「ZEH住宅」の価格は? 補助金はいくらもらえる? 詳細を徹底解説

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住宅を省エネルギー化することには、さまざまなメリットがあります。家計にやさしいだけでなく、身体に与えるストレスを軽減し、住む人の健康を守ってくれるなどプラスの効果がたくさんあるのです。

こうした省エネルギー住宅を、「ZEH(ゼッチ)住宅:ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」といい、全国のハウスメーカーや工務店を中心に7,603社が『ZEHビルダー登録』を行っています(令和2年11月時点)。そして、国も「ZEH住宅」の普及を重要政策として積極的に補助金事業を推進しています。

今回は地球の環境にやさしいだけでなく、住む人の健康と家計にもプラスの効果を与える「ZEH住宅」について詳しく解説します。

ZEH住宅とは

資源エネルギー庁のウェブページでは、ZEH住宅を以下のように定義しています。

外皮の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅

経済産業省 資源エネルギー庁「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)

ここでいう「建物の外皮」とは、建物の室内と室外を区画している部位の総称で、特に熱的な境界を指しています。具体的には屋根、天井、外壁、開口部、床や基礎が挙げられます。
つまり、ZEH住宅とは、「外壁、窓などの断熱性を高めること」「設備の高性能や太陽光発電等によって年間で消費する住宅のエネルギー量が概ねゼロ以下を目指す」の住宅、ということになります。

ZEHは、政府が「住宅・建築物需給一体型等省エネルギー投資促進事業」として積極的に推進している政策です。令和3年度の予算案額として83.9億円(459.5億円の内数)を計上しており、「2020年までにハウスメーカー等が新築する注文戸建住宅の半数以上、2030年までに新築住宅の平均で、ZEHの実現を目指す」という目標を掲げています。(※1)

上述のとおり、ZEH住宅の特徴のひとつに「太陽光発電や蓄電池などの創エネシステムを活用することで、年間のエネルギー消費量の収支ゼロを目指す」とあります。これは、太陽光発電で創り出した電気を蓄電池に貯め、家で使用する電気に充当するというイメージです。これによって、居住者は月々の光熱費を抑えることができ、さらには創り出したエネルギーを電力会社に売った場合には売電収入を得ることができます。

経済産業省「住宅・建築物需給一体型等省エネルギー投資促進事業」の情報を基に作図

ZEH住宅にすることのメリット

ZEH住宅にするとさまざまなメリットが得られます。ここでは、代表的な3つを紹介します。

1.光熱費が安くなる

ZEH住宅は建物の外壁などに断熱性の高い資材を使用しているため、室温を一定に保ちやすくなります。また、太陽光発電や蓄電池などの創エネシステムを活用することにより、自らエネルギーを創り出すことができます。したがって、電力会社から電気をフルに供給してもらう必要がなく、光熱費が格段に安くなるのが最大のメリットといえます。

資源エネルギー庁の資料では、一般的な賃貸マンションからZEH住宅に住み替えによって年間16~20万円ほど光熱費が削減できたケースが紹介されています。
ZEH住宅の年間光熱費は、電力料金やガス料金の支払額から太陽光発電による売電価格を引いて算出された金額です。「CASE2」では、以前の住まいより2倍も広い延べ床面積にもかかわらず、年間光熱費はプラス2万6,819円とむしろ収入を得ていることになっており、経済的にもかなりプラス効果があるといえます。

経済産業省 資源エネルギー庁「ZEHの普及に向けて①」からの転載

2.快適で健康な住宅に住める

ZEH住宅は、財布にやさしいだけではありません。住宅の断熱性が高く室温を一定に保つため、ヒートショックの防止など住む人の健康面にも役立ちます。このほか、下記をはじめとする有益な効果が報告されています。

ZEH住宅に住むことのメリット

  • 高血圧症の防止
  • 循環器疾患の予防
  • 熱中症の予防
  • 身体活動の活性化
  • 結露やカビに悩まされない快適な生活が送れる など

3.非常時でも安心

ZEH住宅は、突発的に起こる災害などの非常時でも安心して過ごせる住宅です。台風や地震など災害による停電が発生したときでも、太陽光発電や蓄電池を活用して電気をまかなうことができるため、不便なく日常生活を続けることができます。

東日本大震災では発災後、停電の解消に8日ほどかかった地域もありました。災害は、いつ発生するかわかりません。いざというときのライフラインが確保されていると安心です。

ZEH住宅のデメリット

ZEH住宅は光熱費が安くなるなどさまざまなメリットがありますが、デメリットもいくつかあります。

1.初期導入コストが高い

ZEH住宅は、一般的な省エネ住宅に比べると初期投資が相当かかるのがデメリットです。
国土交通省のパンフレット(※2)では、新築時に省エネ基準に適合させるためにかかる費用例は約87万円、省エネ基準に適合させるための省エネリフォーム費用例では約231万円と算出されています。

2.投資回収年数が長い

ZEHの実現に不可欠な太陽光発電の普及については、投資回収年数に対する不安を取り除くことも課題のひとつです。国土交通省の資料では、太陽光発電の導入を希望しない理由として「投資回収年数が長い」が「初期費用が高い」に次いで2位となりました。このように、いつかは回収できるとしても、かなり長い年月がかかってしまうことが懸念されています。(※3)

3.デザイン上・美観上の問題がある

太陽光発電の導入を希望しない理由として、「デザイン上・美観上の問題がある」というものも報告されています。ZEH住宅に必要とされている太陽光発電は、住宅の屋根に太陽光パネルを設置して太陽光を貯めるシステムです。そのため、屋根のデザインや形状がパネルを置けるようにしなくてはならず、制約が出ることも考えられます。住宅の美観に対するこだわりの強い方は、設置前によく検討するとよいでしょう。

令和3年度のZEH関連の補助金

ZEH住宅事業は国が積極的に推進している政策のため、さまざまな補助金制度が用意されています。下記に補助金の種類や金額の一例をまとめました。ぜひご活用ください。

▼戸建てZEH住宅

補助事業名

戸建住宅ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化等支援事業

地域型住宅グリーン化事業

管轄省庁

環境省

国土交通省

対象となる住宅

注文・建売住宅におけるZEH

中小工務店などによる木造住宅のZEH

補助額

  • 定額60万円/戸
  • 蓄電システム2万円/kWh(上限20万円かつ、補助対象経費の1/3以内)
  • 低炭素化に資する素材を一定量以上使用、または先進的な再エネ熱利用技術を活用する場合、定額加算
  • 上限140万円/戸
  • 施工経験4戸以上の事業者は上限125万円/戸)かつ、掛かり増し費用1/2以内
  • 地域材の活用により上限20万円加算
  • 三世代同居への対応または若者・子育て世帯については、加算(調整中)

資源エネルギー庁「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス 推進に向けた取り組み|3省による支援制度」の情報を基に筆者作表

まとめ

今回は、環境と住む人の身体にやさしい「ZEH住宅」について詳しく解説しました。
改めてZEH住宅は、家庭の省エネルギーを進めるうえで重要な要素である冷暖房エネルギーを少なくできる住宅です。「月々の光熱費を安く抑えられる」「健康的な生活が送れる」「災害時にもエネルギーの確保ができる」など、たくさんのメリットが得られます。

これから家の新築やリフォームをお考えの方は、おうち時間を快適に過ごせるZEH住宅を検討してみてはいかがでしょうか。

※「令和2年度平均年収と学歴調査

※1 経済産業省 資源エネルギー庁「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/general/housing/index03.html

※2 国土交通省「なるほど 快適・安心な住まい 省エネ住宅」P18
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/shoenehou_assets/img/library/naruhodosyouenejuutaku.pdf

※3 経済産業省「ZEHの普及促進に向けた政策動向と令和3年度の関連予算案」P33
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001388304.pdf