテムのひとつといえるでしょう。
この簾ですが、窓の前に垂らして使うため、太陽が低く昇っている時間に日を遮る効果を発揮します。また、天然の素材で作られているため不均一で、その断面は場所によってさまざまです。そのため光が当たるとさまざまな角度に光を反射させて拡散する効果があります。

オーニング

オーニング(awning)とは英語で「日除け」や「雨おおい」といった意味があり、建築の装置としては窓の直上に取り付け、布地を天候や用途に合わせて開閉する日除けのことを指します。
庇に比べて出幅や角度の自由度が高いので、南面、東西面など設置できる面が多いのも特徴です。布地の素材にもよりますが、光の拡散効果はあまり期待できません。

カーテン

多くの住まいに使われているアイテムです。今回は光の調整がテーマですので、レースカーテンをご紹介します。
カーテンは窓の前に垂らされているものなので、太陽の高さが低いときに日を遮る効果を発揮します。カーテン生地が光をでさまざまな方向へ反射させ、拡散します。近年は光を広範囲に拡散させる機能に着目したレースカーテンが開発されるなど、製品の選択肢も広がっています。

障子

障子も簾同様に歴史が深く、平安時代に現れたとされています。窓の前に設置するものなので、太陽が低く昇っている時間に日を遮る効果を発揮します。和紙には光を拡散する性能がかなりあることが知られており、室内をやわらかい光で包むことができます。
外の様子がうっすらとわかるレースカーテンとは違い眺望は期待できませんので、設置する際には使う場所や用途の検討が必要です。

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ブラインド

多くの方が思い浮かべるのは、水平に羽がのびた水平ブラインドではないでしょうか。
水平ブラインドは羽の角度を調整できる特徴から、全ての方角で日を遮る性能を発揮できます。
近年は羽が垂直に降りている垂直ブラインドも、よく使われるようになりました。窓に対して羽の角度を調整できるため、西日などの日除けにも効果を発揮します。
水平ブラインド、垂直ブラインド共に光の拡散性はそれほど高くありません。

ロールスクリーン

ロールスクリーンには、障子のように光を拡散させる効果が期待できます。さまざまな素材のバリエーションがあるので、装飾性や日射遮蔽、眺望などの好みに合わせて選ぶことができます。

同じ窓面積でも、形状や位置で室内の明るさは大きく変わる

光の量を調整するのは、庇やカーテンばかりではありません。窓のとり方そのものでも空間の明るさは大きく変わります。その要素は窓の「高さ」と「形状」です。
窓は、高い位置にあるほど室内を明るくしてくれます。光が室内の奥まで届くからです。一方、窓を低く設置すると、室内の手前までしか光が入らず、室内の手前と奥とで明るさのムラが生じます。

同じ窓面積でも、その形状を変えると明るさにも影響が出ます。横長の窓は光を水平方向に拡げてくれますが、縦長の窓は光の拡がりがありません。

これらを組み合わせて横長の窓をできるだけ高い位置に設置すると、室内は明るくなります。ただし、注意も必要です。高すぎて眺望がのぞめなかったり、手が届かず開閉が困難になったりする場合もあります。
部屋を明るくするための窓か、外を眺めるための窓か、換気をするための窓かなど、窓を取り付けたい理由に合わせた設置方法を検討するとよいでしょう。

まとめ

窓には、自然からの恩恵を活かす多くの機能があります。外を眺めて気分を安らげること、風を通すこと、光を取り入れること......そのどれもが、とても大切な機能です。

せっかくの自然からの恩恵を無駄にすることなく、窓まわりのアイテムでうまく調節しながら、時には素材の色や柄などの装飾性も楽しみましょう。
ご自身の生活スタイルに合った、自然との上手な付き合い方が見つかるとよいですね。