二世帯リフォームの部分同居に関するメリット・デメリット

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子育てや介護で、親世帯や子世帯の協力を得たいと思う家庭にとって、二世帯住宅は非常にメリットの多い暮らしのスタイルと言えます。
特に夫婦ともにフルタイムで働く若い世帯にとっては、子育てへの親世帯の協力は大きな助けとなるのではないでしょうか。また、親世帯にとっても、将来の介護を見据えた場合、子世帯がすぐそばに居住していることは大きな安心材料です。
親世帯、子世帯ともにそれぞれの生活をお互いに助け合うことはもちろん、リフォーム工事費や居住費、生活費などの経済的メリットもあるでしょう。

リクルート住まいカンパニー「2014年 注文住宅動向・トレンド調査」を基に作図

子育て期の子世帯は、日々の生活費に加えて、学費や教育費・将来の貯蓄など暮らしにかかる費用がかさみます。そのため、居住にかかる費用を抑えられることはとても大きなメリットといえます。しかし同居をするとなると、親・子世帯の双方ともに不安なことも多々あるでしょう。
親世帯と子世帯が、ひとつの建物内で生活するための程よい距離感などは、実際に生活してみてから初めて分かる部分も少なくありません。

では、その距離感を保つためにはどのような工夫があるのでしょうか。
実は二世帯住宅には主に3つのタイプがあり、「完全同居型」「部分同居型」「完全分離型」に分類されます。その中でも、今回ご紹介するタイプは「完全同居型」と「完全分離型」の中間に位置する「部分同居型」です。部分同居型の二世帯住宅は、両家間の助け合いやそれぞれのプライバシーの確保、経済的な恩恵がバランスよく確保できる間取りが特徴です。

この記事では、これらのメリットのほか、デメリットや、計画するうえで重要なポイントなどを見ていきましょう。

部分同居型の特徴と必要な設備

部分同居型の二世帯住宅は、主に一部のスペースのみを二世帯間で共有するものです。一般的に共有するスペースが多いのは「玄関(門扉、ポーチ、玄関ドア、ホール)」ですが、玄関以外の居室や設備も共有することが可能です。

住まいは、注文住宅であれリフォームであれ、設計次第で「キッチンは独立、浴室は共有」や「キッチンも浴室も共有。ただし食事はそれぞれで作る」などさまざまな共有方法ができます。予算の面で設備費を節約したい場合や、複数の設備を置くよりもリビングや寝室を広くしたり、部屋数を多くしたりを希望する場合には、これらの設備も共有できます。

部分同居型のメリット・デメリット

まずは部分同居型の最大の特徴でもある「共有部分」についてお話します。
玄関を共用にすることで、あいさつを交わしたり、日常的に顔を合わせたりする機会を持つことが出来ます。

介護や子育ての面で助け合うためには、お互いの行動時間帯やスケジュールなども把握しておく必要がありますが、共有部分を通じて顔を合わせる機会があれば、そういった情報交換なども比較的スムーズに行えるでしょう。一方、玄関以外は分離されているので、食事や入浴、家族の団らん、就寝などの生活のほとんどが独立となります。これにより、生活時間の違いによるトラブルなどの回避が期待できるでしょう。

同居型や分離型と比較したメリット

完全同居型と比べた場合のメリット

完全同居型と比較した場合、部分同居型はプライバシーの保守性が圧倒的に高くなります。
同居による気疲れなどの精神的な負担も比較的軽いと言えるでしょう。また、現在は夫婦共に働きに出る家庭も多く、帰宅が遅くなる場合があるため、食事や睡眠の時間が、親世帯と数時間程度のズレが出てしまうことも少なくありません。
キッチンや浴室が独立していれば、食事の時間を無理に合わせる必要も無く、入浴の順番待ちに悩まされることもなく過ごせます。

完全分離型と比べた場合のメリット

完全分離型と比較した場合、共有部分があることにより世帯間交流がスムーズになります。子世帯にとっては、親世帯の手助けが一番のメリットと言えるでしょう。
また親世帯にとっても老後や介護での子世帯の協力は必要です。将来、両親に介護が必要となった場合、近居に住むことは、子にとってもメリットになります。部分共有は、世帯間の独立空間への移動がスムーズにでき、とても効率的です。時に体力を必要とする介護においては、移動距離が短く済むことは介助者の負担軽減につながります。家族間の絆を強めていくのに効果を発揮するといえるでしょう。

部分同居型で生活するためのポイント

二世帯住宅での生活の中で特に気をつけたいのは以下のポイントです。

  • プライバシー
  • 共有スペースの管理や使用目的
  • 来客等の訪問時間や応対

同居でのトラブルの多くは、生活時間の違いによるストレスが原因です。親世帯、子世帯ともに「お互いの家庭のプライバシーを尊重する」という意識を常に持つことが大切です。
また、防犯面からみても、それぞれの居住スペースへつながるドアや個室などの施錠は必要でしょう。たとえば留守中の子世帯に外部から不法侵入があった場合、親世帯が在宅であっても、その侵入に気付きにくい場合があります。防犯上の理由からも鍵の設置は必ず検討すべき項目です。
加えて、ドアや鍵の設置も最初の設計段階で、なるべく多く考えておくのがよいでしょう。後から増設したいと思っても、相手の気分を害するのでは、と言い出しにくくなってしまうこともありえます。

共有スペースの管理と使用方法もまた、重要なポイントです。ささいなことではありますが、掃除の担当や頻度など、どちらの世帯が管理するのかを事前に決めておいた方が良いでしょう。

なお、玄関スペースは家へ出入りするために必ず通らなければならない場所ですが、以下のような問題も生じやすいことを念頭にしておく必要があります。

  • 来客があった場合などに、応対のために玄関を長時間占拠してしまう
  • 遅い時間帯に来客があり、インターホンや話し声で寝ていた家族が起きてしまう
  • 一方の世帯が留守の際の来客応対はする方が良いのか、しない方が良いのか

これらは「部分同居型」や「完全同居型」に多いトラブルです。勝手口を設けるなど、共用玄関以外からの出入りもできると、いざという時に便利です。

暮らしに合わせて共有範囲を変えるのもひとつのアイデア

二世帯住宅に実際に暮らしてみると、「同居の気遣いによるストレス」「子どもの成長に合わせたプライバシー性の配慮」など、思ってもみなかった問題点が後で出てきてしまうこともあります。
これらのような問題を回避するために、はじめから用途変更のしやすいプランを立ててしまうのも、ひとつの方法です。全員がいつでも気兼ねなく使える部屋が欲しいと感じる場合は、占有スペースを共有化することも可能です。たとえば親世帯のリビングをいずれは共有スペースにしたり、出入りを自由にしたりしたい場合は、玄関に接した位置に設計するなど、共有したいスペースはなるべく1カ所にまとめます。
共有スペースの範囲を変える場合も、なるべく共有箇所は少ない状態でスタートし、使い勝手に合わせて徐々に共有する箇所を多くしていくような順番がおすすめです。設計の段階でそれぞれの居住スペースをしっかり分離させ、独立性を高く設定しておくことが重要です。

まとめ

共有と独立の両方を兼ね備えた、部分同居型二世帯住宅。
設計プランを立てるのにも生活をしていくのにも、「共有と独立のバランス」が大切です。そのバランスは家族ごとに異なり、どんな二世帯住宅が良いのかもさまざま。部分同居と言っても、どこを共有するのかは自由です。

決めなくてはならない事や要望がたくさんあり過ぎたり、設計の段階でなかなか上手く話がまとまらなかったりすることもあるかもしれません。その場合は、実際の二世帯リフォーム例などもぜひ参考にしてみてください。

戸建て全面リフォームの二世帯住宅事例  住友林業

大切なのは、住む人の疲れを癒し、安らげる場所を作ること。世帯間の関係を良くしたいと頑張り過ぎないように、それぞれの時間も大切に出来る住まいを作り上げていただきたいと思います。