老後の使い勝手も見据えよう 機能的で使いやすい水まわりをつくるリフォームの考え方とは

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洗面室や脱衣室、浴室などの水まわりは、住まいのなかでも特にプライベート性の高い空間である一方、洗濯をはじめとした毎日の家事や、洗顔、歯みがきといった日常的な行為で家族の動線が行き交う場所でもあり、機能面も求められる場所でもあります。そのため、動線や機能上の使い勝手が悪い場合、ストレスや不満を感じることが日々多くなり、家事の負担も大きくなっていきます。

今回は、家族みんなが使いやすく、機能的な水まわりにするためのリフォームについて解説していきます。

不満の出やすい水まわりスペース

当社が東京都や大阪府で行った「2019年版・住まいの実態調査」によると、住まいに関する具体的な不満点として、「台所、トイレ、浴室などの使いやすさ、広さ」は、東京では第1位(50.0%)、大阪では第3位(38.7%)に挙がっています。この結果から、現状の住まいの水まわり空間に不満を持っている人の多いことがわかります。

住友林業のリフォーム「2019年版・住まいの実態調査【東京都編】」「同【大阪府編】」の情報を基に作図

また、夫婦共にフルタイムで働く共働き世帯は年々増えており、昭和55年の614万世帯から平成29年は1,188万世帯と大きく増加しています。一方、夫が働き、妻が専業主婦である世帯は、昭和55年の1,114万世帯から平成29年は641万世帯と減少しており、現在では共働き世帯が一般化していることがわかります。

内閣府男女共同参画局「男女共同参画白書(概要版)平成30年版|共働き世帯数の推移」の情報を基に作図

このように共働きで忙しい現代の夫婦にとって、住まいでの家事はできるだけ効率よく行えるようにすることが大切です。家事の時間を短縮し、住まいでくつろぐ時間をつくるためにも、水まわりのリフォームは有効であると言えます。

目的によって寸法を考える

水まわり空間は、機能的でコンパクトであることを優先する場合があれば、充実した機能とリラックスできる空間を求める場合もあるなど、世帯ごとに希望はバラバラです。

リフォームを行う場合、既存の間取りや他の部屋との動線の関係を考慮し、まずはどういった機能を求めるのかを考えることが大切です。設備を選ぶにあたっても、確保できる広さに限りがあるので、目的に沿った機能的で使いやすい寸法にしたいところです。

洗面台は使い方をイメージして幅を決める

引用)住友林業のリフォーム「リフォーム事例

既製のコンパクトな洗面台は、幅が750mm程度のものが多くなっていますが、少し余裕を持たせ、幅1m程度を確保できると、ドライヤーや歯ブラシ、タオルなどを面台に置けるようになり、使い勝手がよくなります。
現状の住まいでは、洗面台まわりでどのように動作しているか、物を使っているかをイメージし、少し余裕を持って幅を決めると、使いやすい洗面台を実現できます。

腰から上の空間にゆとりを持たせる

水まわりは、洗顔や歯みがきをする、ドライヤーをかける、服を脱ぐなど多くの動作を行う場所です。特に腰から上を動かす動作が多いため、腰より上の空間はゆとりのある広さを確保すると良いでしょう。すると、動作するにも余裕があり、家族と使う時間が重なってもストレスなく、使うことができます。なお、下の空間は収納を充実させ、機能面を補うとよいでしょう。

将来的な使い方も考える

親と同居している場合、将来、介護が必要になると、浴室や脱衣室にはある程度の広さが必要となります。自身が高齢化し、体力が低下した場合は、手すりを設置する必要も考えられるでしょう。
このように、来たる将来に備えて余裕を持った寸法を確保しておくことも大切です。

使い方をイメージして収納を設ける

水まわりには衣類、洗濯用具、日用品、タオルなど実にさまざまな物が置かれることになります。そのため、収納の充実具合によって使いやすさは大きく変わります。
機能的な水まわりとするためには、日々の使い方をイメージして収納を設けることが大切です。

収納するべき物とそうでない物を分ける

さまざまな物が置かれる水まわりですが、広さには限りがあるため、すべてを水まわりに置くことは難しいことがほとんどです。まずは、必ず置いておきたいもの、別の部屋でもよいものに分類します。たとえば、タオルのストックは個室の収納や納戸に入れ、必要な分のみ洗面室に置くようにすると、洗面室の収納がタオルで占められることがなくなります。
現在の住まいの間取りも考慮し、それぞれの物の居場所を決めておくと、限りある水まわりの収納を機能的に使うことができます。

入浴時や洗濯時の物も考慮する

収納を考える際に忘れがちなのが、入浴時に置く着替えや洗濯かごの場所です。洗濯機の上に棚板を設置したり、洗濯機横に洗濯かごや洗剤を置くためのコンパクトな収納スペースを確保したりしておくと、物が散乱することがなくなります。

引用)住友林業のリフォーム「リフォーム事例

洗濯動線を考える

引用)住友林業のリフォーム「リフォーム事例

水まわりをリフォームする際には、洗濯物干し場や干した物をたたむ場所を含めた洗濯動線を考慮することが大切です。

洗濯機から干し場までの動線は短く、目につかないよう考える

間取りを考えるとき、家のなかで最も日当たりのよい場所は、リビングやダイニングが配置されることがほとんどです。そのため、洗濯物の干し場がリビングに面した場所になり、くつろぎの部屋から見えてしまっている住まいがよく見られます。こうした状態にならないためにも、洗濯物干し場は、リビングや来客が通るスペースから見えない場所に設けることが大切です。

また、洗濯機のある場所から干し場までの距離が遠いと、重い洗濯物を運ぶことが負担になります。できるだけ最短の動線が確保できるように考える必要があります。加えて、雨天時にも洗濯物を干せる、サンルームの設置を検討してみるのもよいでしょう。天候に左右されることがないので、ストレスなく洗濯を行えます。

洗濯物を取り込み、たたんでしまうまでの動線も考慮する

忘れがちなのが、洗濯物を取り込んで収納場所にしまうまでの動線です。洗濯物をたたむための家事室を設けることができれば最も効率がよいですが、実際はリビングで行う家庭がほとんどではないでしょうか。間取りによっては取り込んでからたたむまでの動線が長く、家事の負担になっていることもあります。
洗濯の負担を軽減するためには、取り込んだ洗濯物をどの場所でたたむのか、またそれをしまうまでの動線はどうなのか、をイメージしてリフォームを行うことが大切です。

換気の確保やメンテナンスしやすい素材を選ぶ

引用)住友林業のリフォーム「リフォーム事例

水まわり空間は、住まいのなかでも特に汚れやすい場所と言えます。そのため、汚れにくくメンテナンスがしやすい素材を選ぶことが大切です。

床をフローリングにする場合でも、リビングなどで使われているオイル系の塗装ではなく、水に対して耐久性のあるウレタン系の塗装をすると良いでしょう。水をある程度はじくことができ、汚れもふき取れます。壁材も同様です。耐水性のあるクロスやタイルを使うことで水ハネによる汚れを軽減できます。

また、水まわりは湿気が高くなりやすい場所でもあるので、通気性の確保も考慮する必要があります。洗面室や脱衣室に設備を設けることで、ある程度の換気は可能ですが、できれば窓を設けて自然に換気することも考慮したいところです。

まとめ

長年使い慣れた水まわり空間であっても、リフォームにより機能性が向上することで日々の負担の軽減を驚くほど実感される人が多くいます。

水まわりのすべてをリフォームすることが難しい場合であっても、部分的なリフォームによって機能性を向上させることで、ストレスなく快適に家事が行えるようになります。また、水まわりは動作の多い空間でもあるため、手すりを付けるなど介護を見越した広さを確保する必要も、世帯によって生じることでしょう。

現在と将来を見据え、水まわり空間から住まいを考え直してみてはいかがでしょうか。